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会員様寄稿【連続小説】幸吉Ⅱ(3)うみのいえプロジェクト

幸吉 (2代目花屋オーナー 青年会議所所属)
三橋剛士 (伊勢志摩大学 自然環境リテラシー学 教授)
神谷茜 (伊勢志摩地域おこし協力隊)


**場面: 総務省主催の講演会**

総務省が主催する「地方創生と少子化対策」という講演会に、幸吉はスタッフとして参加していた。
講演会の後、幸吉は三橋剛士教授に声をかけられた。

「幸吉さん、少しお話ししたいことがあるんですよ」

「もちろんです、何でしょうか?」
と幸吉が答えた。

「この地域で新しいプロジェクトを考えているんです。うみのいえプロジェクトといって、地域を活性化させる計画です」
と三橋が説明した。

「ここでは詳しくお話しできません。名古屋のホテルに行きつけのバーがあるんです。そこで後日お話ししませんか?」
三橋は意味ありげに微笑んだ。


**場面: 名古屋のホテルバー**

数日後、三橋は幸吉を名古屋のホテルのバーに呼び出した。 
三橋はすでにカウンターに座っており、グラスを手にしていた。

「どうも、三橋教授」
と幸吉が挨拶すると、三橋はニヤリと笑った。
「さあ、座ってください。今日は特別に高級ウイスキーの山崎を用意しました。」

「ありがとうございます」
と幸吉が言って、グラスを受け取る。

「このプロジェクト、すごい予算がついてるんですよ。」
「幸吉さんもどうぞ。」

幸吉もグラスを手に取り、一口飲んだ。「これは…地元では滅多に飲めない美味しい酒ですね。」

「そうでしょう。こういう機会にしか楽しめませんからね。」三橋はニヤリと笑った。

「幸吉さん、政府の補助金とうみのいえプロジェクトの関係が気になるでしょう?」
と三橋が機嫌良く切り出した。

「正直言って、そうです。どうしてそれが地域創生や少子化対策に繋がるんですか?」
と幸吉が尋ねた。

三橋は笑って、
「正直繋がりなんてどうでもよくて、いかに予算を取れるかなんですよ。
バカな国民にお金を持たせてもろくな使い方をしませんからね。
我々がこうやって美味しいウイスキーを飲むほうが有益ですよ」
と言い放った。

「でも悪いことをしているようで気が引けます」と幸吉は困惑して言った。

三橋は再び笑って、
「お役所お墨付きですから、大丈夫ですよ。幸吉さんも上手いことやって酒を飲んだり、女と遊びたいでしょう。」

「我々がうまくやれば、地域にも少しは還元されますよ。結果オーライというやつです」と言って、山崎を飲み干した。


**場面: 南伊勢志摩の芋畑**

後日、三橋に誘われて幸吉は南伊勢志摩の芋畑を訪れた。そこで彼は神谷茜に出会った。

うみのいえプロジェクトでは、古民家を利用してやきいもを販売する計画である。
神谷はさつまいもの有機栽培を夢見て、この南伊勢志摩に移住してきたのであった。

「こんにちは、幸吉です」
と自己紹介すると、茜は微笑んだ。
「神谷茜です。よろしくお願いします。」

「神谷さん、この芋畑ではどのような取り組みをしているんですか?」
と幸吉が尋ねた。

「私は自然の力を信じて、持続可能な農業を目指しているんです。将来的には農薬を使わないようにしたいと思っています」
と茜が答えた。

「地域おこし協力隊として、大阪からこの町に来ました。すこしでもこの町のお役に立ちたいなと思ってます!」

彼女の純粋な笑顔がとても痛々しかった…

続く

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