クリープハイプの好きな歌詞を書き出していく。①

タイトル通りの記事です。自己解釈の備忘録。
公式でライナーノーツ企画してくれたときは運営側に見られるのが無理すぎて書けなかったけど今なら書ける、ということで好きな歌詞をつらつら書き出してなんで好きなのかとかどういう風に考えているのかとかをメモしていくだけ。気が向いたら②とか③とか続けていきたいな~。


モノマネ

「似てないのはもしかしたらひょっとしたらひょっとした
あの時あなたは泣いてたのに何も知らない私はただ笑ってた」

のっけから「ボーイズENDガールズ」の続編であることをわかりやすく叩きつけてくるこの曲からスタート。一番好きな歌詞はここ。
この、「もしかしたら」と「ひょっとして」の繰り返しに、『心はとっくに、もしくは最初から離れているけどまだあなたが好きだからそれを信じたくない』という女の子の足掻きが伝わってきて、悲しくなって泣いてしまった…(チロルとポルノ)
同じ石鹸のにおいも、大事なお揃いのキーホルダーも、一緒にテレビ見て笑ったことも、いろんな思い出が全部全部『好きな人のモノマネ』になってしまう瞬間がはっきり想像できて、心がギュッとなり、辛すぎる…
あえて『あなたは泣いているけど私はただ笑ってた』という表現にすることで、主人公はまだ楽しい思い出に縋っていたいんだということを伝えてきてとても上手いなあと思います。
ボーイズENDガールズの続編と明言されているので、あのまっすぐな主人公がこの結末を辿ったのだと思うとなお辛い…


ねがいり

「布団の中のあんたが寝返りをうつ度に大事な物はこぼれていったの
電車の中には忘れ物があって 別れた事さえ忘れていました」

ねがいりはめちゃくちゃ名曲なんですが、中でもここが一番好き…
一緒に寝ている時に寝返りを打つこと=愛が冷めていくという表現はいろんなところで散々消費されていますが、そこに『別れたことさえ忘れた』という表現を入れることで『もうとっくに終わっている関係』をお出ししてくるその手腕がいい。
そして、終わっている関係なのに、出会ったことさえ忘れていたなんて言っちゃうほどそばにいるのが当たり前で、歌っちゃうほど未練があって大好きだったのだという女々しさが良い意味で生々しい。exダーリンの男版ですね。
別れたこと⇆出会ったことの対比もうまいよなあ…これがあるから、別れたことを忘れたことすら、ずっとそばにいすぎたからなのだと解釈することもできて、だからこそ『ケーキを買って帰る』などというちょっとした特別な日常はもう二度と訪れないのだということに気づいてしまって、辛さに拍車をかけていく。
ただ、別れたからと言ってただ立ち止まっているわけではなく、なにかを思って進もうとしている気がするので、私はこの曲がとても好き。


answer

「温泉旅行をかけて それでは最初の問題です アタシがこうしてあなたを思う気持ちはなんでしょう その名前は愛…ですが 愛とは一体なんですか」

昔の曲ということもあるんだろうか、尾崎裕介という人間のもつ文学性と少女性が爆発していると思っている一局。
初手、『世界一周をかけて』というくらいだから超高難度の問題が来るのだろうと思う。ところがその高難易度の問題が、『今までずっと言えずにいた気持ちは何だ?』という告白じみたセリフで、そんな"高難易度の"問いかけがあるからこそ成り立つ2番のあざとさが好き。
報酬を『温泉旅行』にすることで、明らかに難易度を下げて言い当てられたいという女の子の気持ちもあるし、「最後の問題」とすることで最後通牒なんだと理解させ、その中で「温泉旅行」という言葉が内包するいわゆる男女の関係が浮かんでくる。しっかりと上手いな〜と舌を巻く。
そして『…ですが』と引っ掛けを盛り込んでいるのも素直に伝えられない感情の表現で良い。愛とは一体なんですか、という問いなんだからむしろこっちの方が難しいよね、と思うけど、この曲の主人公からしたら、何も言わずに自分の気持ちが言い当てられる方が難しいと思っているのかもしれない。わかるよ


君の部屋

「好きな映画も好きな小説も好きな漫画も好きな音楽も 全部君の部屋 全部君の部屋にあったんだ 僕はバカだな 本当の事は見透かされてたんだ」

(嗚咽)
自分がない〜…(ハチワレ)
私は好きな人の好きなものを好きになる心理が痛いほどわかってしまうので、君の部屋が刺さりまくってしまうタイプの人間だ。『君の部屋にあったものが好きで、ひいては君が好きだったんだ(もう遅いけど)』の感情を食らって死んでしまう。主人公はもう諦めてるのにずっと引きずっててそんなの見てるこっちが辛い。結局恋はモノマネなんですよね。
「僕の喜びの8割以上は〜やっぱりあなたでできてた」という表現もそう。好きな人でできてた感情は心に食い込んで忘れられないんすわ…(自傷)
久しぶりにライブで聞いたけど、こんな辛い歌詞なのに結構乗れてしまうバンドサウンドなのが、この売れないバンドマンの曲を完成させているなと思っています。


