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日本在住日記#3 クビ(前編)

日本の大学入試制度には共通テストというものがある。(旧センター試験)
試験は1月の中旬に行われる全国の高校生が受けるテストだ。
過去には僕もその試験を受けたことがある。今日はその時の話をしよう。

それは冬休み明け最初の登校日。忘れもしない1月6日。試験の1週間前だ。簡潔にいうと、その日の2時間目の体育の授業で首を痛めてしまった。
サッカーで怪我をしたと聞くと、深刻な事故を思い浮かぶだろう。
「コーナーキックで相手と競り合って頭から着地をし首を捻った。」
「相手の強烈なシュートが頭に直撃した。」
「悪質なファールをされた。」

どれも違う。

サッカーの試合中なので周りを見るために首を回す。それで痛めた。

もう一度いう。「周りを見て」痛めた。誰かに接触した訳ではない。何度も首を振っているうちにひとりでに段々と痛んできたのだ。

「ギックリ」ではない、「ユックリ」と。

冬休み長時間机に向かっていたことで僕の首は凝りに凝って限界を迎えていた。首を回すという動作により僕の首の可動範囲は5°以下になり、ほとんど首が回らなくなった。

こんな状態では勉強をすることもままならず、試験直前期だということもあり仕方なく3時間目から早退して接骨院に行くことになった。
「あいつ周り見てたら首痛めて帰るらしいで。」
と後ろ指を刺されるような気持ちで帰宅した。

帰宅するのにも精一杯だ。駅まで自転車で帰るのだが、交差点で左右確認するときもちろん首が回らないので、ターミネーターのように体ごと回転させなければならない。すれ違う通行人に「僕はロボットじゃない、人間だ」と必死にアピールしながらようやく駅に辿りついた。
駅についてもひと苦労。電光掲示板を見るために上を見上げなければならないが、ここでも体ごと大きく後ろにそらす必要がある。
はたから見たら誰かを応援をしているように見えただろうか。

電光掲示板を眺めるベル氏

試験の一週間前に首を痛めて命懸けで帰宅する自分。

応援されるべきなのは確実に僕のほうだ。

(後編へ続く)


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