ナウシカになりたいと思った日
嫌なことがあって空でも飛びたくなったの?
いいえ、そんなことではありません。確かにメーヴェに乗って空でも飛べたら気持ちがいいかもしれませんが、ナウシカの魅力は、そこだけではありません。
ある朝、夫を見送った後、玄関のたたきに黒い影を発見しました。アシダカグモです。アシダカグモとしては小さかったかもしれませんが、普段見かけるクモよりはかなり大きめでした。
ギョッとしましたがすぐ冷静になり、傘を片手に玄関の扉を開け、お引き取り願おうと傘の先でクモのまわりの床をつつきました。
怯えたクモは残念なことに玄関とは反対へ猛ダッシュ、リビングのドアの下をくぐって行ってしまいました。
『違うそっちじゃない!!』と独り言をつぶやきつつあわてて後を追います。クモからしたら、私は巨神兵だし、進撃の巨人です。気持ちはわかりますが、なぜこうもわかりあえないものなのでしょう。
そのままリビングを走り、ソファの横で休むクモを傘で誘導して、窓から出そうとしましたが、なんとTVボードの裏へ入りこんでしまいました。
もうすぐ始業の9時が近づいており、いつまでも鬼ごっこしているわけにいかないので、やるしかないと殺虫剤を探しました。
探している途中、ふと、まだ年賀状のやりとりをしている小学校の担任の先生が、話していたことを思い出しました。先生は、なるべく虫を殺さないように、家に入り込んだクモを、ティッシュでくるんで外に出してあげるそうです。ものすごく道徳心にあふれた先生でした。
その教え子の私は、殺虫剤を片手に何もしていない、益虫のアシダカグモの命を奪おうとしていたのです。なんとも情けない気持ちになりましたが、共存はしたくないし、できないです。
こんな時、ナウシカだったら虫笛をブンブン振り回し、王蟲、森へお帰りならぬ、アシダカグモよ、窓からお帰りと誘導できるのではないか。
今だけナウシカになりたい!と訳のわからないことを考えていたところ、アシダカグモは、TVボードの裏から明るい窓辺まで出てきてくれたのです。
窓を開けると出ていてくれたので、無駄な殺生はしなくてすみ、ほっとしました。
頭のいいアシダカグモで、たいへん助かりました。でも、どうしてすぐに出てきてくれたのか、私の気持ちが伝わったの?もしかして私、ナウシカの素質ある?そんな訳ないか・・・。
朝からバタバタしてしまった1日でした。
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