N起業(非営利型起業) その3 ~じゃあいよいよ非営利について~
私はよく「N非営利組織」についての説明を求められますが、実はその前に「B営利組織」を理解しておく方が、「非」=「ではない」という接頭語がついている組織について理解しやすいのではないかと思い、【その2】で、先に「B営利組織」についてお話させていただきました。
※注:前回にひきつづき「営利組織」と「非営利組織」は表記が似ていて読みづらいと思いますので、それぞれ「B営利組織」「N非営利組織」と表記させていいただきます。「B」はBusiness(営利組織)、「N」はNonーprofit(非営利)のこととご理解ください。
では、いよいよ「N非営利組織」についてお話します。
「非営利」とは文字面の通り、「営利ではない」という意味ですが、「営利目的ではない」という意味だと理解していただければと思います。多くの人がこれによって、非営利とはボランティア組織のことでしょ?と早合点してしまうのですが、そうではありません。前回もお話しましたが、「非営利」とは、お金を稼がないという意味ではありません。いわゆる税法上の収益事業も行ってよいですし、実際たくさんのNPO法人が収益事業を行い、しっかりと納税しています。このあたりの仕組みは、「B営利組織」となんら違いはありません。
実は、ほとんどの部分で「B営利組織」と「N非営利組織」は同じだと思ってもらってよいのです。収益を上げて良いし、従業員に給与やボーナスも払ってよい。利益も残してよいのです。そう言うと「でも、表立ってお金儲けてるって言わんほうがええんでしょう?」とか「あんまり儲けたらあかんのでしょう?」とか聞かれることも多いのですが、一切そんなことはありません。堂々と「うちのNPOは儲けてます!」と言って良いですし、むしろしっかり儲けるNPOを目指さなければいけないと思います。「あんまり儲けたら、、、」ってそんな曖昧なルールあるはずないですしね。きっと「余剰利益を残してはいけないのでは?」という質問だと思いますが、これも思い込みです。しっかり余剰利益を残してよいですし、そうしないと次年度の事業がやりにくくなります。
ここまでくると、「じゃあ、逆に営利組織と何が違うの?」「営利ちゃうんか?それ」と詰め寄りたくなりますよね。
「B営利組織」と「N非営利組織」の違いは大きく2つあります!この2つを順番に解説いたします。
まず、1つ目の違いは、目的と手段が逆転している!ということです。
「B営利組織」の目的は【その2】でも言ってきましたように、利益追求です。利益追求という目的に向かって組織を立ち上げ、(前回もご説明しましたが、この場合の組織は「役員と株主」です)その目的を達成するために、手段として「事業」を行い、その事業を実施するために従業員を雇います。ですので、この組織の論理から言えば、利益追求という目的にそぐわないこと、つまり儲からない事業に対しては撤退するなど、消極的になりますし、儲けるのに役立たない従業員は雇用をしにくいということになります。
もちろんこれは、かなりドライにこの「B営利組織」を考えたときの話であり、「株式会社」という仕組みができた当初は実際にこういう、ある意味、利益に対して真っ直ぐな組織が多かったのではないかと思います。しかし現在に至るまでに、労働基準法や労働組合、労使協定など従業員の人権を守るルールや、労働条件を良くする工夫などが整備されてきましたし、近年では、CSRやSDGsといった社会貢献の意識や、働き方改革の方針など、さらに労働者に対する待遇改善に力を入れる風潮になってきており、「利益追求のためには手段を選ばない」というような古風な組織はほとんどなくなったのではないかと思っています。思いたいです。
しかし、とにかく「B営利組織」の根底には、この利益追求という組織の大前提となる目的があり、事業はそのために実施する手段なのです。したがって、儲からないとわかってきた事業からは撤退し、より利益が見込める事業に力を入れるというのが、この組織にとっては当然のことと言えるでしょう。
さて、一方の「N非営利組織」は多くの場合、地域や社会の課題を発見し、この課題を「ほっとけない」と考え、「自分たちに何かできることはないのか!」「何かやってみよう!」と組織を立ち上げ事業を開始します。そして、その事業や組織を継続・発展させるにあたり、自分たちのポケットマネーでやり続けるのは困難と考え、対価を得る仕組みや寄付金を募ること、行政の交付金を申請するなどの収入源を考え始めるのです。
つまり、「事業」が目的で、「利益」はそのための手段ということなのです!
例えば、現代社会においては、乳幼児とそのママが地域の中で孤立しがち、これを救うために居場所づくりをしよう!と考えるママさんグループがあります。
こういった方々の多くは、自分も似たような経験をし、すでに自分の子どもは小学校に上がり、ある程度手が空いたので、「後輩ママさんに同じようなつらい思いをさせたくない」との想いで仲間を募り、事業を始められます。(こういう実態が全国各地で起こっている地域社会であることを、果たして一般サラリーマン男子はどこまで理解しているのか?)
しかし、自分の家を開放するわけにも行かず、公民館や貸しスペースなどを借りて事業を始めますが、場所代やお菓子、お茶代など、なんやかんやと費用はかかります。できれば、手伝ってくれている仲間スタッフにも少しぐらいお礼を払いたい。「やっぱお金も要るよねー」という事になり、何らかの収入源を模索するという流れになります。これはまさに『非営利型の起業』であり、(これを私は勝手に「N起業」と名付けています!)たいへんわかりやすいケースです。
このママさんグループは、例えこの事業が儲からなくても、「もっと儲かる他の事業やろう!」とはならないですよね?つまりこれが、目的と手段が逆転している証拠です。
そうなんです。「N非営利組織」は、儲からないからと言って、その事業から撤収することは考えません。儲からないなりに、なんとか継続する方法を考えるし、例えば年1回だけとか、できる範囲で実施すればよいのです。でも、できればたくさんやりたいし、発展させたいので、参加費、寄付金、交付金などの収益を工面しながら事業を続けようとします。そうしているうちに、行政がその取組に目をつけ、「協働しましょう!」という話に展開して、業務委託という形になるケースが、ちらほら見受けられます。そうなると、しっかりとした給与などの経費も出すことができ、事業が安定します。
つまり、「N非営利組織」にとって「収益」はあくまでも手段なのです。こういうタイプの起業を「N起業」と勝手に名付けております。
お話ご理解いただけましたか?今回はここまでとします。「B営利組織」と「N非営利組織」のひとつ目の違いをご説明しました。
次回、「B」と「N」のもうひとつの違いをご説明いたしますので、お楽しみに~。前回の【その2】と深く関係しますので、それまでにがんばって読んでおいてくださいね。ではまた。
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