会員様寄稿【短編小説】スナックSAYUKI (1) ティファニーで朝食を
「富める者はますます富み、貧しき者は持っている物でさえ取り去られるのである」
―新約聖書マタイ伝13章12節―
*登場人物*
-前手彩友紀(38歳): スナック『SAYUKI』ママ オードリー・ヘプバーンに似ている 小柄
-ユキ(27歳): チーママ 細身
-リナコ(28歳): 新人 ぽっちゃりだが本人は自覚していない。
-氷川康夫(54歳): LGBTトランスジェンダー あだ名やっくん オカマバー『ネコ』のママ
今夜のスナック【SAYUKI】は、チーママのユキとぽっちゃりリナコ(自称本人はぽっちゃりとは思ってはいない…)の二人で店を任されていた。ママのサユキは、太客の和田社長と一緒に食事をした後に同伴出勤するとユキに連絡が入った。
ユキ:「リナコ、今日はママが少し遅れるみたい。だから、ママが来るまで、私たちでお店まわしていこうね。」
リナコ:「はい、わかりました…。」
リナコはユキのほうに連絡があったことが面白くない。
ユキは店の準備を続け、一方のリナコは無意識に店のナッツを口に運んでいた。
そんな中、既に客席には一緒に店に入ってきた二人のお客がいた。
カウンターの中央右端あたりには30代後半の男、左隣の席に20代中頃の若い男が座っていた。
早い来客だったため、店の準備に追われていたユキとリナコは二人のお客の会話を聞き流していた。
30代後半の男は、20代の若い男に対して暗号通貨や株の話を得意げに語っていた。
30代男:「だからぁ!今が買い時なんだ!このコインは爆上げするのは間違いないよ!」
20代の男:「すごいんですね!」とただ、調子を合わせ頷いていた。
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