今更、薄桃色にこんがらがってを読む。
どうも、かめちゃんと申します🐢
この度はとある事情を踏まえて、enza版シャニマスの名作との呼び声高いアルストロメリアのコミュ「薄桃色にこんがらがって」を読んでいきます。
当然ネタバレが多く含まれます。
振り返りながら感想が入っていくスタイルです。読みづらさは多分にありますがよろしくお願いします。
予感
冒頭、甘奈が受けるオーディションの練習をしているアルストロメリア。
審査員役の甜花と千雪は甘奈にゆるふわ評価をするのですが、それでは意味がないということで、「反対ごっこ」と称してあえて厳しいことをぶつけることにします。
甘奈が受けるオーディションはとある雑誌のオーディションで、甘奈はそのシード枠。
雑誌の名前。
「アプリコット」は日本語であんずの意味を指すapricotだと思われます。柔らかく赤みがかった黄色の実の色も特徴的。ジャムに使われることが多いです。
そしてその花の色はーーー
薄桃色。
花言葉は「乙女のはにかみ」。
練習に付き合ってくれた2人にお礼を言う甘奈。
千雪は「3人で、アルストロメリアでしょう?」という言葉をかけます。
その裏で。Pに電話が入ります。
ここで電話が入るのはシャニアニよりも早い段階で読者(我々)に事のややこしさを提示している形になりますね。
それまでの流れは概ね原作通りでした。
アプリコット
アプリコットについて調べる甘奈。
甜花と一致した印象。アプリコットの世界観と千雪の印象が似通っている事。
千雪はアプリコットの愛読者でした。
すごくすごく特別な思い入れのある程度に。
だからこそ甘奈が雑誌のグランプリになることを望む心もあったのだと思います。
でも人間はそんなに綺麗にできていない。
羨望。
ユニット内において、大人の立ち位置になる千雪。3人でアルストロメリアだから表面に出さずとも、その感情を持つことは何ら不思議ではありません。
むしろ身近な存在だからこその感情だとも思います。すごく人間らしい。
自分を省みた時、かつてそういう感情に溢れていたことがありました。
いいな、羨ましい。何かの間違いで自分ということにならないか。
そう思ってしまったら、日常の見え方はそれまでと違ってしまうんですよね。極端に言うとすれば、昨日の友が明日の敵になってしまうかのような。
千雪とPの会話。
Pは千雪に自分のことも考えて欲しいと伝えます。Pはこの時点で先の電話の件があって一つ抱えているものがあります。
先の電話。大崎甘奈のグランプリ内定の知らせです。
Pとしても結論が出ないまま千雪との会話を終えるのでした。
反対ごっこ
ウォーキング練習をする大崎姉妹。
頭の上に本を乗せるなんて、やっぱやるんだな...
千雪がその光景を目にして、話しかけます。甘奈との会話。先生の予約が取れないこと、取れそうな日も、場所がないこと。
先約は千雪でした。
甘奈は千雪に練習頑張ってと声をかけます。千雪はせめてもとアプリコットを渡します。
古本屋で見つけた、と言って。
その、些細な変化に甜花は気付いています。
甘奈は明るく振る舞っています。
帰り道。大崎姉妹は電車でアプリコットに載っていたシチューの話をしています。
甘奈もまた、千雪の機微に気づいていました。
この辺り。大崎姉妹が千雪の機微に気づくにあたってのコミュニケーションがシャニアニとの差異として印象的でした。
こちらのコミュでは表面的にはスムーズな会話の中ということもあって、本当に些細なニュアンスから気付いたのだろうなという印象だったのに対して。
シャニアニでは明らかに硬いコミュニケーションになっていて、不自然さがうかがえます。恐らくそれは、時間の都合で説明的な部分を削るためにもわかりやすくされたのだと思うのですが、今回のコミュの方が3人の関係性ができたからこその気づきのような気がしましたね。
千雪の側で見てみると、やはりアプリコットは相当特別であることがうかがえます。
レッスン室の予約も、自主練だったのだから、譲る選択肢も当然あったはずです。が、Pから自分も大事にしろとも言われているし、何よりわずかな抵抗、我儘だったのかもしれません。
「3人でアルストロメリア」。言葉は時に呪いのように縛ります。
事務所に場所を移し。
Pと先方の電話を甜花が偶然耳にします。これによって甜花もまた悩みを抱える当事者になるのです。
そして彼女はインターホンを鳴らす
ボーカルレッスンの一幕。
お腹が鳴りそうなのを誤魔化すために大きな声を出す3人。
そうは言いつつも、ギクシャクというか歯切れの悪い言葉が並び、互いに気まずさを感じる雰囲気が流れます。
千雪は甘奈を応援する言葉をかけます。
...が、甘奈はそれを素直に受け取ることができません。反抗するとかではないんですが、自身の心の中の「疑い」を払拭できない状態。
「疑い」はアプリコットの花言葉の一つ。
関係がうまくいかない2人は互いに自責の念に駆られます。
そして、甜花もまた、その状況に気がついていながら、何もできない自分に無力感を抱きます。
