社会人が1年半・1800時間の学習で公認会計士試験に合格するのに実践していたポイント3つ -完結編-

『社会人が1年半・1800時間の学習で公認会計士試験に合格するのに実践していたポイント3つ』シリーズの最終回です。
前回書いた記事(↓)の続きです。

さて前回の記事では「切れば切るほど合格に近付く」というのが学習時間を十分確保できない受験生の大原則であるということをお伝えしました。

次に考えるべきは「何を切るのか」ということです。
いわゆるC論点、C問題は基本的に切るというのは大前提です。この点は素直に予備校の評価を利用すればよいでしょう。
しかし、これではまだ不十分なので、予備校がA又はBと評価しているものの中からどこを学習してどこを切るのか、自分で考えて決める必要があります。

ではその順位付けについてはどう考えればよいのでしょうか?
私の考えていたことをこの記事でまとめてみたいと思います。

■何を切るのか ~学習時間の価値を最大化する~

結論から申し上げますと、ある論点の学習に投入する学習時間1単位あたりの価値を

学習時間1単位あたりの価値
= 出題される確率×出題された時に自分が回答する確率×回答した時に正答できる確率/学習に投入する時間

というモデルで評価して、できる限り価値が高い学習をする、価値が低い学習はしない、ということです。
要するにROIの高い施策から実行していけということですね。
これによってあなたの持ち時間(人によって多いかもしれないし、少ないかもしれませんが、必ず有限です)の学習成果を最大化することができます。
この観点から見れば、会計士試験とは、本試験までの自分の持ち時間から得られる価値を最大化し、その総和が出願者の上位10%以内に入れば勝利というゲームであると見ることができます。
そう考えると、総投入量が多ければ有利なのは間違いありませんが、それ以外の要素で左右される部分がかなり大きいと感じられるのではないでしょうか。

当たり前のことのようですが、こういうことを考えている受験生はあまりいないようなので、あなたはこの記事を読んでいる時点ですでにかなり勝利に近付いたはずです。

上記の式を考えると、どの論点を切るべきか、という問いの答えは万人に共通ではありません。
これは試験側の特性(出題される可能性)だけでなく、受験者側の特性(出題された時に自分が回答する確率×回答した時に正答できる確率)に左右される部分があるからです。

ここまで読んでスッと納得して頂いた方、この続きは読んでいただく必要はありません。
あとは自分を信じて頑張って下さい。
Do your best!!

この先は蛇足ですが、上記の式の補足説明と私の実例をご紹介したいと思います。

■学習時間の価値の公式

前提から整理していきましょう。
学習する目的 = 本試験で得点するため
と本稿では定義します。
とすると、ある論点を学習する価値とは結局
学習する価値 = 得点に結びつく確率
と言えるでしょう。
右辺についてもう少し考えてみると、本試験で得点するということは、ある問題が出題され→回答し→正答することが必要ですから
学習する価値 = 出題される確率×出題された時に出題された時に自分が回答する確率×回答した時に正答できる確率
と分解できます。
そして、ある論点を学習してマスターするのにかかる投入時間は多様なはずですから、ある論点の学習に投入する学習時間の1単位あたりの価値を考えてみると

学習時間1単位あたりの価値
= 出題される確率×出題された時に自分が回答する確率×回答した時に正答できる確率/学習に投入する時間

となるわけですね。
(実は1つ、あえて捨象している要素があります。分かったら教えて下さい)

次に、右辺のそれぞれの要素についてもう少し考えてみます。

・出題される確率

これは予備校が分析してくれていますから素直に信じると良いでしょう。
(あなたが予備校以上に有益な分析を行える可能性はほとんど無視してよいくらい低いはずです)
また、これは試験委員が決めることであって、受験生にはコントロールできない要素なので、あまり考えても仕方ないと割り切ることも必要だと思います。

時間を有意義に使うコツは自分がコントロールできることに集中することです。

・出題された時に自分が回答する確率×回答した時に正答できる確率

こちらはさらに科目によって考え方を別ける必要がありますね。

まず、時間的に余裕があり問題の取捨選択が不要な科目(≒理論科目)においては、「出題された時に自分が回答する確率」は100%として単純に「回答した時に正答できる確率」だけを考えればよいでしょう。

一方、計算科目(人によっては論文の監査論や企業法もそうかもしれません)においては、時間内に解ききることはほぼ不可能なので、解く問題の取捨選択が発生します。

この場合、まず「回答した時に正答できる確率」を限りなく100%に高めることができるか否かを考えてみましょう。
もし「できる」と思うのであれば、そのために投入しなければならない学習時間を見積もって、ROIが良ければ実行するという判断をすることになります。
また、正答確率が限りなく100%に近いのであれば本試験においても、当然「出題されたら取る」という行動が最適になるでしょう。

