【KAMEの蹴球三昧#7】20-21欧州サッカーチーム紹介/第2回_レアル・マドリー(スペイン)

実質補強なし。人員整理でコストカット

ラ・リーガ王者の夏は全く目立つことがなかった。フロレンティーノ・ペレス会長の時代でこのようなことは過去にほとんどない。コロナ禍で多くのクラブが財政難に苦しんでいるが、ロス・ブランコスはリーガにおいてまだマシなほうだ。ライバルのブラウグラナは大赤字だったにもかかわらず補強を進めたのと対照的なシーズン開幕前。しかしこれはすべて来年の夏に向けての準備だと考えておくべきだろう。

<IN>
○レンタルバック
OMF/マルティン・ウーデゴール(←レアル・ソシエダ)
RSB/アルバロ・オドリオソラ(←バイエルン)
GK/アンドリー・ルニン(←オビエド)

<OUT>
○レンタル移籍
RWG/ギャレス・ベイル(→トッテナム)
CMF/ダニ・セバージョス(→アーセナル)
CF/ボルハ・マジョラル(→ローマ)
RMF/久保建英(→ビジャレアル)
OMF/ヘイニエル・ジェズス(→ドルトムント)

○完全移籍
OMF/ハメス・ロドリゲス(→エバートン)
RSB/アクラフ・ハキミ(→インテル)
LSB/セルヒオ・レギロン(→トッテナム)
OMF/オスカル・ロドリゲス(→セビージャ)

○レンタル期間終了
GK/アルフォンス・アレオラ(→PSG)

昨季はラ・レアルで武者修行を積んだノルウェーの"神童"マルティン・ウーデゴールが予定より1年早めてマドリーに帰ってきた。公式戦36試合で7ゴール9アシストをマークし、攻撃の中心選手として活躍を見せたことでジダン監督が呼び戻した。35歳のルカ・モドリッチ、30歳のトニ・クロース、28歳のカゼミーロ。中盤はここ約5年この3人が絶対的な存在だったが、ようやく昨季に22歳のフェデリコ・バルベルデが台頭。ここに今季から21歳のウーデゴールが割って入ることに期待したい。彼はマドリーの中盤で唯一、利き足が左であるということも注目だ。
そして昨季の冬にバイエルンへ出場機会を求めて移籍したオドリオソラ。不動の右SBダニ・カルバハルにプレッシャーをかける存在にならないといけない。第3節のバジャドリー戦でスタメン出場を果たしたが、持ち味の縦へのスピードは確かだが、クロスの質やパスの精度があまりにもカルバハルと比べて低すぎる。個人的には2年間ドルトムントで活躍したアクラフ・ハキミを残すべきだと思ったが、ジダン監督の構想には入らなかったことでオドリオソラをカルバハルのバックアッパーとして置いておくしかないだろう。

マドリーの不良債権となっていたベイル、ハメスはそれぞれプレミアのクラブへと活躍の場を移した。ハメスには移籍金が発生しなかったことも分かっている。ベイルはトッテナムと給料負担を折半。ハメスの給料とベイルの給料の半分の負担が減っただけでお金を回収できなかったけれど、チームの不満分子がいなくなっただけでもロッカールームはしっかりと団結できるだろう。

攻撃の課題はベンゼマ頼みからの脱却
期待はアザールとアセンシオだが…

第5節終了時点で3勝1分、勝ち点10。得点6、失点2。ベティス戦で2失点があったものの、他の3試合ではクリーンシートを達成している。昨季に引き続き手堅い守備で勝利を掴んでいる。しかし、第2節のラ・レアル、第4節のバジャドリー、第5節のレバンテのいずれのゲームも攻撃がピリッとしなかった。レバンテ戦ではカリム・ベンゼマとヴィニシウス・ジュニオールに何度も決定機が訪れたが尽くシュートは枠の外へと飛んでいく。2人は1ゴールずつ奪ったが、トリプレーテをしていてもおかしくないほどチャンスはあった。バジャドリー戦ではベンゼマとルカ・ヨビッチが2トップを組んで挑んだが、2人のポシジョンが被るシーンが多々あった。ヨビッチはボールを欲しがって下がる傾向が強く、ベンゼマはチャンスメイクでいろんなところに顔を出す。そうすると必然的にトップに誰もいなくなる。ヨビッチは3回ほど決定機を迎えたが決めきれなかった。構想外扱いのマリアーノ・ディアスも含め、エースストライカーがベンゼマ以外いないのはあまりにも辛い。

