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家にかかってくる電話もろもろ

 自宅兼事務所として個人事業をするようになってから、固定電話にかかってくる多くは押し売りになった。
 名刺を渡して直接話した人からは、スマホに連絡があるから、固定電話にかけてくる人は、会ったことのない人の確率が高い。
 淀みなく早口で、こちらに一瞬のスキも与えないトーク。
耳は良い方だけど聞きとれない速さ。「滑舌良いね~」と感心しながら、無表情で受話器を持つ。ひとしきり話した直後に、今から行って良いかと聞くのもある。

 夕方かかってきて夜7:30頃行って良いかというのもあった。いや、こっちは営業トーンの声だけど、今、割烹着着てトンカツ揚げてんのよ。
普通のオフィスだとしても、これにYESという人はいるの?

 相手の顔もわからない、聞いたこともない横文字の社名、結局何のセールスかもわからない会社。
 通り魔。そう、突然襲ってくるに等しいから、これはもう通り魔。刺された横腹を押さえながらトンカツのタイミングだけは逃さぬようひっくり返す。
 ただガチャンと切れないのは、向こうから確認でと住所を言われるから。向こうはこちらの住所を知ってるのだ。
 最初のころ「資料をメールで送って下さい」と言っていたのだが、「そういうのはできません」とか言う。んなアホな。

 以前はよく短期の派遣の仕事をしていた。紹介されるのはテレアポが多いので、仕方なくやっていた。
一口にテレアポといっても、受電メインと架電メインがある。
受電は問い合わせや、相談などが多い。
架電はセールスや確認が主である。

 前述のとおり、自分が顧客側になったら超面倒くさい架電だが、かつては自分もしていた。
 一つは相当きつかった。トウモロコシの商品相場の案内である。
電話帳を見てどんどんかける。
 マニュアルをただ読みあげる。工夫した話し方をした方が良いのかと思いきや、意外にも棒読みで良い。「一気にまくしたてろ」と言われる。9時から17時までかけ続けて、A4用紙に書かれたマニュアルの半分位まで言えるのは10人位。そう、それ以外は3~10行位で切られるか、お断りを言われる。
そんなことを10~12人位でずっとやっていた。
 マニュアルを全部読み終えられそうな場合は、途中で手を挙げる。すると社員がやってきて代わり、「詳しく話したいのでそちらへ行きます」とかアポを取る。
ああっ、どうかこの後この人成約しませんようにと祈っていた。
怖いんだから~商品相場。
 今となって言えるのは、その社員というのがみな、堅気とは思えない風貌なのである。どうしても短期で働きたいから受けた仕事であったが、「人間辞めますか?この仕事辞めますか?」と自問をするようになり、2か月ほどで辞めた。

 もう一つは、超大手のクレジットカード会社の申し込み確認である。
こちらは、お客様が自分で申し込んでいるので、おおむね好意的なトーンで対応して頂ける。
 そんな中でも謝罪しなければならないのは、「海外旅行に行くのでカードを早急に発行せよ」に、できない旨を伝えるとき。
いやいや、そんなに急ぐならもっと早く申し込んでよん~と思いながら、
「大変申し訳ございませんが致しかねます」という。
あと、ブラックリストに載っている人が、娘の名前でカードを発行しようとしていて揉めるなど。娘さんに確認して発覚する。「なんで娘に電話すんだよ」って当たり前やん(汗
 その頃のエピソードは事欠かない。

 セールス電話なり、コールセンター系の電話なりとのやり取りは、誰もが経験しているはず。相手はワントーン上げた声で丁寧に聞こえるが、見た目は接客にふさわしくない人も多いのだ。
 髪の毛がシルバーやグリーンの人、怖いよってぐらいのネイルをしている人、脚を組んで思いっきり猫背で態度悪い人、ピアス三昧の人、歩くたびにカチャカチャ言うなと思ったら、腰のあたりやカバンに鎖が色々ついている人などなど。

 さっきもかかってきた。チャラ男の声だった。Tシャツ短パンビーサンかもしれない。もちろんグラサンは頭の上である。


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