甜花は甘奈がグランプリになることを知っています。だからこそ、千雪さんの想いを考えるとそれはそれで辛い立場だっただろうと推察します。何せ2人にそのことを言えない。
河川敷。
千雪は声を出しています。大人が河川敷で大きな声を出しているなんて、酔っ払いくらいなもんで、当てどころのない千雪の複雑な心境が言葉にならない声として響きます。
所変わって大崎邸。
千雪がインターホンを鳴らします。
桑山千雪の、一つの大きな決心でした。
ふたつの夜
ここでは、2つの場面が描かれます。
1つの夜。
居酒屋で過ごす千雪とはづきさん。
恐らく、はづきさんはこのオーディションのことを知っている...と思います。でも千雪のことを応援したい。だから千雪の想いを受け止めてくれています。
千雪にとってアプリコットは1つの青春みたいなものだったんでしょう。今の千雪を構成する大きなピース。それに対しての喪失感というか、自分の手から離れていってしまうような感覚だったのだと。
このシーン。千雪の語りは、この短期間でよくここまで自分の心を言語化できたなと思います。
ここに向き合うことって本当に大変で、そっと蓋をするんではなく、向き合っている。強い人だと思いました。
カウンセリング的と言うか、その中でも非常に意義のあるセッションの一コマとも感じられるような。
ここも、どちらの意見も事実で、はづきさんが出したマイルドな解釈がある上で、きちんと向き合おうとしている。
やはり、アルストロメリアの中において、この千雪の立場は難しいところが多分にあることでしょう。
割と歳の離れた双子と3人でユニットを組む、しかもそのユニットスタンスは「3人でアルストロメリア」...。
もう1つの夜。
甜花は夜遅く、事務所にいるPのもとを訪れます。
意を決して2人のこと、聞いてしまったことを話す甜花。
Pは甜花に事実を伝えます。
ここは明確にシャニアニと違う点。
甜花は2人よりも先に事実を知る。
世の不条理さ。
甘奈も千雪も、もちろん甜花だって悪くない。悪くないのに、待っているのは残酷さを孕んだ物語。
こわい
千雪がインターホンを押した夜。
その夜を思い返す甘奈。自分で良いのか、千雪の方が相応しいのではないか。
だんだん自信を失う甘奈。
結果が出るものだから、その結果によっては傷つけてしまうかもしれない。そして、自分も傷ついてしまうかもしれない。
...アルストロメリアが、今までと違ってしまうかもしれない。
思いの丈を甜花に語ります。
甜花は頑張って受け止める。
こんなん選べるわけない。
結成当初の関係性ならともかく(甘奈と甜花は結成当初でも選べないと思うけど)。
甜花の選んだのは。
そして、甘奈が選んだのは。
PはPなりに事態の好転を図るべく、編集部との打ち合わせに臨みます。
ただ、ここでも結局結果は変わらない。
むしろ、突きつけられるのは現実。
編集部のやり方が綺麗だとは思わないものの、彼らの立場になってみればアタリをつけておくというのはわからないでもありません。
ましてや願っていた復刊の機会。本来ならば直オファーでも良いものをオーディションの形にしたことの是非はあれど、その機会を提供することで、原石を見つけ自誌なり自分の出版社の今後の利益に繋げることだってできる。
スポーツじゃない、仕事だということ。
こういう展開はストレイP的には、Straylight()run.で経験がありますが、ストレイは仲間同士でも競い高め合うようなユニットだから衝突が起きても自然ですが、アルストロメリアのようなユニットにおいてはダメージがデカい。Pとしても難しい場面だなと思います。商業を取るか、理念を取るか。
3人とのミーティングを設定するP。
その冒頭、甘奈から一つの決断が語られるのであった。
薄桃色にこんがらがって
甘奈が選んだのは辞退という道。
怖い。その感情が甘奈の自信を奪っていきます。
そしてそれは千雪にとって、本望ではない。羨むほどの対象だけど、譲って欲しいわけではない。複雑だけど、譲ってもらって憧れに飛び込みたいわけではないというか。
Pは甘奈と千雪に真実を告げます。
決断を2人に委ねます。
甘奈と甜花、千雪は一度持ち帰ることになりました。
甘奈も千雪も色々受け入れるためには、吐き出す必要がありました。
千雪は河川敷で叫びます。
通りかかる大崎姉妹。
千雪は「反対ごっこ」を提案します。
互いに吐き出すために。歩き出すために。
それぞれが"反対"を吐き出していきます。
ここ、やっぱり涙ぐんでしまいますね。すごく3人の感情が乗っていて。
千雪は覚悟を決めます。甘奈はまだ自分の中の怖さを少し抱えています。
でも、千雪の想いを受け取り、それを吐露します。そして。
エンドロールは流れない
ここから先は、シャニアニでは描かれなかった部分ですね。
実はここから先は、本当に僕も全く知らなかった部分になります。
結果として。オーディションの場に進んだ千雪は最終選考まで駒を進めます。
そこで彼女は持てる限りの全てを出し切ります。それはアプリコットと自分。
甜花は甜花で、2人に悔いなく戦って欲しいという思いから行動を起こします。
