見出し画像

遠隔でも要点を簡潔に伝えるクリエイティブオリエンテーションの技術

こんにちは。

昨今の状況もありテレワークやオンライン会議なども当たり前になりつつある今日この頃だと思いますが、クリエイティブワークに関するコミュニケーションやアウトプットクオリティのコントロールはうまくいっているでしょうか?やはり、非対面コミュニケーションではノンバーバルな情報伝達や雰囲気の共有が難しいからこそ、感覚的なクリエイティブワークにおいては困難な場面も少なくないのではないかと思います。

今回の記事ではそんな皆さんの助けにちょっとでもなればなと思い、僕が前職のインターネット広告代理店のクリエイティブチームで働いていたときに大切にしていた「オリエンで伝えるべきポイントとその伝え方のコツ」について共有したいと思います。発注者の方はもちろん、受注者の方も発注者から必要な情報を引き出すために役立ててもらえるかと思いますのでよかったら読んでみてください!


「 答え 」 ではなく 「 問い 」 をつくること


より良いクリエイティブアウトプットを得るために、まず考え方として持っておいてほしいのが、良いクリエイティブをつくるとは「良い答え」をつくることだけでなく、「良い問い」を考えて与えるということです。

特に僕が前職で従事してたようなパフォーマンス運用型広告を主戦場とする広告クリエイターの場合は、常に出稿目的(販売促進・認知拡大など)を達成する広告クリエイティブを制作し続ける必要があります。しかしながら、いつも期待通りの成果をいきなり簡単に発揮できるほど甘くはありません。それでも、達成できなかった場合に「どうすれば次は達成できるのか?より良い結果を出すことができるのか?」などと考え実行し続けることで結果をポジティブな方向に前進させ続けることが基本的なワークフローとなります。

だからこそ、どのようなクリエイティブをつくるべきか検討する制作フェーズにおいてもより良い「問い」を用意することで高いパフォーマンスを発揮する確率が高まり、配信結果を分析して改善していく運用フェーズにおいても事前に「問い」が用意されていることでパフォーマンス要因を的確に捉えられるようになります。


広告クリエイティブのパフォーマンス(効果)を「問う」


では広告クリエイティブにおいて「問う」べきことは何か?僕が考えるに大きく2つの側面があります。

問うべきもの

1つは、商品のどんな特長を紹介すれば買ってもらえるのか?どのような工夫をすれば無視されずに目を留めてもらえるのか?など、広告クリエイティブの「パフォーマンス(効果)にまつわる問い」です。商品価値がコモディティ化し、顧客インサイトは複雑化し、クリエイティブフォーマットも多様化し続けるなど、日に日に高い広告パフォーマンスを発揮する広告クリエイティブを制作する難易度は高まり続けています。

そのような中で「問う」べきこととは、結局のところ昔から変わらない「WHY(どんな目的のために)、WHO(どんな人に)、WHAT(どの価値を)、HOW(どんな表現で)」コミュニケーションするのかという4つについて考え抜くことです。

パフォーマンスの問い


WHY(何のために)

達成すべきKPIだけでなく、その目的をどうやって達成するのかというクリエイティブのゴールを設定することです。同じ目的を達成するためにも、そのために制作するべきなのは「つい見てしまう広告」なのか、もしくは「最後まで見たくなる広告」なのかといったことを考えることは、実際に制作するアウトプットに大きな影響を与えるため、目的はそれくらい具体的にコトバにすることがとても重要です。


WHO(どんな人に)

これもWHY同様に「具体的」にすればするほど使ってほしいユーザーにアプローチしやすくなりますし、また強いアイデアを発想しやすくもなるので、「30代女性」などといった無表情なものでなく「寝る前に必ずインスタに投稿するO型のキャリアウーマン」くらいにまで具体的にオリエンテーションできるように、想定ターゲットを具体的にイメージしておきましょう。


WHAT(どの価値を)

