見出し画像

『アムステルダム』レビュー

昨年末話題になったTV番組『エルピス』は、報道の闇に踏み込んだスタンスが評価されたが、結局はさらに大きく深い暗部である政治の世界についての言及は、主人公長澤まさみ扮するニュースキャスターの妥協で実現しなかった。そのことを『アメリカン・ハッスル』で実際の収賄スキャンダルを映画化したデヴィッド・O・ラッセルが脚本を書き監督した『アムステルダム』を観終わって直ぐに思い重ねた。
第二次世界大戦直前のアメリカ国内にあってのヒトラー、ムッソリーニをめぐる政界・経済界の暗闘が豪華出演陣で描かれ、スピード感溢れ、軽快感も加味され見応え十分。『アメリカン・ハッスル』でも熱演だったクリスチャン・ベールが見事な狂言回しを担い、マーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントンとの競演にとどまらず、ラミ・マレック、マイク・マイヤーズ、ロバート・デ・ニーロ等々を引き立てる座長に徹している。日本映画、TVも、このくらいまで重い主題を軽々と描出して欲しいな。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?