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今生の別れ


月日は流れる

人生にはいろいろあって、そのどれもがすばらしい

今日のお話はちょっと暗いので
そういうのが苦手な方はスルーしてくださいね。










以前、叔父のお見舞いに行ったとき。
叔父はガンを告知されていて、
もう治療できないと医者に言われていました。
一度危篤になって、持ち直したのですが転院したとの話だったので
父がお見舞いに行きたいと。

天気もよかったので山越えルートで行ってきました。

この山越えは、母の病院に通うのに通った道。
ヘアピン急カーブの続く、険しい山道です。

父が母との思い出を話しながら運転するのを(実はハラハラしながら)
聞いていました。

病院は、ホスピスでした。終末医療です。
治療の施せない患者さんが、苦しまずに逝けるように。

聞いた部屋番号に行って覗いてみても、叔父の姿はわかりません。
それほど叔父は変わってしまっていました。

でも、ベッドに座っていて意識もはっきりしていて、
ちゃんとわたしと父を認識してくれました。

90歳を越えてなお元気な、長兄がいるのですが
叔父は、自分のほうが大変なのに
その長兄のことも気にかけていました。

父は80歳を越えていて、叔父は70代。

90と80のじいちゃんが元気で、一番若い叔父が病に伏している。

父は叔父に

「おまえ、順番が逆だぞ。
俺のほうが先に逝くんだから、
おまえにはがんばってもらわないと」

と言って、
叔父の手をぎゅっと握りしめたのです。

叔父はその手をしっかりと握り返しふたりは、

見舞っている間ずっとお互いの手を握りあっていました。

父も高齢です。
この山越えのルートなら
1時間もかからないで病院に来ることはできるけど
危険が伴います。

山越えルートを使わないと、倍以上の時間がかかります。

帰宅した父は、これが最後と覚悟を決めたようでした。

人は明日、どうなるかわからない。
そして、人にはそれぞれ、生きている人生がある。

ホスピスのゆったりした時間の中でお互いの手を、握りあっているふたりを見て

わたしは二人が生きてきた長い時間、長い人生、それを考えて
叔父が、愛と光に満ちて幸せな気持ちでいてくれることを願いました。

消えていく命、
生まれ出る命。

そうして世代は引き継がれていく。
永遠に。

20190226


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