見出し画像

N起業(非営利型起業) その2 ~営利組織ってそもそも何?~



NPOというと、未だにボランティアの延長というイメージが根強く、お金儲けとは遠い距離にあると認識されがちです。しかし、そうではありません。実は、NPOもお金儲けをして自分たちの生活や、事業(活動)の継続に使う資産を作っていける組織でなのです。むしろどんどんお金を稼いで、事業を継続、拡大させるべきなのです。資金調達のやり方はさまざまで、事業収益を上げる方法や、会費や寄付金を集める方法など団体によって決めればよいと思います。あるいは、資金を獲得せずにボランタリィに活動を続けてもよいのですが、そのままで長期間続けていくことはなかなか大変だと思います。

「それやったら、営利組織と同じやないか!」「どないちゃうねん?!」と思われる方も多いかもしれませんね。もしかすると、それは「営利組織」という言葉を誤解されているのかもしれません。「営利組織」とは「営利を目的とする組織」のことですが、お金を稼いでよい組織という意味ではありません。そもそもお金を稼いではいけない組織はこの世にありません。お金を稼いだら課税対象になるだけのことで、稼いでよいとか駄目とかいうことはないのです。「非営利組織」でもお金を稼いでよいですし、お金を儲けたら、それに伴って税を納めるというのもまったく同じです。しかし、それでも、屁理屈でもいいわけでもなく、「営利組織」と「非営利組織」ははっきり目的の異なる組織だと言えます。

では、いよいよ両者の違いについて説明を始めたいと思いますが、最初に「営利組織」についてのお話をします。まずこれをしっかり理解していただければ、いろんな誤解が解けるかもしれません。それにしても、「営利組織」と「非営利組織」って字面でみると非常に似ていて、読んでいると区別がつきにくいですよね。ですので、ここからは「Business」のBをとって、「B営利組織」、「NPO」のNをとって「N非営利組織」と表記することにします。

予めお断りしておきますが、私は決して、「B営利組織」が良くない組織で、「N営利組織」が良い組織だと言いたいわけではありません。特に現代社会における株式会社をはじめとする「B営利組織」はたいへんよい会社が増えていますし、従業員や社会のことをほんとに大切にしている組織も多いと思います。しかし、ここではひとまずわかりやすさを重視して、そもそも「B営利組織」はこういう組織のことですよ。というご説明をさせていただきます。悪意はありません。ご理解いただければと思います。

さて、はじめます。あるところで「B営利組織」を作るとします。最初、「こんな事業をしてお金を稼ごう!」という数名のメンバーが集まってコトを始める準備をします。このメンバーをコアメンバー(役員)としてコトを始めることになりますが、わかりやすい例として、株式会社を立ち上げることにします。次に、コトを始める資金を調達しなければならないのですが、自分たちで出資することもあれば、外部に出資者を募ることもあるでしょう。こういった出資者を株主といいますね。

スライド6

図のように、これによってまず破線で囲まれた水色塗りの円の部分が出来上がります。このメンバー(役員と株主)が、この組織の意思決定者です。この水色のメンバーのことをこの組織の構成員(社員)といいます。ここで多くの方は「ん?!」を思われるかもしれませんが、実は「社員」とは株主のことを指すのです(現在では、従業員のことを「社員」と呼ぶ習慣が当たり前になってきているので、言葉の定義が変化し、従業員のことも「社員」と呼んで間違いじゃないことになっています)。

この構成員(社員)が集まって意思決定権を行使し、改めて役員を選出し、選ばれた役員たちに事業の執行を任せるという構図なのです。そして任された役員たちは自分たちだけで事業を行ってもよいですが、事業規模が大きくなるにつれて、外部の「従業員」を雇い入れて事業を実施し、さらに拡大する。という流れです。この時、従業員による組織△が新たに作られます。一部の役員は、△の中に混ざって、従業員といっしょに働く場合もありますし、まったく労働には関わらない役員もいたりします。株主も同様に、働く場合とそうでない場合がありますよね。

ですので、この話で行くと、水色の丸の中の人々が組織の構成員、つまり組織の「内部の人」であり、△の中にいる従業員は、実は株主にならない限り「外部の人」なのです。ここまでの話で、すでにいろいろな勘違いが発見できたのではないでしょうか?

さて、実際に事業を展開するのは、この△の人たちです。従業員が役員の指示のもと、事業をぐるぐる展開して、収入と支出を繰り返し、お金を稼ぎます。そして、自分たちも給与をもらいます。この給与は、組織にとっては「人件費」という経費です。念のため確認しますが、「利益」というのは「収入」から「経費」差し引いた残りだということは、ご存じだと思いますが、人件費は「経費」の一部です。結構多くの方が、給与は「利益」の中から支払われると勘違いしています。しかし、「給与」は「経費」です。それらも含めてすべての経費を差し引いた残りを「利益」と呼びますので、給与は利益からは支払われているわけではありません。「B営利組織」としては、この「経費」をどれだけ抑えて、「利益」を多く残すのかという命題に注力します。

そして、年度末、もちろん利益に伴う法人税を支払った後、さらに余った「利益」をどうするかですが、「B営利組織」では利益の一部を△の中に残し、次年度の事業に充てる資金とします。これを「内部留保」と言いますね(ほんとは外部留保と言う言葉が正しい気がします)。そして、それ以外の利益を分配します。誰に分配するのか、〇の人たちです。つまり株主や役員に配当するのです。これを「株主配当金」、「役員賞与」と言います。これこそが「B営利組織」の本来的な目的です。

誤解を恐れず、わかりやすさのために極端な言い方をすれば、「B営利組織」の目的は、株主(〇の人たち)が、自分たちの「営利」のために、従業員(△の人たち)を雇って労働してもらい、不労所得(働かずに稼げるお金)を獲得すること。なのです。

最初にも言いましたが、「B営利組織」の元々の意味を分かりやすく伝えるためにこのような表現をしましたが、時代の流れと共に、労働者(従業員)のことをもっと大事にしていくべきだと考えられ、労働基準法ができたり、労働組合ができたり、営利組織で働く人を守るための、そして社会全体や地球環境を守るための、さまざまな仕組みが作られてきました。最近では働き方改革やSDGsなど、従業員やもっと外側の人たちの幸福までを考える会社が増えています。

しかし、やはり依然として、各社の株主総会では、「株主配当金」と「内部留保」の獲得合戦が繰り広げられているのではないでしょうか。つまり、〇に分配するお金と△に残して次の事業に充てる資金とのせめぎあいです。

〇の人たちは、「株主配当金」が増えれば増えるほど当然うれしいと思いますし、△に関わる人たちはそこに残すお金、つまり「内部留保」の額が多いほど次の事業がやりやすくなりますし、その「経費」の中に自分たちの給与も含まれているわけですから、多いに越したことはありません。

実は、「B営利組織」と「N非営利組織」違いは、ここなのです。ここだけと言ってもよいです。先ほどから言っている「株主配当金」のことを「利益の分配」と言います。〇に分配するお金のことです。「B営利組織」にはこの「利益の分配」が許されていますが、「N非営利組織」には、「利益の分配」が許されていません。つまり余った利益はすべて△の中に残す、つまり「内部留保」するしかないということが取り決められています。これをもって「利益分配をしない組織」「〇の人たちの営利を目的としない組織」すなわち「N非営利組織」というのです。

ちょっとわかっていただけましたでしょうか?次回はここのつづき、「B営利組織」と「N非営利組織」の違いをもうちょっと整理していきたいと思います。長文、読んでいただきありがとうございます!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?