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行ける人は『鳥獣戯画のすべて』へは出掛けた方が良いよ

久しぶりに訪れた上野は、駅から変わっていた。
以前は、上野公園口から上野公園へ行こうと思うと、まず道路を渡らなければならなかったし、公園へは曲がって入っていかなければならなかったのだが、新しくなった公園口は、改札を出てから上野動物園まで、まっすぐに道が整備されており、駅前を横断する道路は無くなっていた。
西洋美術館前から駅舎を振り返ると、新しい公園口は商業施設を併設したテラスのある建物へと変貌していた。

上野に来た目的は、東京国立博物館で開催されている『鳥獣戯画展』を見るためだ。
鳥獣人物戯画は国宝である絵巻物で、甲乙丙丁の全4巻から成り、カエルとウサギが相撲を取っている部分が有名な、あの墨絵である。

実は全ての巻が同時に公開されるのは初めてらしく、公開できるに至っては、2020年のオリパラで訪れる海外の方々にも観てもらいたいという思惑もあっての事だったのだが、オリンピック開催延期にともなって、同展も延期となっていたらしい。

今回の展示での目玉は全巻同時公開もだが、歩く歩道を博物館に設置して、広げた絵巻物を見せる試みだ。歩くのではなく、立ち止まった状態で鑑賞できる。実際それを体感すると、ちょっと面白い。
ただ、全巻をそうやって公開しているわけではなく、歩く歩道で鑑賞できるのは有名な甲巻だけなのだが、それでも実施した意義はあると感じた。

今回は予約入場をしており、混雑を緩和してはいたが、まったく混んでいないかといえば、そうでもなかった。が、その全貌のほとんどは堪能できた。

かつて、手塚治虫をして『漫画の原型』と言わしめた絵巻は、どうして、アニメの原型を感じさせた。昨今、マンガもアニメも、いわゆる『入り抜き』の線は流行りではないが、一本の線で筋肉の躍動を表現できる画力、しかも下絵なしの墨と筆での絵は、活き活きとして力強い。
まったく、世界の人々に直に見てもらえなかたのは残念だが、出来れば絵を描く事を生業としている人、また、それを目指している人達に見てもらいたい特別展だ。

自分的には乙巻の、麒麟や龍、獏などの空想の動物たちの活き活きとした姿を見れたことが、喜ばしい。

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