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母の入院をきっかけに、働き方について考えた

4年前の今ごろ、会社を3週間休んだことがあった。

ちょっと説明が煩雑なので、当時の家族の状況を列挙すると、

:メーカー営業、入社2年目。縁もゆかりもない栃木県宇都宮市で一人暮らし。
:知的障害があり、平日の昼間は福祉作業所で働いている。都内の実家で母と2人で暮らす。
:幼少期から股関節が悪く、人工関節を入れる必要があるとわかっていたが、姉の子育てもあってずるずると後回しにしてきた。
:1年前(当時)がんで逝去。

父が亡くなってしばらく経って生活が落ち着き、母がついに足の手術を決意。
手術とリハビリに伴う3週間の入院中は、私が実家に帰って、母の代わりに姉の面倒を見る必要がある、というわけだった。

事前の休暇取得の会社との調整、家で姉と過ごした期間、どちらも働き方を考える上でとても貴重な経験になった。

育休申請するサラリーマンの気持ち

休みを取ることは、1-2か月ほど前に上司に相談した。

私は、ちょうど同じころに部署の上司たちが、春から私を海外トレーニーに行かせるかどうかを話し合っているのを知っていた。入社してからずっと、面談のたびにしつこく訴えてきた海外行き。私か、男の先輩か、どちらを行かせたほうがよいか、という調整をしているらしい。

このタイミングで休みを取ってしまったら、プライベートの事情に必要以上に配慮されて、やっと回ってきそうなチャンスを失うんじゃないか。
休みを申請してから、休んでいる間も、ずっと不安だった。
保守的な会社だから、無難に男性を行かせたいんだろう、年次が重要なんだろう、そのための都合のよい言い訳を与えてしまうんじゃないか、とやきもきした。

結局、職場復帰当日に個室に呼ばれて、バンコクに赴任することが無事に通達された。
でも、行けなかったらどう思っただろう? 上司を、家族を、責めなかっただろうか?

また、休み中の業務を肩代わりしてもらう同僚たちに、迷惑だと思われないか不安だった。関わりのある他部署の人たちに、「しばらく不在にするんです」と都度事情を説明しなければいけないのも、わりと面倒だった。

◇◇◇

休みの期間が数週間であること、事前に時期がわかっていることから、このときの私の状況は、ちょうど妻の産後に育休を申請する男性サラリーマンのシチュエーションに似ている。

仕事の優先順位が低いと思われて、その後のキャリアに影響が出ないか。自分が抜けたら、周りに迷惑をかけるんじゃないか。前例がないから、上司や同僚にどう思われるのかわからない。

もちろん、組織にロールモデルが増えていくのがいちばんいいけど、時間がかかる。ファーストペンギン、セカンドペンギンになる当事者は、どうしたらいいのか。
できることは、突き詰めると、普段の仕事をしっかりやることしかないと思う。
組織に自分の存在意義を作ること。ちょっと休みを取ったくらいで揺らがない信頼を得ること。
一方で、作業を属人化せず、進捗をオープンにし、いつでも引き継げるようにすること。一人くらいいなくても職場は回るし、むしろそれでいいのだ。
そして、もしパワハラがあったなら辞めてやればいい、と思えるだけの自信とスキルをつけること。

幼稚園児がいる専業主婦の生活スタイル

休み中の生活スタイルは、姉の作業所への送迎を中心に回っていた。

朝は8:30に、近所のバス停まで作業所の送迎車が来てくれるので送り出す。
昼間は、母の病院にお見舞いに行ったり、都内で働いている友人にランチに付き合ってもらったりして、好きなように過ごしつつ、食事の買い物を済ませる。
夕方は15:30ごろに、朝と同じ場所で待機して、姉の帰りを迎える。
それから、夕飯の支度をして、一緒にお風呂に入って、という一日。

おそらく、幼稚園児の子供をワンオペで育てている専業主婦のお母さんとほぼ同じライフスタイルだったと思う。

そんな専業主婦疑似体験をしてみて思うのは、一人で会社で働くほうがよっぽど楽ということ。
楽しくランチを食べながらも、頭の片隅にはお迎えの時間がちらついている。常に自分以外の誰かに自分の時間が縛られるということが、こんなにストレスだとは思わなかった。
食事の準備が面倒な日は、自分だけならいくらでも適当に済ませられるけど、そうはいかない。子供の(姉の)健康の責任は、私が負っているのだ。

一方で、昼間の10:00-15:00と夕食後の20:00-23:00は比較的自由だった。
気持ちの余裕はさておき、稼働可能な時間だけを考慮するなら、コアタイムなし在宅勤務なら8時間確保できるのでは?と思った。

家族を大切にしながら働くには?

色々書いたけど、このとき休みを取ること自体は迷わなかったし、嫌ではなかったし、さまざま考えるきかっけになり楽しい時間だった。

当時勤めていた会社は、社員数が2万人を超えていた。いくら活躍していようが、期待されていようが、2万分の1だ。
家族には、私しかいない。

大人になるとは、お金と時間と能力を大事な人に惜しみなく使えるようになることだと、何かに書いてあった。

これまでは、家族と仕事、どちらかを取るとどちらか捨てなければいけない時代だったのかもしれないけど、
状況に応じて優先順位やシェアを変えられるようになってほしいし、その方法を模索していきたい。

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