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かっこいい大人

ひと月ほど前のこと。買い物の帰り道、和菓子店の窓に張り紙がありました。
「○月○日は、ベテランの店員がおらず、新人のみで対応します。
そのため既成の組合わせ商品販売のみに対応し、個別対応での包装はできません。何卒よろしくお願いいたします」

あらゆる業働き働き手が不足しているのだと実感。やがて、この張り紙から想像が膨らみ続けます。
○月○日に店頭に立つ店員さんの鼓動が乗り移り、ドキドキしてきました。
いっその事誰一人お客様が来なければいいのに。
いやいや、できることだけを頼んでくれるお客様だけに来てほしい。
複雑な心境でソワソワと時間が過ぎるのを待つ私(店員姿)
そして、営業時間終了まであと1時間というところで、貼り紙がしてあるのにも関わらず、難しい注文をするお客様が来て、アタフタ。通りすがりのとっても素敵なラッピング王子(?)が助けてくれて~(ナイナイ)
はたまた、不慣れな店員を狙って泥棒が入ってくるとかー!?

もちろん、何事もなくその日は過ぎ、今日も通常通り営業していました。
めでたし、めでたし。

     ✴  ✴  ✴  ✴  ✴

小学生の頃、学校の近くに小さな文具屋さんがありました。
友達の誕生日には、そこでプレゼントを買いました。
考えに考えて、迷いに迷って、ちょっぴり不安を抱えながらかわいいえんぴつを1本と香り付きの消しゴムを1個選びます。
お店のおばちゃんのところへ持って行き
「お誕生日だから包んでください」とお願いすると、おばちゃんは、笑顔で頷いてくれました。
大きな包装紙を折り、「わ」の部分に小刀を滑らせて小さな包装紙を作ります。その上に長いえんぴつとコロンとした消しゴムを並べ、ささっと長細い三角の形に包みあげました。
「はいどうぞ」と渡された時、先ほどまでの不安は消し飛んでいました。自然に「ありがとう」の言葉が出ます。
身近なもので自分にはできないことを軽々とこなすおばちゃんの姿は、素敵でした。

一朝一夕で得ることのできない技術は、感動的です。私が子供の頃は、そういう技術を持った大人が身近にたくさんいました。
父も母も自ら砥石で包丁を磨ぎ、父は、家族のために小さな椅子や棚を作り、母は、裁縫が好きで服や学校に必要な袋物を作ってくれました。
特別な武器を使うわけではなく、子供の私にもある手と身近な道具で自分にはできないことができる大人たちに囲まれた生活。
あの豊かさで包まれた子供時代に尊さを感じます。

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