サッカー分析のための8指標 ~客観的視点でサッカーを捉える~
1. 完成形は”伝わる”分析
【分析】とは一体どういう意味なのか。
その意味を正しく認識していると自信を持って言える人は少ないのではないだろうか。
定義は、こうである。
「物事を分解し、諸要素を明らかにすること」
理解は容易いだろう。
では、【サッカー分析】とは一体何か。
上述している【分析】の定義と照らし合わせるとこうだ。
つまり、「サッカーのゲームにおいて起こっている現象を、色々な要素に分解し、明らかにしていくこと」が【サッカー分析】ということになる。
私は、この定義ではあまりに不十分だと考える。
現場のサッカー指導者や分析官は、分析した内容を選手やスタッフに伝える必要がある。
相手チームを分析し特徴を明らかにしたうえで情報を整理して伝える。
自チームの試合を振り返り、選手に対してフィードバックする。
などが、現場で行われているサッカー分析である。
現場以外だと、スポーツライターやSNSで発信されている方々はサッカー分析を頻繁にするだろう。
彼らは、サッカーを分析して言語化したものを読者に分かりやすいようにアウトプットする。
つまり、サッカー分析との距離が近い人たちにとっての分析は、最終的には【伝える】作業が終着点なのである。
ただ分析するだけでは実用的とはいえず、分析したものを伝えられる形まで持っていくことができなければならない。
ただ要素を明らかにして終わり。それはサッカー分析とは言えないのだ。
では、"伝わる"分析をするためには何が必要なのか。
まずは、以下の図を見てほしい。
この図は、「分かりづらい」「伝わらない」サッカー分析をしてしまう人が陥ってしまっている状態を示している。
サッカーを構成する数多くの要素の中から、主観的に捉えた特徴を繋がりなく断片的にピックアップしてしまっている。
そして、それらの特徴を繋がりもなく伝えてしまうので、受け手としても実際のゲームを想像することは難しい。
例えば、「相手の10番が上手い」と「システムが1-4-4-2」は、その要素だけを切り取って伝えるのでは繋がりが感じられない。
”伝わる”分析をするためには、様々な要素を繋がりを持って伝えなければならないのだ。
より客観的な視点でサッカーを分析し、要素同士の繋がりを明らかにすることができなければならない。
”伝わる”分析をするために必要なこと。
それは、構成要素を分解し、客観的な指標に当てはめて特徴を明らかにすることである。
サッカーは極めて複雑なゲームである。
ただなんとなく90分間のゲームを観るだけでは、認識できる現象に限りがある。
あらかじめ何かしらの指標を持ち、それに照らし合わせながら分析することが必要なのだ。
次の章からは、サッカーの複雑性を紐解き、構成要素を体系化していく。
ただ文字を追うのではなく、あなた自身の頭で考えながら読んでもらえると理解が深まることは間違いない。ぜひ、考えながら読み進めてほしい。
2. サッカーを理解するための「8指標」
2.1. サッカーを局面に分類する
それではさっそく、サッカーを体系化する旅に出よう。
体系化を進めるうえで、私はサッカーにおける「局面」に焦点を当てていきく。
サッカーは流れるようにゲームが進んでいくスポーツだが、その流れのなかでも局面が存在している。
サッカーは得点を奪い合うスポーツであり、そこには当然ながら「攻撃」と「守備」という2つの局面が存在する。
この2つの局面におけるサッカーの構成要素分類のことを、「2局面的分類」と名付けよう。
Attack(攻撃) :ボール保持時。攻撃の権利を有している局面。
Defense(守備) :ボール非保持時。攻撃の権利がない局面。
当然だが、サッカーのゲームにおいて、ボールは1つしかない。
そのボールを保持しているか否かでどちらかに決まる、非常にシンプルな分類である。
サッカーというゲームにおいては、「攻撃」か「守備」か、必ずそのどちらかの局面にあるといえる。
ではここで、1つ問いを提示したい。
サッカーと野球の競技としての違いは何か。
ボールのサイズ、人数設定、ゲーム性、色々あるだろう。
ただ決定的に異なることがある。それは、サッカーは攻撃と守備の境界線が曖昧であり、野球はその境界がはっきりしているという事だ。
サッカーは「攻撃」と「守備」の入れ替わりが不規則に何度も起こるスポーツである。野球のように、今は攻撃の時間、今は守備の時間と決められているわけではない。
つまりサッカーには、攻守が切り替わる瞬間である、「切り替え局面」が存在する。
攻撃から守備へ。守備から攻撃へ。
それぞれの切り替え局面を加えると、サッカーは4つの局面に分類することが可能になる。
これを、4局面的分類と呼ぶことにする。
この分類による考え方は広く一般的に浸透しているものであり、筑波大学でもこの4局面的分類を基に分析をすることがベースとなっている。
サッカー関係の読者の方々なら、4局面でサッカーを分類するという考え方は馴染みがあると思う。
基本的に、この4局面的分類で適切にサッカーを観ることができていれば、ゲームの大枠を掴むことはできる。
なぜなら、サッカーにおけるすべてのプレー(セットプレー以外)は、基本的にこの4局面の内のどれかにカテゴライズされるからだ。
サッカー全体を4つに分けて観ることができていれば、ある程度は分析可能なのである。
では、もっと細かく分類することはできないだろうか。
さらにもう一歩踏み込んでみよう。
サッカーには、表と裏が存在する。
「背後」と「足元」
「緩」と「急」
「静」と「動」
といったような具合だ。
では、先ほど分類した4局面を、それぞれ表と裏でさらに分類することはできないだろうか。
ここで私は、各局面をさらに体系化するにあたり「姿勢」という観点を用いたいと思う。
ここで私がいう「姿勢」とは、
早く攻めたいのか、遅く攻めたいのか
ボール優先なのか、ゴール優先なのか
攻撃的なのか、守備的なのか
といったような、そのチームの振る舞いから見る、チームとしての態度のことを指す。
読者の皆さんも考えてみてほしい。
攻撃における姿勢とは?
守備における姿勢とは?
切り替え局面における姿勢とは?
色々想像が膨らむだろう。
攻撃でいえば、ポゼッションによるゲーム支配を志向するか、ロングボールによる縦に速いサッカーを志向するか、など。
全局面において、姿勢はチームによって異なる。
しかし、その姿勢がある程度のタイプ別に分類できることも確かだ。
チームによってバラバラである「姿勢」を体系的に分類することで、サッカーをより客観的に分析するための指標ができあがるのだ。
私が導き出した解答は、こうだ。
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