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『ゴーストバスターズ/アフターライフ』|感想

すずきたけし

『ゴーストバスターズ/アフターライフ』はそもそも2020年公開予定だったものが新型コロナウイルスによって延びに延び、ようやく2022年に公開ということで、待ちに待ったワケではないんですけど、オリジナルの続編ということで楽しみにしておりました。

 初めてこの『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の予告編見たときに、エクトワンが畑の中をラリーカーのように走り回るビジュアルで「なぜまたゴーストバスターズを?」という疑問とともに興奮で血圧が上がりました。体は正直。また予告編自体の雰囲気もシリアスムードで、クリスティン・ウィグやケイト・マッキノンが主演のリブートである2016年版ゴーストバスターズがコメディ全振りだったのには個人的に物足りなさを感じていた中で、このシリアステイストのゴーストバスターズ予告編は「そうそうこういうのが好みだよ」とさらに血圧が上昇したのでありました。

 コメディ映画として語られることの多いオリジナルの『ゴーストバスターズ』ですが、実はシリアスなシーンは多いのです。大学を追い出されたピーター・ベンクマン(ビル・マーレイ)、レイモンド・スタンツ(ダン・エイクロイド)、そしてイゴン・スペングラー(ハロルド・ライミス)の主人公である博士の3人が起業を決意し、銀行から融資を受け(レイの実家を抵当にして)事務所探しで不動産をめぐるという現実的な手順を丁寧に描き、市の環境局の役人のいやがらせも本当に嫌な奴の人物として描かれます。ゴーストがあふれるニューヨークに大きな危機が迫っていることをレイモンドと中途入社のウィンストン(アーニー・ハドソン)がエクトワンの中でジョークも言わず真面目に語るシーンがあったりします。カートゥーン的なビジュアルでコミカルなアイコンと思われがちな『ゴーストバスターズ』のゴーストたちも、オリジナルではオープニングのニューヨーク公立図書館に現れる司書のゴーストなどは“幽霊譚”としてのオーセンティックなゴーストでありました。

現実的な問題をシリアスなシーンで描くからこそのリアリティ、そしてコメディとの緩急。そうなのです。『ゴーストバスターズ』は、リアリティとコメディの絶妙なバランスの上にあるからこその傑作なのです。

 そんなことを踏まえて上での『ゴーストバスターズ/アフターライフ』です。

 のっけから母子家庭の主人公家族が経済的理由でオクラホマ州サマーヴィルというスモールタウンにある死んだ祖父の家に引っ越します。“家庭での経済的な理由”というシリアスでリアリティあるこの導入部で、本作が『ゴーストバスターズ』第1作の正統的続編であることを宣言しています。

 このあたりは『フロントランナー』(2018)、『ヤング≒アダルト』(2011)、『マイレージ、マイライフ』(2009)、『JUNO/ジュノ』(2007)といったドラマを得意とするジェイソン・ライトマン(『ゴーストバスターズ』とパート2の監督であるアイバン・ライトマンの息子)がメガホンを取ったことが大きく作品に現れているところだと思います。

 スモールタウンにやってきた主人公の女の子が、新しい友人ポッドキャストとお化け探しに出かけるというお話はジュブナイル、今でいうところのヤングアダルト的な物語で、まさに10歳のころに『ゴーストバスターズ』を見た僕にとっては、あのプロトンパックを彼女たちが背負うことの羨ましさと、なぜ10歳のころにこの映画がなかったのかという悔しさが入り混じる複雑な感覚がありました。
 ジェイソン・ライトマンもまさに父親が監督していたオリジナルの時代にまだ子供だったワケで(パート2に出演もしている)、まさに父と息子という世代的な視点がクロスするような物語となっているのもまた感慨深いですね。

 映画が始まると、オリジナル版と同じくコロンビア映画(84年公開当時はソニーが買収する前)のコロンビアレディともに何度も聞いたあの奇妙な音楽が流れ(たぶんヤマハのシンセサイザーDX-7か、オンドマルトノ)、開始3秒で鳥肌が立ちました
 そして本作にはオリジナルとのつながりを示すアイコンがこれでもかと登場してきて目が離せず、先のコロンビアレディも然り、ゴーストバスターズの社用車エクトワン、ゴーストトラップやプロトンパック、そして故ハロルド・ライミスが演じたイゴン・スペングラーのトレードマークともいえるPKEメーターなどなど、あの第一作と地続きである世界を思うとゾクゾクしてきますね。

