四分儀の恋

君が好き、そうなページを考えて栞を挟んでそのまま貸した

「あれ貸して」　愛かも恋かもまだ知らない気持ちが私のまつ毛をあげた

木漏れ日が短冊状に影を落とす草葉の布団は優しい牢獄

「眩しいよ！」笑えばいつもなくなる目「ごめん、」網膜にぼくが写りたい

恋をした 私のおでこがこの夏は日照権を主張している

カールした君の睫毛が受け皿のように雨粒蓄えている

丁度いい ずっとあつくても疲れるし あなたに会えない理由になるし

夏だから堕落を連れて泳いでた、仰向けの君の手のひらの海

5年目のポニーテールが結べなくなるのが僕の所為であれよな

満月を月に何度も超えて今カーステから歌う荒井由実

愛しさとせつなさと心強さと出てきたお腹と健康保険と

「合体も変形すらも効かないよ」「もうお終いね私たち、もう」

T路地の一つ手前で手を離す 徐々に慣らした「またね」に慣れない

すり減った足裏に力を入れてケンタッキーに列ぶのも愛

僕たちが特別なんだと燃え上がりテレビと同じ人の愛し方

ぼくんちと君の家だけミサイルが吹き飛ばすなら目を閉じるのに