ここまで挙げた6得点は、ヴィニシウスが2ゴール、ベンゼマ、セルヒオ・ラモス、バルベルデが1ゴールずつ、オウンゴールが1つ。若いヴィニシウスやロドリゴに10ゴール以上を期待するのは多少酷な話だ。私が期待したいのは、ベイルから11番を引き継いだマルコ・アセンシオ、そしてエデン・アザールの2人である。
両者とも昨季はシーズンの大半をケガで棒に振ってしまいラ・リーガ34回目の優勝を果たしたチームに貢献できなかった。特に1億ユーロの移籍金を払ってまで獲得したアザールには多くのファンががっかりさせられた。が、現状蓋を開けてみるとアセンシオは復帰して試合にも出場しているが、アザールはコンディション不良に加えて筋肉系のトラブルが発生して復帰目前に再度離脱した。10月末のエル・クラシコに間に合うか微妙だという。コロナ中断明け以降も数試合に出ただけで試合勘も取り戻す必要があるアザール。なおかつジダン監督は万全の状態でなければ使わないということで、クラシコに彼が先発メンバーとして名を連ねる可能性は限りなく低いと言わざるを得ない。一ファンとしても彼の活躍を早く見たい。

守備は盤石だが、早く見つけたいカピタンの後継者

昨年リーグ最少失点を記録した鉄壁ともいえる守備陣。サモラ賞のGKディボー・クルトワ、カピタン(主将)セルヒオ・ラモス、W杯優勝メンバーのラファエル・ヴァランの両CBは不動だ。しかしラモスも35歳だ。まだまだやれそうなのは確かだ。毎試合鋭い読みで相手の攻撃の芽を摘み取り、狡猾な駆け引きも繰り広げている。そして何より存在が偉大すぎる。8月のマンチェスター・シティとのCLベスト16のアウェイゲームで、その存在の大きさがあまりにもクローズアップされてしまった。1stレグの1発レッドで出場停止の彼に代わって出場したエデル・ミリトンは確かにあの時悪くはなかった。しかし隣のヴァランはミスを繰り返した。リーガではほとんど見られないようなミスをカピタン不在の重要な試合で見せてしまった。
カピタンがいなくなるとどこか別のチームになってしまうのが今のマドリーだ。後継探しは急務だろう。チームのフランス化を進めているといわれるジダン監督のターゲットはフランス代表ダヨ・ウパメカノ(RBライプツィヒ)だと言われている。ミリトンでは現状心許ないのは確かだ。
後継とまではいかないが、ピボーテのカゼミーロのバックアッパーも必要である。ここもフランス代表エドゥアルド・カマヴィンカ(レンヌ)がターゲットだと言われている。

世代交代は急務だが、将来への期待は特大

欧州3連覇を果たした時と変わったのはクリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス)というゴールマシンがいなくなったことと、GKがケイロル・ナバス(PSG)からクルトワに、左のラテラルがマルセロからフェルラン・メンディに代わった以外ほとんど序列に変化はない。来夏、PSGから念願のキリアン・ムバッペの獲得に動くことはほぼ間違いないが、各ポジションで世代交代が始まっていくだろう。現在トップチームで活躍するヴィニシウスを筆頭に、ロドリゴ、バルベルデ、ヘイニエル、そして久保建英と下部組織フベニールBに所属する中井卓大がどう食い込んでくるか。未来のスーパースターが多く集うマドリーの将来に期待は高まる。

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