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#5 岩岡教育長から学ぶ 「教育とまちづくりが噛み合う鎌倉で、子どもたちを豊かに育む」

 教育長というのは、首長がまちの教育において実現したいことを踏まえて選び、任命します。私は文部科学省に勤務をしていたのですが、そこでいろいろな人脈ができる中で鎌倉の松尾崇市長と出会いました。そして、松尾市長が次の教育長を誰にするかを検討する時に、岩岡にやってほしいという思いを持たれて、ご提案を受け、私もやりたいという気持ちになって、現職に着任しました。

 鎌倉は、新しいものが好きで、リベラルで、寛容性がある。それらは、ビーチ文化と言えるものでしょう。また、昔からの地の人たちがいて、伝統を大事にする文化もあります。アメリカで言うと、私が留学していた経験のあるロサンゼルスに、ボストンが入り混じったような、唯一無二の魅力を持つまちだと思います。教育長の任を受けて、この鎌倉ならではの風土を教育にも持ち込みたいと強く感じているところです。

 伝統と革新、それらが鎌倉には共存していると、鎌倉に来る前から思っていました。鎌倉時代に起こったことも、非常に革新的です。武家が政治に強い影響力を持つとか、複数人での合議制で物事を決めていくとか、とても新しい物事を受け入れる土壌があります。

 そうした都市の魅力を松尾市長のもと、世界に誇れるまちとして発信していこうという取り組みをされていて、誰もが自分らしくいられる共生社会を目指していく中で、教育というのは重要なパートだと思っています。鎌倉に住む人たちがどのように文化を再生産して、どのように子どもたちを育てていきたいのかということが、まちづくりの方向性としっかり噛み合っている必要があります。

 私が鎌倉市教育委員会に着任する際に強く思ったのは、これだけ魅力的な人と文化と自然とがたくさんあるまちなので、それらの資源を最大限活かして新しい価値を生み出していく教育現場をつくっていければ、まちづくりの方向性と教育の方向性がマッチするだろうということです。それを実現するのが、鎌倉市教育委員会の存在意義であると考えています。

 教育長としての私の役割は、コミュニケーターだと思っています。鎌倉でやりたいことや、やるべきことは、子どもたちを含めた市民の皆さんの中にすでにあります。やりたいこと・やるべきことがあり、魅力も資源もあって、それらを実現するためには、行政の知恵を使って制度にしたり、予算化する必要性が出てきます。そうした取組を通じて、人と人とをつなげていき、モチベーションや意欲を活性化させる。それが私の役割だと思います。

 鎌倉に住んでいらっしゃる方々の多くは、ご自身の生き方に個性を見出しているのではないでしょうか。そういう方々が集まってくる土地柄とも言えます。これは、子どもたちにとっても良いことです。子どもたちにも当然、個性がありますので、鎌倉の個性的な、多様な大人の方々と触れ合うことで、「こういう生き方もあるんだ」「ああいう考え方でもいいんだ」と思えるようになります。

 鎌倉は、固有のストーリーがあるまちです。そこに、自分自身のストーリーを持つ人たちが共感するのではないでしょうか。風土と自分の生き方とがマッチして、鎌倉に住みたいという方が集まってくるのだと思います。

 教育長に着任して最初に着手したのが、鎌倉スクールコラボファンドです。これは、プログラミングの授業がやりたいとか、SDGsの活動を行いたいとか、学校として実践したいことはたくさんあるけれども、自分たちだけでは難しいので、企業やNPO、大学などと連携して、教育をより良いものにしていこうという取り組みです。こういった取り組みを通じて、子どもたちがやりたいことや教師がやりたいことが、多様な実践として鎌倉で花開いてくれたらと願っています。

 これからの鎌倉、そして日本を担っていく子どもたちに望むのは、みんなと同じ山を登ろうとしないことです。有名大学に行って、良い企業に勤めて、高いお給料をもらうだけでは幸せにならない世の中になりつつあります。自分だけが高く登れる山というのが、必ずあるものです。それを、子どもたちには探してほしいです。


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