ここもきっとみなさんがイメージする以上に深く問う必要があります。特に現代においては機能面での差別化を図ることが難しくなっているため、「ユーザーに対して何が言えるのか」だけでなく「ユーザーは何を言ってほしいと思っているのか」という情緒的な側面まで掘り下げて、商品の伝え方を検討する(刺さるポジショニング)を探す必要があります。そのためにも前述のようにターゲットをできるだけ具体的にしておくことが有効と言えるでしょう。


HOW(どんな表現で)

特にスマホ広告においては無視されずに見てもらうためにインフィード広告と呼ばれるコンテンツに溶け込むようなクリエイティブフォーマットが主流になってきており、伴ってメディア特性を意識した広告表現を用いることが効果につながることが多くなっています。例えば、Yahoo!ニュースに掲載される広告であれば、記事っぽいシンプルな写真を用いたり、ニュース性のあるテキスト表現を用いるほうが広告として悪目立ちせず、結果的に多くのユーザーに目を留めてもらうことができます。またYoutubeのインストリーム広告であれば多くの視聴者が音声ありの環境で視聴していることをふまえて、冒頭にアテンションとなるサウンドを入れたり、動画全体にもナレーションを入れるといった工夫をすることでスキップされづらくなり相対的に広告効果が高くなるといった事例も増えてきています。


広告クリエイティブのビジュアル(見た目)を「問う」


パフォーマンスにまつわる問いを考え抜いたら、いよいよ実際に制作していく段階になるのですが、ここでも正しく「問う」ことで求めるアウトプットが得られやすくなります。

広告クリエイティブのオリエンテーションと言っても様々なニーズがあると思いますが、いずれの場合も大切なことは、「縛る部分と自由な部分をそれぞれ明確にすること」、つまり「期待」を正しく問うことです。

イメージはあるから忠実に再現してほしい」といった作業型のニーズの場合は、縛る部分だけを明確にすれば良いのですが、「構成を魅力的なデザインに仕上げてほしい」といったクリエイティブ制作型のニーズの場合は一定以上の自由をクリエイターに与えることで「自分では創造できない予想以上のアウトプットに期待したい」という狙いが絶対にあるはずです。しかし、期待通りのアウトプットが得られない原因が「クリエイターの自由を縛りすぎていたから」というケースは決して少なくありません。

縛る部分と自由な部分をそれぞれ明確にするための有効な手法としては「優先順位を明確にする」ことがオススメです。実際、制作の際に特に知りたいこととしてクリエイターから要望されることが多いのが、要素の優先順位、トーンアンドマナー、参考資料の3つです。

優先順位


どうしても発注者は指示書を精緻に作り込むことなどに意識が向きがちですが、制作者にとっては多少指示がざっくりしていたとしてもそれ以上にクリエイティブビジュアルに明確に反映できる意図が与えられるほうが、スムーズに制作しやすく、また面白いアイデアも発想しやすくなります。

期待するアウトプットにおいて、絶対に優先してほしいこととは何か、逆に自由にチャレンジしてほしいことは何か、をとことん問い抜いて、可能な限りの参考資料などとともにオーダーすることができれば必ずや求めるアウトプットへと近づいていけるはずです。


「問い」を与える覚悟と責任


このようなパフォーマンスにまつわる「問い」、ビジュアルにまつわる「問い」を考えていくことで、より良い広告クリエイティブが生まれていくと考えているのですが、すぐには上手に問えないかもしれません。

しかし、まずは自分の頭でこれだと思える「問い」を考えて、考えたらその「問い」に覚悟と責任を持って制作者とのコミュニケーションを行ってみて下さい。その中で「もっとここは自由にしてもいいかも」「この問い方だと良くなかった」など様々な気づきがあると思いますが、その1つ1つが皆さんの「問う力」を高めていってくれるはずです。

そして「問う力」を高めていくことでこそ、きっとどんな時代にも価値を発揮し続ける本当の意味でのクリエイターになっていけるのではないかと考えています。ともに日々「問い」続けることで、環境やルールが大きく変わっていくなかでも必要なクリエイティブを生み出し続けましょう!

構成案サンプル


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?