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家族に暴力を振るう高齢男性の最期

介護に携わっていて「暴力」に関する話を聞くことは事実としてありますが、このエピソードは一部事実を修正しています。
「わたしの看護師さん」をご利用されているお客様の許可無しに掲載することはありません。

ある高齢男性にガンが見つかりました。

本人はすぐに精密検査をして、間に合うのなら手術をし、余生を過ごしたいという希望。

けれど、受診結果を知った家族からは意外な一言。

「もうお父さんは高齢だから、治療なんかしなくてもいい。
治療で苦しむ人もいるし、長生きしても良いことはない」

最近は、延命治療を望まない人たちが増えています。苦しまずに、自然に穏やかに最後を迎えたい・迎えてほしいという願いが背景にあります。

でも、ご家族から発せられた「長生きしても良いことはない」という一言の持つ意味は、それとは違った理由からでした。

この高齢男性は、弊社の保険外サービス「わたしの看護師さん」をご利用になっていて、定期的に病院受診のお手伝いをしていました。

ご家族は仕事があるために病院に付き添うことができない。加えて、家族関係が悪く、任せられるなら誰かにお願いしたいというご家族の強い希望があったからでした。

どうして、家族関係が悪くなってしまったのか。

それは、長年連れ添った妻と子どもに対する暴力が続いていたからでした。
興奮が治まらない時は、警察まで駆け付ける騒ぎになっていたそうです。

私たちスタッフには暴力を振るうような素振りは何ひとつも見せないので、暴力の事実を聞いたときは驚いてしまいました。

ガンの治療について医師は、とにかく精密検査をしよう。高齢であっても両足で歩けるのだし、今は治療も簡単だから諦めないでと本人に伝えます。

けれど、ご家族はーーー。

一般的に治療の意思決定は「本人の意思」、「家族の意向」、「医学的判断」の3本柱ですが、今回は「本人の意思」を加えたくないとご家族は希望されました。

担当するケアマネージャーも「しかたがないですね...」と小さく頷いていました。

現役時代を好き勝手に過ごし、散々家族に迷惑をかけた。それが高齢になり、仕事を退職して、家で一人で過ごす時間が増えたことを機にツケを返すようにいまさら振るまっても、家族関係を修復することはとても大変なことです。

ましてや、介護をしてもらうためにとミエミエの態度だったりすると、到底、家族は快く受け入れられないことは容易に想像できます。(悲しいけど、もう手遅れだということも...)

元気なうちにどう生きるか。
家族や友人とどのように関わるか。

老後は人生の集大成とも言いますが、現役世代の生き様が老後を大きく左右します。

ではどうしたら、この男性と同じような道を歩かずにすむでしょうか。

暴力なんてもってのほか。
家族をモノ扱いせず大切に付き合うことは当然のことで、一方的に自分の主義主張を押し付けるのではなく、労わりあう姿勢で対話をする。「お互い様」や「感謝」の気持ちがあれば、支え合っていけると思います。

終末期の看護に入ることがありますが、家族や友人たちが駆けつけ、賑やかに見送られていく人の共通点は、人間関係を大切にし、地域に必要とされてきた人です。

口に出し、態度に示して、ようやく相手に伝わります。
「ありがとう」の気持ちと言葉を携えて、身近な家族や友人と付き合っていきたいですね。


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