 またエルマー・バーンスタインのオリジナルスコアで満たされた本作は、なんともいえない懐かしいリッチな映画体験を久々に思い起こさせてくれまして、子供のころに映画館で大音量で浴びたあのころを思い出して目頭が熱くなってしまいました。
 あのジャズテイストの軽快なテーマをバックにフィービーがプロトンパックの試し打ちをするシーンは多幸感にあふれていました。本当にありがとうございました。

 主人公の12歳の女の子フィービー(マッケンナ・グレイス)はイゴンの孫娘で、髪質やメガネ、その高い知能と、欠落したユーモアはまさに祖父イゴンからの隔世遺伝。彼女がプロトンパックを背負う際にその重さによろめくシーンは、このプロトンパックが「重い」ということをワザワザ見せる重要なシーンであり(オリジナルでも実際に14キロ以上あった)、また背面のスイッチを押すシーンが妙に具体的なのは、第一作でのエレベーターで初めてプロトンパックの電源を入れるシーンで、あの背面スイッチがどこにあるのかファンの間で長年議論されていたことによるものだと思われます。

とはいえ、映画の細部ではいろいろとツッコみどころは多く、エクトワンは簡単に直ってしまうし、めっちゃ頑丈だし、主人公たちはあっというまに機能を理解して活用したり、思ってたほどスケールが小さい話になってしまったり、絶対ラストは“彼ら”が登場するのはもはやお約束となっていたりとお世辞にも映画としてあまり良い出来とは言い難いのは確かです。

リアリティとコメディのバランスも、つりあうほどにそれぞれが描き切れていないのもまた確かで、やっぱり4時間、いや1時間10話くらいで丁寧に描いて欲しかった。そしてクライマックスはもうちょっとカタルシスを感じさせてほしかったというのが正直なところです。

しかししかし、本作はもはや映画の出来不出来なんて言ってる場合ではないのです。

本作で最重要人物であるイゴン・スペングラーを演じた故ハロルド・ライミスは、オリジナル第一作の製作に脚本段階からダン・エイクロイドとアイバン・ライトマンとともに関り、現在まで語り継がれる『ゴーストバスターズ』をゼロから作り上げた、本作の父親、いや2016年版の『ゴーストバスターズ』も含めると、まさに映画と同じく祖父のような存在でありました。

本作は2016年に亡くなったイゴン・スペングラー役のハロルド・ライミスへ捧ぐ映画であり、また『ゴーストバスターズ』のファンへの贈り物のような映画なのであります。

※文春オンラインで『ゴーストバスターズ』(1984)の製作舞台裏について寄稿しています


幽霊退治に挑む冴えない科学者たちの奮闘をユーモラスに描き、1980年代に世界的ブームを巻き起こした「ゴーストバスターズ」「ゴーストバスターズ2」の続編。前2作の監督アイバン・ライトマンの息子で、「JUNO ジュノ」などで知られるジェイソン・ライトマンがメガホンをとり、ゴーストバスターズのメンバーの孫娘の活躍を描く。少女フィービーは母や兄とともに、祖父が遺した田舎の古い屋敷に引っ越して来る。この街では30年間にわたり、原因不明の地震が頻発していた。ある日フィービーは地下研究室でハイテク装備の数々を発見し、祖父がかつてニューヨークを救ったゴーストバスターズの一員だったことを知る。そんな中、フィービーは床下にあった装置「ゴーストトラップ」を誤って開封してしまう。すると不気味な緑色の光が解き放たれ、さらなる異変が街を襲いはじめる。フィービーを「gifted ギフテッド」のマッケンナ・グレイス、兄を「IT イット」シリーズのフィン・ウルフハードが演じる。
2021年製作/124分/PG12/アメリカ
原題:Ghostbusters: Afterlife
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

映画.com


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すずきたけし

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