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子どもたち一人一人が持続可能な社会の創り手に ~鎌倉SCFの活用から見えたこと

教育長の岩岡です。

魅力的な人材・団体とのコラボレーションにより、鎌倉の子どもたちにSociety5.0を生き抜く力を育む教育活動を実現するためのプロジェクト─「鎌倉スクールコラボファンド(鎌倉SCF)」

第2回のコラムでも紹介しましたが、令和3年度は小坂小学校と玉縄中学校の「SDGsをテーマとした課題解決学習」(総合的な学習の時間)に、鎌倉SCFを活用しました。

1.社会課題をジブンゴトに

SDGsといっても、子どもたちの興味や関心は一人一人違います。地球温暖化に関心のある子どももいれば、マイクロプラスチックの課題を探究したい子どもいます。難民問題、森林保護、外来種、核兵器の廃絶、LGBTQ・・・・子どもたちが希望する探求テーマはまさに十人十色。

そのため、担任が全ての探究に個々に伴走することは難しいですが、鎌倉SCFを活用してNPOや大学と連携し、子どもたちが関心のある分野ごとにアドバイザーや伴走者をつけることで、子どもたち自らが設定したさまざまな社会課題の探究にじっくりと取り組むことができました。

小坂小学校「SDGsをテーマとした課題解決学習」の発表会の様子

3月に行われた小坂小学校の発表会では、自分たちの行ってきた取り組みを「学習」ではなく「活動」と表現し、「ジブンゴト(自分事)」として捉えていたことに驚かされました。

例えば、森林保護の活動をしていたチームは、「最初、ブラジル・アマゾン地域の熱帯林保護やNGOへの寄附について考えていたが、本来森林は自分たちの身近にあるもので、地域の森林を大人たちと一緒に守っていくことが一番大切なことだと気付いた」として、社会課題をジブンゴト化し、実際に地域の活動に参加したことなどを発表してくれました。

また、玉縄中学校の発表会では、例えばLGBTQ+(性的マイノリティーの人を表す総称の一つ)について探究した生徒たちは、性別で分けるような言葉・表現について鋭く問題を指摘すると共に、自分たちの制服に着目し、どんなデザインであれば、誰もが自由に自分自身を表現できるかを考え、紹介してくれました。

中学生ならではの視点・切り口が光る発表の様子

2.学びの意義と成果

日本の子どもたちは自己肯定感が低く、自分は国や社会に影響を与えられないという感覚を持っているという国際比較データがあります.さまざまな教育関係の会議で引用され、我が国の学校教育の進化・変革の必要性の議論の基盤となっています。下記に示すデータでは、自分の行動で、国や社会を変えられると思うと考える子どもの割合は26.9%で、調査対象国のうちぶっちぎりの最下位となっており、この傾向は長らく続いています。

日本財団「18歳意識調査」2022年3月

今回の活動を通じて、子どもたちはどのように変化したのでしょうか。小坂小学校での活動においては、1年間の活動の実施前後で子どもたちの意識状況のモニタリングを行いました。
その結果、「自分たちが動くことで、地域や社会が変わっていく」と思うかどうかという質問に対して、80%を超える子どもが「とてもそう思う、そう思う」と答えるに至りました。
これまで最も多かった「なんとなく」という回答が激減し、「とてもそう思う」の回答が最多となったのは、素晴らしい成果であると思います。

小坂小におけるモニタリング結果

こうしたことを踏まえれば、今回の活動を通じて、子どもたちは社会課題をジブンゴトとして捉えて、実際に自分が動けば社会が変わるという実感を手にし、持続可能な社会の創り手としての第一歩を踏み出すことができたのではないかと思っています。
また、小中学校の学習指導要領における「総合的な学習の時間」の目標においては、「探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに,互いのよさを生かしながら,積極的に社会に参画しようとする態度を養う」ことが掲げられていますが、その目標達成のために大変効果的な活動であったのではないでしょうか。

令和4年度も鎌倉SCFを活用して、子どもも教師もワクワクする教育活動を推進してまいります。

令和3年10月4日から令和4年3月31日まで募集していました「鎌倉スクールコラボファンド」については、48名の方々から、456万5,000円ものご寄附をいただきました。ご支援ありがとうございました。
https://www.furusato-tax.jp/gcf/1387

(広報かまくら 令和4年5月1日号 掲載文に加筆)