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海へ
海へ
眠れないから
月にハネムーン
まだ寝ない
夢占い
いつかこういうところで
天使の死体
In A Different Place (Ride cover)
砂丘
寂しくなくなるのさ
The Jesus and Mary Chain
*
ずっと前にここに来たんです。まだ僕たちが、うんと若かった頃に、まだここが、うんと広かった頃に、琥珀の化石を探しに、風にさらわれた子供を追いかけて、なんとなくさみしくて、いつかハネムーンで、君が海を見たいと言ったときに、ここにきたんです。
砂浜をかけていく子供たちが、途中で投げ出した映画と重なって、まだ眠そうな君は持ってきた本を枕にして横になる。海はしずかに発光していて、けれど、まばたきのあいまで元にもどる。「海が近くていいね」そう、海の匂いがする、いい所。港に住みつく人もいるみたいだよ。もう、うまく思い出せないけれど、そんな歌、君がよく歌ってた。まばたきのあいまで、すべて忘れていく。
†
冬の空を見た、ジョー・マーチ、ヴァージン・スーサイズ、分かり合えないこと、機械の死体兵、遊び疲れた子供たち、“自分も他人も見返してやるぜ”、なにをしても楽しくない日、疎遠になった友達、女は愛嬌?、ユリィの絨毯、いつかの家族旅行、父親に当たってしまったこと、自殺防止フェンス、パヴェーゼ全集、瞼のうすい皮膚の下、夏毛に変わる犬、記憶の濁流、私じゃないといけない理由が欲しい、(where the light gets in)、庭で拾った宝石、叶わなかった夢のゆくえは。忘れていく、すべての、すべての美しいもの。一瞬の沈黙があって、世界中が君に注目する。───
ずっと前にここに来たんです。まだ僕たちが、うんと若かった頃に、まだここが、うんと広かった頃に、琥珀の化石を探しに、風にさらわれた子供を追いかけて、なんとなくさみしくて、いつかハネムーンで、君が海を見たいと言ったときに、たしかに、ここにきたことがあるんです。
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