SHE IS FINE

「抱き締めてからキスをして 服を脱がせるまでの時間×謝って〜鍵閉めた 後悔の高さ÷2」

初めて聞いた時天才だと思った歌詞はここ。 セフレとの関係性をこんなに端的に明確に表してる歌詞ないですよ。しかも男側から。
最後に勝手に相手の幸せ願っちゃってるのもマジで最悪だなと思う。多分その子お前のことが好きだよっていう。殴りたくなる曲だけどそれだけ表現が天才なんだよな…。
これ、主人公の男側が恋愛感情を持っているか否かで解釈分かれそうだなと思うのですが、私は持っていなんじゃないかなという想像。まあ明らかに番っているであろう「HE IS MINE」については、この曲の後の可能性の一つに過ぎないじゃないかなというのが個人的な解釈なので、女側からの感情を受け止めきれずに逃げてる男の曲だと思っています。
こちらは愛ではないし恋でもないと言っているので明確にセフレ、あちらは愛していたけど冷めてきちゃって体で繋ぎ止めてるだけの関係って感じですよね。結局、この2曲の彼らが付き合ったとて、ただ会ってキスしてセックスするだけの関係性どまりになるんじゃないかな、という。この曲からあの曲になったのだとしたらどちらにしても報われないな〜と思います。クリープハイプの曲の登場人物、なかなか幸せになれないな。


料理

「じっくりコトコト問い詰めて ざっくり切り裂いて 刺身でいけるくらいに新鮮なのを盛り付けたら やっぱり横にはツマでしょう」

料理の歌詞、全部近年稀に見る勢いで好き。
浮気の歌だということは結構あからさまだし、見ようによってはダサいレトリックかもしれないけど比喩を盛り込みまくるのも一つの才能。 中でもこの歌詞がすごい好きで、『浮気のネタは上がってるんだよ』という感情をここまで料理の比喩で盛り付けて持ってくるのは天才だと思う。
刺身でお出しできるくらいに新鮮なネタを掴んじゃった妻の独白が繰り広げられて、最後には『私がいるのにな』という感情をつい表に出してしまっている。
あと、1番→2番で「全部食べてやるよ」→「全部食べてみろよ」になるのもうわ!ってなりますね。1番で相手のことを好きなままぼんやりした不安に駆られて、でも何がきても全部受け入れてやろうと思っていた矢先に浮気の証拠をお出しされる。それをありったけ全部料理して突きつけて強気で打って出て、でも本当はとても悲しい。そして生きているからこそ腹は減るので、お互いを求めて結局一緒にいることしかできないとわかっているから、この洗濯が間違っていたのかは誰にもわからないんですね。でも浮気がなくても結婚生活ってそんなもんな気がする。
解説動画も見たけどやはり流石だなとしか思えない。でも心中エンドにはしないでください…


本当なんてぶっ飛ばしてよ

「アレでもコレでもソレでもなんだっていいよ カラカラだけどびしょびしょに潤して もう許した」

おしゃれなサウンドにちょっとえっちなレトリックが乗っかってていいですね、最近のクリープの真骨頂って感じ。
初手、「苦くてもいいから笑ってくれないか」で「蜂蜜と風呂場」の「蜂蜜みたいな味がするなんて嘘ついてくれた」のセルフオマージュっぽくて悲鳴を上げてしまった(明言されていないのであくまで解釈の一つ)
タイトルからもわかるけど『感情が枯れても誤魔化して騙し続けてくれ』って歌なのが、切実というかまっすぐというか。ひねくれた曲なのにどうしてこうもまっすぐな曲を書けるんだろうな~と思ってしまう。すごい。
ひねくれてるけどまっすぐ、だからこそさよならを勝手に繰り返すけど『ああして』『こうして』のわがままもたくさん入ってる。裏返せば『誤魔化し続けられるくらいに相手のことが好き』な感情の曲なので全然マイナスには感じられないし、それが一番好きな「もう許した」に詰まってて優しい曲だな〜って思います。
YouTubeのコメント欄で『「結局それ惚気じゃん」って言われるような幸せな愚痴』っていうコメントを見たけど、まさにそれだなと…!!そのまんま、カラカラになるたびにずっとびしょびしょになってたらいいよ。


キケンナアソビ

「信じてる君だけはとか言わないから この道をまっすぐ行けば帰れるから これからも末永くお幸せに ほら火をつけて」

ことばのおべんきょうで、尾崎世界観をして一番不幸な主人公と言わしめたこの曲。なんか関係性が全部おしまいですよね。
『泣きたくなるほど嬉しい日々に』というちょっと捻くれた幸せがたくさん詰まったみたいなアルバムの後2年越しくらいで新曲としてこれをお出しされて私は泣いてしまいました。
サビも好きなんだけど選ぶならここかなあ…。主人公が大好きな相手だけど浮気だから「火をつけて」全てを終わりにしてしまおうという気持ちと、体だけでも愛されることを「夢みたいだな」と思ってしまう相反する感情がとてもしんどい。「末永くお幸せに」とか「帰れるから」とか、端から自分と一緒になってくれるなんて思ってないくせに、することした後の風呂場で一人で泣いてるみたいなそんな曲。まさにタイトル通り。
浮気ってほんとした側もされた側も誰も幸せになれないよな…。だからこの曲の主人公は火を放つしかなかったのかもしれない。
あと、相手の方も『まっすぐ行けば帰れる→いい子じゃないからおうちに帰れない→幸せな生活が破綻する』みたいな流れになっているような感じがするので、どっちも全然救いがないですね。


書き出してみて思ったけど、やっぱりクリープの曲って明るい救いみたいな曲少ないですね。だからこそいろんな人に寄り添って(勝手に寄り添ってくれていると思い込ませてくれて)いるんでしょう。
幸せなことばかりじゃないけど明日も生きていくかって感じの曲が多くて、だから私はクリープハイプが好きです。

ではまたそのうち

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