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観客はもっと怒っていい /【感想】『ヲタクに恋は難しい』

「悪ふざけ」って言葉はこの映画のためにある気がしてきました。
そもそもこれを映画と呼んでいいのか。ミュージカルと呼んでいいのか。
観客を舐めているとしか言いようのないロケ、ダンス、台詞まわしなどなど、困ったもんですよほんとに。
あらすじを解説するのも馬鹿馬鹿しいので下の公式を読んでもらいたいのですが、オタク同士の恋愛という、複雑な心模様を真面目に描けばそれは面白いものになるのだろうなと心の中でマルチバースの映画『ヲタ恋』を考えながらこの酷い映画を眺めていました(もう、厳しく言わないといけない気がする)。

 それぞれのキャラクターが演じる映画での間違ったオタク観へのツッコミについては僕は語ることができないので本当の各オタクの皆さんからのツッコミをSNSで追ってみてもらいたいのですが、それよりも映画としてどうなのよってとこです。
 まずオープニングなんですが
「オープニングは『ラ・ラ・ランド』っぽくいきたいですねwwww」
「いいですね!バックはコスプレのヲタクでwwww」と語尾に(wwww)をつけながら決めたような絵作り。
本編から歌へとシームレスに流れ、俯瞰で画面いっぱいに絵が広がりタイトルが現れる『ラ・ラ・ランド』のオープニングの高揚感は微塵も感じられず、高畑充希と山崎賢人の主人公二人がいきなりビッグサイト前に現れてバックにレイヤーさんたちと歌って踊るのですが、二人のダンスが・・・まったく・・・噛み合っていない・・・・。人様に見せるもんだから真剣にやってくれないかなとイラつきました。
そしてロケシーン。
高畑充希が仕事帰りに道端でまた歌う(もう歌わなくていいんですけど)シーンがあるのですが、背景にミジンコほどの気配りも感じないんですよ。工事の足場とか、ロケ時にただ本当にそこで工事していたんだと思うんですが、それをそのまま使う。ここはミュージカルシーンなワケなのでそういうのは映画的に意識してダンスで使うなりして巧い嘘をついて欲しいんですよね。渋谷の109前でのダンスシーンも見ていて痛々しいのですが、109をバックにしている時でも左奥の通行人は何事もなく歩いているんです。そしてカメラは回りこんで今度は109側から歌とダンスを写すのですが信号待ちしている一般人は何も起こってないように知らんぷり。やるなら全員に躍らせて欲しい。そして遠景に目を向けるとあまりに人通りのすくない渋谷。早朝でしょうか。絵作りに何のこだわりも配慮も、気概も挑戦もケレン味もない。そして歌詞が聞き取りにくい。
一事が万事って言葉はこの映画のためにある気がしてきたのですが、オープニングから真剣に映画作る気が無いというメッセージを受け取れる、ある意味親切な映画ですよ。真剣に見なくていいと言われているようなものですから。

こういう映画を見ているといつも「なぜこんな映画が作られてしまったのか」ということを考え込んでしまうのですが、長年映画を見続けてきて、このような邦画をある意味視界に入れずに野放しにしてしまったが故に好き勝手やられてしまった印象を受けました(笑)。映画と観客を舐めきった映画が作られてしまっている現状に観客としてちょっと責任を感じてしまいます。観客はもっと怒っていいと思います。

 折しも先頃のアカデミー賞でポン・ジュノ監督の『パラサイト』が作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞という映画作品における最も名誉ある賞を4つも受賞しました。なおかつ外国語であり非欧米圏であり、純韓国産の映画が2019年の最も優れた映画としてアメリカで認められたことは日本映画界にも驚きと刺激をもたらしたと思います。

アカデミー賞作品賞受賞で韓国映画産業の支援と配給をしてきたCJのイ・ミギョン副会長のスピーチがとても印象に残ったのでここに紹介しますね。

“そしてとくに、私たちの作品を応援し、つねに本音の評価をしてくださる韓国の映画の観客に感謝します。我々はそのおかげで、満足しないで、つねに進み続けることができました。監督もクリエイターも、つねに限界に挑戦し続けました。韓国の映画観客のみなさん、あなたたちがいなければ私たちはここに立っていません。ありがとうございます”

面白い邦画がこの日本で観ることができ、それが興行的にも批評的にも評価され、観客が求める映画、面白い映画を作ればビジネス的にも成功する。そんな本来の「映画産業」と「映画」を取り戻すには、まず観客が「本音の評価」を声高に言い続けなければならないのだろうと思います。
 
鑑賞日:2020年2月8日

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隠れ腐女子のOLと重度のゲームオタク(ヲタク)の幼なじみが繰り広げる不器用な恋模様を描き、2018年にはテレビアニメ化もされた人気コミックを実写映画化。高畑充希と山崎賢人を主演に、「勇者ヨシヒコ」「銀魂」シリーズの福田雄一監督がメガホンをとった。26歳OLの桃瀬成海は、転職先の会社で幼なじみの二藤宏嵩と再会する。ルックスが良く仕事もできる宏嵩は、実は重度のゲームヲタク。そして成海もまた、マンガやゲーム、コスプレ、そして何よりBLを愛する腐女子だった。周囲にヲタクだとバレる「ヲタバレ」を恐れている成海は、普段は本性を隠している「隠れ腐女子」だったが、ヲタク仲間の宏嵩の前では本当の自分をさらけ出すことができた。やがて、ヲタク同士ならば快適に付き合えるのではないかという宏嵩の提案もあり、2人は付き合うことになるのだが……。
公開日:2020年2月7日
2020年製作/114分/G/日本
配給:東宝




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