一方、「回答した時に正答できる確率」が十分高められない場合/またはROIが低いと判断した場合はどうでしょうか。
本試験で回答して誤答するのは時間の無駄ですから、本試験における取捨選択では相対的に後回しになるはずです。
となると「出題された時に自分が回答する確率」「回答した時に正答できる確率」の双方が相対的に低いわけなので、ここに学習時間を投入するのは非常にROIが悪く、投入時間は絞るべきです。
学習時間を投入しなければ正答確率はより下がりますから、本試験で解く確率もさらに下がり……

というように、「出題された時に自分が回答する確率」「回答した時に正答できる確率」「学習に投入する時間」は相互依存の関係にあります。
そして、正答確率を100%に近付けるという選択をしない場合は限りなく、
「解かない」
「解いても正答できない」
「学習しない」
と割り切るのが最適な行動になります。

また、この公式を媒介として回答戦略(解くかどうか)と学習戦略(学習するかどうか)が完全に連動することも、ここで明確に意識しておくべきでしょう。

以上から、どういう経路をたどるにせよ、「回答した時に正答できる確率」は基本的に0%か100%に収束していくわけなんですね。これを徹底すればするほど、試験結果から偶然性を排除されていくことになります。

このように、ある論点に対する学習戦略は2つの均衡があり、そのどちらを選ぶかは自分で判断することができるのです。
そして、その判断こそが会計士試験というゲームの本質であるといっても過言ではないでしょう。

……と書いた後で「それは過言なのでは!?」と不安になったので、これまで受けた入試や他の資格試験などを思い返してみました。
やはり上記のような戦略は取れないので、会計士試験は独特のゲームなんだと思います。
これはおそらく会計士試験、特に論文式試験が
①TOEICのようなスコア測定型ではなく、合否判定型の試験である
②合格ボーダー点が非常に低い
③出題範囲、出題形式、要求水準が既知またはほぼ予測されている
という3つの条件が重なっていることに起因している気がします。
(もっと深く考察された方がいらっしゃったら是非教えて下さい)

■具体的な適用例

先日、こんなツイートをしました。


(これはあくまで私のケースであって、最適な戦略は個人差があります、ということを念のため強調しておきます)

私がこの結論に至った過程はこうです。

① 自分が利益剰余金を回答する確率は低い(総合問題の複数の論点を解かないと回答できず、たいてい時間切れになるから)
② 利益剰余金は正答できる確率が低い(総合問題の複数の論点を正しく処理しないと誤答するから)
③ また、②によってさらに回答する優先順位が低くなる
④ 回答する確率も正答する確率も低いので、学習するコスパが悪い
⑤ 演習しない
⑥ 演習しないのでますます正答する確率が低くなる
(以下スパイラル)

これが「切る」という概念の背景として意識するべき考え方であって、単純に「あまり出ないから切る」「難しいから切る」というようなロジックでは不十分であると言えるでしょう。

逆に言えば、出題頻度が低いとされる論点であっても

学習時間1単位あたりの価値
= 出題される確率×出題された時に自分が回答する確率×回答した時に正答できる確率/学習に投入する時間

というモデルで評価して十分高い価値が出せると判断すれば、C論点をあえて学習する戦略もあるわけなんですね。
例えばですが、私は財務計算の分配可能額はちゃんと演習しています(財務では出ませんでしたが、謎に短答企業法で出て1問拾えました)

また、科目で言うと私は苦手だった管理会計は全体的に大胆に切っています。
結果、短答管理で47点という「ギリギリ足きりされないくらい」の成績を狙い通り得ています。
論文では財務会計と合算されているのでわかりづらいですが、やはり管理会計は最低限以下の学習をして、実際にかなり低い成績でした。
実際の成績はこちらで書いた通りです(https://note.com/kakyu_cpa/n/ncab6af338328

■おわりに

以上で『社会人が1年半・1800時間の学習で公認会計士試験に合格するのに実践していたポイント3つ』シリーズは終わりです。

他にも受験生活の中で発見したTIPSとか、個別の科目ごとの学習方法等、noteのネタとして温めています。
その他にもご質問やリクエスト等ありましたらコメント欄・Twitter・質問箱からコンタクト頂ければ幸いです。
(お答えできない場合もあります。ご容赦下さい)

とは言え私のお伝えできることの最もコアの部分はここまでの記事で吐き出したと思っています。
結局、本当に価値があるのって普遍的な考え方とか原理原則であって、それを活かして自分ならどうするか? を考えるのが、あなたが今向き合っている勝負なんですよ。

今後、noteで私の事例について書いたり質問箱でご質問にお答えしたりしたとしても、そういった個別具体的なことというのは原理原則から自ずと導かれることであって、オマケみたいなものなんですね。

このnoteは基本的には私と同じ社会人受験生の方を想定読者として書いていますし、普遍から個別を導き出して課題解決するということはまさに皆さんが日頃の業務において培っているスキルであると思います。
このnoteは誰でも読めるnoteだけど、誰でも活かせるnoteではないんです。活かせる方にとっては極めて価値の高いnoteであるはずです。
それは伝わる方にだけ伝わればそれでいいと思っています。

ということで、ここまで長文お読みいただきありがとうございました!
皆さんのご健闘をお祈りしております!

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