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隠す気もなく置かれている地雷/【ネタバレ感想】『シグナル100』

※この感想にはネタバレとなる箇所があります。

さて、今年はとことん邦画に付き合ってやろうと決意したので先入観をもたずに「さあゲームの始まりです」と言いそうな『シグナル100』を見に行ってきました。隠す気もなく置かれている地雷を前にして後ろから「踏むなよ!踏むなよ!」と言われりゃ踏むしかないでしょう。
 決して見る前は馬鹿にせず、もしかすると傑作、いや、傑作はなくとも良作、いや佳作くらいには・・・と少しくらいは期待感を持って劇場が暗くなるのを待っているんですよ。
 じゃないと映画を嫌いになってしまいますから。
(普段より前振りが長いのは不安な証拠)

茨城県常陸大宮(ロケ地が)の山の中にある高校のクラスで、担任教師の中村獅童がクラス全員にある“シグナル”を行動に移すと自殺してしまうという催眠をかける。その催眠を解くには自分以外の生徒全員が死ぬこと。つまり一人生き残ること。そして中村獅童は「ゲームの始まりだ!」と言って(言わない)三階の教室から飛び降りて自殺してしまう(三階から落ちて死ぬかなぁ)。さあ、困った取り残された生徒たち。学校から出るのがシグナルかもしれないので出られない。お父さんお母さんたちには中村獅童が「今日は遅くなります」と連絡済み。携帯電話を使うと自殺、暴力を振るうと自殺、遅刻したら自殺、興奮して異性の股間を触ると自殺(ほんとに)などそのシグナルがわからないまま恐れおののく生徒たち。そこで自殺シグナルを特定すれば迂闊に死ぬことはないだろうと機転をきかせ、手掛かりの本を探しに図書室へ。そんな本があるのか図書室に。図書室にありました。そこでクラスの中で権力を握った瀬戸利樹くん。「ぐぬぬぬ」と苦虫を噛むイケメンサッカー部員たち。さあ、どうする橋本環奈!という話(雑に解説)。

 本作は『バトル・ロワイヤル』(00)から始まり、最近だと『神さまのいうとおり』(14)など、一連の「さあゲームのはじまりだ」的な学校サバイバル映画の流れです。
 おなじみスクールカーストを取り入れたクラスメイトの本当の顔が現れる例のアレです。
 原作漫画を読んでいないので、この催眠術をかける意味がイマイチわかりにくかったのですが、設定として殺し合いではなく自殺なので、そのシグナルを相手に踏ませる生徒たちの死の知恵比べがこの映画のミソ。にしたかった模様。

そして見ていてだんだんと日本映画のダメなところが浮き出てくる映画です。

もう茶化すことが可哀想になってくるので、どういうところがダメなのちょっと真剣に考えてみましょう。

まず単純に人物それぞれが今なにを目的に行動しているのかわからない。
例えば、廊下を二人で歩いているが、どこへ向かってなにをしようとしているの説明も会話からもわからない。ただ歩いている。

毎度、事が起こってから駆けつけてくるその他多勢。
自殺シーンが終わると皆タイミングよくその場に集まってくるが、いつも一歩遅い。単に絵に入れるためだけにクラスメイトを駒として動かしているだけ。

主人公の橋本環奈が正論ばかり言って何もしない。
まず事が起こって真っ先に駆けつけてくるのはいつも橋本環奈。そして「みんなで協力しなきゃ」「〇〇くんを信じなきゃ」と正論を吐くが全くと言っていいほどなにもしない。そんな橋本環奈が主人公として存在する衝撃の理由は最後に明かされる。

そもそもなぜ生徒たちを自殺させようとするのかわからない。
まあ、ここが根本なんですが、これが不明瞭だから人物たちにチグハグな行動させてしまうのだろう。明確な意図が途中で明かされれば人物たちの行動目的が収斂されて話にブーストがかかるのではないか(あくまで仮定。それで面白くなるかどうかはわからない)

「それ自殺じゃなくて他殺だろ?」
催眠にかかっている生徒たちはあるシグナルとなる行動をしてしまうと自殺する。
催眠術を解くには自分以外の全員が死ぬ事。つまり他の生徒にそのシグナルをさせて自殺させるように仕向けるのだけれど、一人の生徒が「それ、自殺じゃなくて他殺じゃね」と一言。この言っちゃった感。物語上、自殺させる必然性がないんだよね。殺し合いでいい。

もっと言いたいことあるけどこのくらいにしておきましょう。
 映画を作っている人たちは「やっぱりこういうことはダサいのでやめておこう」と思うことは大切だと思う。
例えば死んだ生徒を橋本環奈が心臓マッサージし続けて、その隣で「もういいよ...もういいって」とか言って「いや、生きるのよ!」ってマッサージし続けるといった何度も使い古されたこのやりとりとか、僕が「そういうのもういいって...」とか思いますし。
 
 あと映画のオチであるので、これから『シグナル100』を見ようと思っている人はこれから先は読まないでほしいのですが、橋本環奈が他の女子からイチャモンつけられて恨まれているのでなぜなんだろうと思ったら、サッカー部男子がみんな橋本環奈が好きというオチで、だからみんな橋本環奈を守るという。これクラスの他の女子の立場ないですよね。なんなんだよって。恐ろしいな橋本環奈。橋本環奈が男子から好かれていることを知ってた上で行動してたと考えたら恐ろしさメジャー級の映画。
惜しい、そこに着地していれば・・・。
 
エンドロールを眺めていて、たくさんの人々がこの映画に関わっていると思うと自然と涙目になってしまうのですが、今年はこういう映画と付き合っていかなければならないと決意したけど、こういう映画が続くようなら2020年中に命はない気がしてきました。がんばれ邦画!(投げやり)

鑑賞日:2020年1月25日。

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原作・宮月新、作画・近藤しぐれによる同名コミックを橋本環奈主演で実写映画化し、教師に「自殺催眠」をかけられた36人の高校生が繰り広げるデスゲームを描いたスリラー。担任教師・下部が仕かけた恐怖のゲームにより、特定の行動を取ると自ら命を絶ってしまう「自殺催眠」をかけられた36人の生徒たち。「スマホを使う」「泣く」「あくびをする」といった何気ない日常の行動に潜む催眠発動のシグナルは、全部で100あるという。催眠を解く方法は、クラスメイトの死のみ。生徒たちが次々と自殺に追い込まれていく中、死への恐怖に直面した人間の本性が徐々に暴かれていき……。主人公・樫村怜奈を橋本、担任教師・下部を中村獅童がそれぞれ演じる。共演に小関裕太、瀬戸利樹をはじめ注目の若手キャストが多数出演。「春子超常現象研究所」の竹葉リサがメガホンをとり、「GANTZ」の渡辺雄介が脚本を手がけた。
公開日:2020年1月24日
2020年製作/88分/R15+/日本
配給:東映


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