トップの仕事

 目を覚ますと時刻は朝の5:00だった。今日も目覚めはバッチリ、頭が覚醒していくにつれて身体中にエネルギーが満ち溢れてくる。寝ているのももどかしくなり、起き上がって出社の準備に取り掛かる。今日も忙しくなるだろう。

 スーツを手に取る。シャツもパンツもシワ1つない。完璧な朝だ。

 アパートの部屋を出ると、まだ朝の6:00だというのに日差しがギラギラとしていた。8月は朝からこうだから気分がいい。自然と職場へ向かう足が軽くなる。

 出社の時間までまだ随分と余裕があるが、早い分には問題ないだろう。やるべきことはたくさんあるし、やればやった分たけ新たな仕事が出てくるのだ。自分の限界を今日も超えていこう。

 会社へ着くと他にはまだ誰も出社していない。事務室へ入り自分のデスクにカバンを置く。壁にかけられたホワイトボードには各自の営業成績とそれに基づいた順位が書いてある。そこでは自分はトップだった。それを見るたび誇らしい気持ちになる。やはり居ても立っても居られない。早速仕事に取り掛かろう。

 前日分のレポートを上長のデスクに置き、再び会社を出る。ひとまず公園へと向かった。

 茂みに近づき地面をつぶさに見て回ると、セミの抜け殻が落ちているのを見つけた。

「よしっ!」

 見つけた途端、思わず声が出てしまう。同時に身体中にアドレナリンが湧き出るのを感じた。この仕事で自分は会社で一番の成績を収め続けているのだ。

 見つけた抜け殻を、壊さないように慎重につまみ上げる。手頃な植え込みの葉に抜け殻をそっと乗せると、あたかもそこでセミが羽化したかのように見える。それを様々な角度から撮影する。これも自分の成果を会社に報告するための大事な工程だ。

 撮った写真をチェックし、我ながら会心の出来であることを確認したあと、再び地面にセミの抜け殻が落ちていないか探す。夏の日差しがジリジリときつくなってきた。これからもっと日差しが強くなるだろう。だが自分の闘争心も刻一刻と燃え上がっていくのだった。

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