カレンダーおじさんのはなし

calendar-ojisan

真向いの上司の両隣の席には誰もいない。両隣りどころか、その列(3m程の長テーブル)には上司しかいない。業務の関係上そうなったようだが、なかなかにシュールだ。対面の私の列には4人が犇めいているというのに。

そうして上司は無駄に広い左右を思いのままに埋めている。昆布のお菓子やスタバのコーヒー豆、お年玉袋に緑茶キャンドル(?)。鞄の置き場も危うい私は世の不公平を憎む。

その上司のコレクションにある日、来年度の机上カレンダーが加わった。取引先から頻繁に貰うようで丁寧に並べられている。さながら美術品のよう。日に日に増えていく様を見ながら変なおじさんがいるもんだ、と私は鼻白んでいた。

それが今日。隣の上司がそのコレクションの中から自分のカレンダーを喜々として選んでいてぎょっとした。真向い上司とJKのように盛り上がっている。そうか。ご自由にどうぞ、の意を込めての展示だったのか・・。それにしてもおじさん二人楽しそう。余韻は続くようで、席に戻っても楽しそうに組み立てている。その間、向かいの上司は里子に行かせて寂しいと呟く。

普段死んだ目をしている二人の輝く笑顔が見れて良かった。ほんのひとときだったけど。良い年越しができそうだ。

ほくほくしていると、たてしなさんもどうぞ、と真向いの上司。えっ・・・と思いつつ、立ち上がり展示物を眺めて一つを選ぶ。それね~カラフルで良いよねぇ、と上司。そうですね、と私。

本当は既にお気に入りのカレンダーを飾っていたのだが、真向いの上司には死角だったよう。そっと鞄の中にしまっていると隣の上司と目が合った。優しく頷いていた。

手狭な私の席でポップなカレンダーが少し浮いている。




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