見出し画像

【F1】コラム:南仏の熱い風は王者を後押し。優勝争いはいよいよ3強の戦いへ〈第12戦フランスGP〉

2022シーズンも前半残すところ2戦となり、フェラーリが2連勝と反撃の狼煙をあげてきたなかで迎えたフランスGPでしたが、結果的にはマックス・フェルスタッペンとレッドブルの強さが際立つ格好となりました。そして、昨季まで8連覇を成し遂げたチャンピオンチームが優勝争いに絡みそうなところまでやってきました。いよいよ優勝争いが、レッドブル、フェラーリ、メルセデスの3強になりそうですね。

フェルスタッペンは予選ではフェラーリ勢のチームプレーの前になす術なしでしたが、予想された通り決勝ではシャルル・ルクレール(フェラーリ)と1対1の真っ向勝負となりました。直線成分の多いセクター2ではレッドブル、中低速、中高速が主体のセクター1とセクター3ではフェラーリが速かったわけですが、路面温度が60度近くまで上がるなか、左フロントタイヤをいかに守りながら走るかも勝負のカギになります。直線で速いレッドブルは比較的タイヤに負荷をかけず攻めることができますので、フェルスタッペンが優位にレースを進められると予想していました。ところが、フェルスタッペンはルクレール攻略には至らず、14周目以降からむしろ引き離される展開となりました。そして17周目に上位陣ではいち早くピットに入り、アンダーカットを狙いました。

その後の戦いがどうなるかというところでルクレールがまさかのスピンアウトを喫し、戦線を離れてしまいました。最速のマシンを持っていながらポイントを積み重ねられない、フェラーリとルクレールは99年、05年のマクラーレン・メルセデスのミカ・ハッキネン、キミ・ライコネンを彷彿させますが、いずれにせよこれでフェルスタッペンの優勝はトラブルがない限り確定したようなものでした。セルジオ・ペレス(レッドブル)はタイヤのデグラデーションに苦しみ、スタートで先行したルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)を抜きあぐね、中盤以降はジョージ・ラッセル(メルセデスAMG)からも攻められるような状態でした。

今のフェルスタッペンは何度も王者を獲得しているかのように熟練度が高いです。今季はポイントの取りこぼしに繋がるミスは一度もないので、63ポイントまで拡大したルクレールとのチャンピオン争いで逃げ切りは確実になったと見ています。しかし今後のチャンピオン争いに不確実性をもたらす存在がメルセデスです。この週末のメルセデスは予選でのパフォーマンスは期待を大きく裏切るものでした。ところが決勝になると、フェラーリ、レッドブル勢と同等のペースで走行し、今季初のダブル表彰台獲得に成功しました。酷暑のコンディションだったこともタイヤに優しいメルセデスのマシン特性が十分に活かされ、彼らの狙い通りレッドブルの一角を崩したことにも繋がったと見ています。このメルセデスの強さが継続すると、よりチャンピオン争いも緊張感が増してきますし、フェラーリにとっては危機感を抱かせるものになると思います。

ルクレールはタイトル獲得の可能性を残すにも今回のようなミスは許されません。そしてチームもカルロス・サインツとのレース中の公開された無線のやりとりを聴くと、タイトルを獲れないチームの典型的なやりとりでした。フジテレビの中継で解説を担当された山本雅史氏が指摘していましたが、レッドブルやメルセデスのようなチームは基本的にチームのストラテジストが考えた戦略を、ドライバーが納得する情報を与えて戦略を実行します。ドライバーにいちいちどっちがいいか聴くようなことは滅多にありません。昨年のロシアGPに代表される特殊なコンディションであれば話は別ですが、基本はチームコールです。今回のレースでは3位を狙ってリスキーな戦略に賭けるよりも、しっかり5位を確保してライバルから1ポイントを削るほうが私は賢明だと思います。チャンピオンシップにおいてポイントゼロで終わることが一番あってはいけないのです。その判断を素早くできない限り跳ね馬の復権は遠いと思いました。

次のハンガロリンクではフェラーリ優位だと思われますが、三つ巴の優勝争いが展開され素晴らしい前半戦の締めくくりとなることに期待したいと思います。

text by 亀石 弥都
photo by Formula 1 Official Twitter

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?