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N起業(非営利型起業) その1  ~非営利組織で起業しよう~

起業というと、どうしても「しっかりお金を稼いで豊かな生活を送る」「成功者として社会的地位を得る」「ベンチャー」というイメージが強く、失敗したら「借金まみれになる」「生活に困る」「かっこわるい」という不安も同時に起こるのではないでしょうか。つまり、サラリーマン生活と比べると、一か八か、ギャンブル的要素が強い気がするでしょう。
しかし、何かコトを始めたい人つまり「起業」したいと考える人が全員、イチかバチかで稼いでやる!と思っている方ばかりなのでしょうか?そんなことはないと思います。

もちろん「とにかく儲かる事業内容を見つけて、がんばって稼いで豊かな暮らしをするぞ!」と志すという方もおられるでしょうし、その起業もありだと思います。他方で、まず社会に足りていないこと、つまり社会課題を見つけ、これを解決するためにコトを起こしたいという方もかなりおられます。いわゆる社会企業家です。

起業の動機が「稼ぐこと」なのか、「社会課題の解決」なのか、このどちらが主となのかということですが、私が20代だった20年ほど前までは、前者が圧倒的に多かったように思います。当時は社会全体としても、「稼ぐ者が正義だ」という意識が強かった。しかし近年の、特に若い人たちや子育て世代の女性においては、後者が増えているように感じます。彼らは、社会の役に立ちたがっています。私が学生だったころのように「稼ぐこと」「成功者と呼ばれること」にギラギラしていません。しっかりと社会の役に立ち、自分の存在価値を確かめようとしている様です。したがって、彼らが一旦サラリーマンになったとしても、「この場所にいては、自分の能力を発揮できないな。それほど役立てないな。」と感じると辞めてしまうのかもしれません。

ちょっと話がそれましたが、後者、つまり「社会課題の解決」のためにコトを起こす方の「起業」は、営利目的ではありません。つまり「非営利の起業」と言えます。この語感は我々のような昭和世代にはなかなかピンと来ないかもしれませんし、「非営利でどうやって飯食っていくんじゃ?!」と思われるかもしれません。しかし、実は、「非営利型起業(N起業)」でもちゃんとお金は稼げますし、飯は食っていけます。従業員も雇えます。実はいくら稼いでもよいし、いくら給料を支払ってもよいのです。じゃあ何が「非営利やねん?」と思われた方は、『非営利=ボランティア』という誤解をされているのだと思います。例えば、非営利組織の代表格は行政です。市役所の職員さんちゃんと飯食っていけてますよね。

つまり、非営利とは、決してボランティア活動のことではありません。非営利組織でもきっちりと稼いでよいですし、給与やボーナスを支払っても良いのです。そういうとなんとなく、それなら偽善的な顔だけをして、結局儲けようとしているのではないか?と思われそうですが、それもちょっと違います。


非営利組織を理解するためには、「営利組織」をまず正しく理解する必要があります。おそらく多くの方は、「営利組織」が何をもって営利組織というのかを把握されていないかもしれません。もしかすると現在のベンチャー起業の殆どは、営利組織向きではなく、非営利型起業(N起業)向きなのかもしれないなと思っています。例えば、女性が、子育てや家事の空いた時間で楽しく働けるためにランチだけの定食屋を開業した。とか、学生が本当に自分が望む仕事に就けるために、自己探求や社会人との交流、プレゼンの場などを設ける企画会社を始めた。などです。これらは、営利目的というよりは、非営利型起業(N起業)です。

しかし、こういった非営利やNPOに関することが、徐々に理解され始めているとはいえ、まだまだ社会全体として充分な理解には至っておらず、そのために非営利型起業のための社会的な仕組みも不十分なままです。なので、どうどうと非営利型での起業をしにくく、営利型の起業(株式会社など)の方が都合がよいと感じてそちらを選択してしまいます。その結果、営利組織としての骨格をもちつつ、非営利型の顔をする組織が増えている。という実態があります。現在の日本社会では、この「営利骨格・非営利顔組織」というスタイルがどんどん増えざるを得ないのかもしれません。

現在の社会的な風潮・仕組みの中ではこのスタイルが精一杯かもしれませんが、私としては、堂々と骨格も顔も「非営利」の起業が増えてほしいと思っています。できれば、日本における年間の起業件数の半分ぐらいは「N起業」だとなるのが理想です。現状は、株式会社が約130万件/年、NPO法人が約1,000件/年という差です!もう少し社会的な理解が進めば、営利組織が良いのか非営利組織が良いのかしっかり判断して起業することができ、この差は縮まって行くのではないかと思います。

さて、私は、前述のような誤解が解け、社会システムが整い、非営利組織としての起業「N起業」がどんどん増える社会がやってくるのを夢見てこの文章を書くことにします。「営利組織」と「非営利組織」の関する理解を深め、社会がひとつ前へ進むために、わかりやすく説明していければと思います。次回は、営利組織について深くつっこんで行きます。


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もしかすると、多くの方は、「営利組織」という言葉を誤解されているのかもしれません。営利組織とは「営利を目的とする組織」のことですが、お金を稼いでよい組織という意味ではありません。そもそもお金を稼いではいけない組織はこの世にありません。お金を稼いだら課税対象になるだけのことで、稼いでよいとか駄目とかいうことはないのです。・・・

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