言葉について考える。3 パイドロス「知る」

「パイドロス」に言葉についての重要な提言がある。

「王様、この文字というものを学べば、エジプト人たちの知恵はたかまり、もの覚えはよくなるでしょう。私の発見したのは、記憶と知恵の秘訣なのですから。」
――しかし、タモスは答えて言った。

「パイドロス」

 重要なのはこの後のタモスの返答なのだが、どうしても引用が難しい。切り取りという名の引用を拒んでいるような気さえする。内容としては次のようなものだ。


文字はものを思い出すということをさせなくする。人々は書かれた文字によって外から思い出すようになる。それは記憶ではなく、想起である。これは真実の知恵ではない。(要約)


 詳細については是非原文を読んでいただきたい。「パイドロス」は理解するための本ではない。わたしがこの本と出会ったのは院生の頃で、紙一枚の参考資料だった。しかし今後も考えていく問いになるだろうと予感した。

 さて、ここでタモスが言っていることは、文字が存在しない世の記憶についてであり、知恵についてである。書かれた文字が存在しなければ、「知る」ということは自分の身をもってするしかない。まさに身に着けるである。

「知る」と「文字」の存在は大きく関わっているようだ。


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