田中泯✖️犬童一心『名付けようのない踊り』

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犬童一心監督、渾身の一作をようやく鑑賞。田中泯という奇跡を、見事に、しかも見応え十分に追い続け、しかと捉えた熱情に敬意。息を凝らしての約2時間、圧倒的な仕上がりだった。それでも、しかし、映像としての限界は致し方なく、場を共有し、眼前でその存在を共有させられるはずの空気、共存感までは再現しきれなかった。それは、ライブと映像との決定的、宿命的な差異であり、監督に負うべき責めはない。監督の体感したものを映像化しようとする格闘の道筋は受け止めた。それ以上の何を望むのだと叱責されること覚悟の上で、なお足りない、と無い物ねだりせざるを得ない。パンフレットも読み応え十分。共生する石原淋の文章は、ことのほか胸に響く。しかし、それを読むことでも、おそらくなお補いきれない、まさに「名づけようのない」空気、魂への切望、憧憬をかき立てられる重厚な一作である。

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