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まぁ、悪くはない

「ま、人生ってさ、長ぇもんだよな」
 なんの脈絡もなく、隣に座る友達に言ってみた。
「……そうか?僕は短いと思ったが」
 彼は顎に手を当てて少し考えたあと、首を傾げた。
 短いと思える奴は幸福だと思う。やりたいことが沢山あって、とても80年とかそこらじゃやりきれなかったんだろう。こいつは多分、幸せに生きて死んだ。
「一回一回は短いかも知んねぇけど、何回も繰り 返して、その時間を総合するとめっちゃ長い」
 輪廻転生ってやつだ。前世、その前世、そのまた前世。もしくは、来世、その来世、そのまた来世。延々と続く人生のループ。最初はいいけど、途中で飽きる。やりたいこと、全部やって、学ぶことも、特にない。こうなるとダメだ。人生は死ぬまでの暇つぶしに成り下がる。
「お前みたいな優秀な奴はそうかもしれんが」
 友達は少しうなだれた。
 人間の魂は生まれてきた時点で、既に優秀な魂かどうかの選別を通過してきている。優秀なら人間。違うならそれ以外。もっと優秀なら、それこそ、何回も人間になる。
 人間が、何もしてなくてもプレッシャーを感じてしまうのはそういうこと。優秀でなくてはいけないと、そう思ってしまう。
「まぁまぁ、大丈夫だって。お前なら」
 気休め程度の慰め。ほとんど意味を成さない。
 友達は苦笑した。
 俺は友達の肩をポンと叩いて立ち上がる。
「とにかく、俺は先行って待ってるわ。また会おうぜ。お前は覚えてないだろうけど」
 そう言うと、友達は優しく笑った。
「あぁ、また会おう。……今度はお前が見つけてくれよ」
「できたらな」
 俺は友達にひらひら手を振りながら歩き出し、門の前に立つ。この門をくぐれば、もう何回目かも分からない人生が始まる。
(でもまぁ、次はあいつもいるし)
 あいつがいるなら長い、なんて感じないかもな、とか思いながら、また80年、いや、今回は100年だったか?後戻りできない道に足を踏み出した。数年後、あいつもこの門をくぐるだろう。   その時を楽しみにして。

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