変わらないもの

あれから数十年。みんなの背中にはいろんなものが乗っかった。
責任、家族、お金、キャリア……。

「お前老けたな」
「お前もだろ」

皆の顔に刻まれているのは歳のしわだけではない。
二人が出会った頃のまっさらではずむような彼の笑顔を思い出すと、切なさがこみ上げる。

誰が悪いでもない。大人になったんだ。


痩せた彼の背中を気付かれないように後ろからそっと見る。

「最近はどうしてるの」 「まあ相変わらずだよ」

あの頃より立派な靴を、華奢な身体に履いた彼。
隣に座るといつもと同じ、変わらない彼の声がした。

遠くを見つめる彼の目を見る。
あの頃と変わらない彼の目。
でもあの頃よりももっと遠くを見つめていた。

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