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当たり前の話

ここ最近、自身の生活はとても穏やか。

1年、2年前の今日、自分がどんな生活をしていたのか思い出せないほど平穏な日々。

ただ、

新年度、新入生、新生活といった晴れやかな言葉に合わせて、慌ただしく余裕のなくなる感覚が蘇ってくる。心がざわざわする。息苦しい、あの感覚。


そうなるといつも、 

" 山のあるところへ "     

" 海の見える場所へ "   と、叫ぶ心の声が聞こえる。


田んぼと山がただひたすら続く景色、透き通った波が飛沫を上げて岩にぶつかる光景。

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私が生まれ育った新潟、村上市で見られる風景だ。


私のルーツは、やっぱり地元にあると思う。

こうやって" 地元に帰りたい "という思いが無性に湧き上がるのは、決まって4月に入ってのことだった。



ルーツや基盤。

こういうものは、

自分の初めてが深く関係していると思う。

生まれて初めて会った人、育った場所、通った学校。

上京して初めて住んだ街、できた友達、経験したアルバイト。

就職して初めての仕事、上司、部下。



人の環境や立場は変化していく。

だからずっと同じ状態でい続けるって難しい。

というかこの地球上に、人間として生まれた私たちにとって、それは不可能なことなんじゃないか。


それでも変わらないものがあるのは、

それぞれにルーツや基盤になるものがあるから。

その基盤は培われてきたものだから、変わらない。

変わらないものには、

過去に培われてきた知識や経験がその基盤にある。



普段は眉間に皺を寄せる50歳の管理職が、

中学の同窓会では無邪気な顔を見せるのに通じる気がする。

同窓会中に限っては、あの時の中学生に戻る。

いろんな経験を積んで人間性が変わったとしても、あの時の中学生に変わりはない。取り巻く環境によって、戻る瞬間がある。(だから同窓会の醍醐味は4.50代にある、と予測している。)



だから、

高濱正伸さん監修の

『よのなかルールブック』に書かれていることは、

どんな時代にも、メシを食っていくために必要で、変わらず大事にしたい言葉たちだ。


たまたま本屋で

『もっとよのなかルールブック』

を見かけて、手に取って、思わず買った。

きっとこのことを胸に刻んでおけば、自分の力で乗り越えて、たくましく生きていけそうだ。

家に帰ってじっくり読んだとき

引っかかって、どうしても頭から離れない言葉があった。


「よのなかの当たり前」を当たり前にやる。
よのなかを生き抜けるのは、「当たり前」を当たり前にできる人。約束を守る。正直でいる。人に親切にする。いつでもきちんとできるって、じつはすごいことなんだ。


最初は

" その通り! "と、拍手したいくらいに共感した。

「当たり前」を当たり前にやることが、どれほど難しいか。

そして、

私はその「当たり前」を自分に課してきたし、関わる人たちにその「当たり前」を求めてきた。

でも、

この言葉を反芻するたび、違和感が強まる。


どんなことが「当たり前」なんだ?

そんな疑問が浮かび、消えなくなった。


この本には、

「約束を守る。正直でいる。人に親切にする。」が「当たり前」のこと、として書かれている。

たしかに世間一般で大事にされていることだ。道徳の授業では、こういう事柄から教えるんだと思う。

でも「正直でいる。」は、どうなんだろう。

自分の心に正直になって話したり行動したりすることは、もちろん大事。しかし、それで社会を上手く渡り歩けるのだろうか。(上手く渡り歩こうとしていることにそもそもズレがあるのかもしれないけど)

" 嘘も方便 "なんてことわざが日本にはある。

社会を生き抜いている大人は、なんでもかんでも正直だと苦労することを知っているはずだ。


そもそもこの「当たり前」は、

だれの「当たり前」なのだろう?


「よのなかの当たり前」と言うけれど、

今の世の中は多様で、複雑だ。

そんな中で

全員に共通する「当たり前」なんてあるのだろうか。


おそらく、ない。

これからはもっとなくなっていくはずだ。


だとしたら

この本に書かれた「当たり前」を当たり前にすることは、ここで想定される社会を生き抜くための方法でしかない。

それよりも

コミュニティごとに「当たり前」があること、

個人によっても「当たり前」が違うこと

を理解しておいたほうが

社会に出たとき混乱せずに済むだろう。



「当たり前」は人それぞれ違うのが、当たり前。


今いる社会で生き抜きたければ、その社会の「当たり前」をできるようにしたほうがいい。

自分の「当たり前」を変えたくなければ、同じ「当たり前」をもつ社会にいけばいい。

どこにもないなら、自分でつくってしまえばいい。

きっとそういうこと。