結果。グランプリに輝いたのは大崎甘奈でした。
でも3人はギクシャクしていません。
「3人でアルストロメリア」の再定義。傷を舐め合うのではなく、競い合い高め合うことも含めて、どんな時もアルストロメリアだってこと。
悔しさがなくなるわけじゃない。
だけど、それも分かち合える。だからアルストロメリア。
1番大事なもの。アイドルとしてどうあるか。
ドゥワッチャラブ
この「薄桃色にこんがらがって」のコミュ本編は先の内容で一旦終幕を迎えます。
ただ、後日談としてサポートSSR「ドゥワッチャラブ」があるということでそちらも読みました。
Do what you love、かなと思いますがこれは「好きなことをする」という意味になるようで(元ネタもあるようですが、後から調べてわかったことなのでそれは詳しい方にお任せします)。
このカードでは千雪の好きなこと、「アプリコット」を卒業していく過程が描かれています。
「食べちゃうから、全部」では、アプリコットの特集にあったブルーベリータルトの話をします。失恋の酸っぱさをブルーベリーに喩え、それを食べてしまうことで乗り越えると。
「卒業」では、部屋を訪ねた甜花と一人暮らしのあれやこれやを話して。
一人暮らしの寂しさも恐らく心を埋めてくれたアプリコットの世界。アプリコットに選ばれなかった千雪、その酸っぱさを"食べてしまった"彼女は、「私も大人にならなくちゃ」と言って卒業を決めたのです。
本編ではづきさんと居酒屋にいるシーンで、はづきさんとも"大人"についての話題がありました。
大人じゃない、と言って背中を押された千雪はオーディションに挑戦した。そしてその結果を、悔しいという気持ちごと"食べて"前に進むために、大人になろうとしたのかもしれません。
このカードの最後に、千雪は著名な映画祭に招待されることとなります。それは彼女が飛び込まなければ掴めなかったものでした。
"大人"でいるだけでは掴めなかったもの。自分の声を発したから、掴めたものです。
アプリコットには他にも、花言葉があるようです。「慎み深さ」「臆病な愛」。
千雪はこれまで声に出せずに、慎み深く、愛するが故の臆病さから、自分の想いに蓋をするところがあったんじゃないかなと思います。
それが、今回遠慮せずに、全力で声に出してひっくり返したからこそ、結果的にチャンスを掴むことができました。
先の「卒業」は千雪の物質的なアプリコットへの依存からの卒業なのかなと。
彼女の言った大人になるというのはこういう自立のことなのかもしれません(一人暮らしという話題も背景として)。
はづきさんとのシーンで使われていた意味と、ここでの意味には差異があるように感じます。
前者は我慢、後者は自立。つまるところ、千雪の中で様々なことを考え、再定義をした結果なのかも。
このシーンで微笑ましいのは、はづきさんがPよりも早く連絡をしようとしていたところ。
はづきさんの千雪への想いが感じられて嬉しかったです。
読み終えて
読み終えた感想として。
改めてアルストロメリアへの印象が変わるコミュだったなと。
やはりコミュを読まないと、アイドルを記号的にしか見れないところが出てきてしまって、内面的な深いところを知り得ない(読んでもわからんもんはわからんでしょうが)。
シャニアニから今回のコミュを読んだわけですので、対比するとよくまぁこれを1話に収めたなとも思いました。
アニメではエンドロール以降の話は扱われていないわけですが、どちらであってもアルストロメリアが歩み出す物語にはなり得る。
1番印象の違いがあったのは甜花ですね。
やはり、当事者である甘奈と千雪に比べて、甜花はサポーター的立ち位置にいたわけですが、
オーディションの真実を知る展開を早めることによって当事者性を高め、彼女も悩める1人としてより強調されたように思います。
だからこそ、彼女の動きを見ていると、妹だけに肩入れするんじゃなくて、千雪もちゃんと応援しているという健気さに心打たれるものがありました。
甘奈については、より心の中の"こわさ"が焦点化されて、絡まっていく様が描写されているように思いました。
ただ優しいからだけではない、甘奈自身の葛藤。
千雪も、最終的にオーディションに出て、チャンスを掴む姿が描かれたことで、ユニットとしてだけでなく、個人として大きな成長が見えたような気がします。
その上で、シャニアニに軍配が上がったなと思ったのは、やはり河川敷での反対ごっこ。
動きがついたこと、そしてこのコミュにおいてすごく意味を持つ"声"の力を感じました。迫真の演技に引き込まれ、涙したのです。
これは決して優劣があるものではなく、それぞれに魅力がある部分だなと思います。
シャニアニを通してここに辿り着けてよかった。そう思えるコミュでした。
また時間があったら他のコミュも読んでみます。それでは、ここまでお付き合いありがとうございましたー!(6000字越え)
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