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AD18「角田陽一郎の2017年マイベスト映画15」

2017年「る組」今年最後のメルマ旬報ってことで、今年映画館で観た映画のマイベスト15を載せたいと思います。なぜベスト10じゃなくて、ベスト15なのか?・・・それは10個に絞れなかったから(笑)。すみません!10個だと、あれ入らないじゃん!みたくいつもなってしまうのです。
でもあくまで“僕が観た映画”の中からなので、かなり偏りがあると思いますし、そもそも見逃した映画も結構あります。今年はTBS退社後はじめてフリーで過ごす1年で、かなり精神的にも物理的にもバタバタした年でした。
でも仕事が忙しいときほど、切羽詰まってるときほど、モヤっとしてるときほど、映画を観ます。
すると不思議と(本当に不思議なんだけど)ヒントだったりアイデアだったり解決の糸口が映画の中のセリフや映像に決まって出てくるのです。
尋ねてもいないのに映画の方から勝手に答えを教えてくれる。本当に不思議です。

僕が映画を選ぶポイントは、その映画にただ1つの何か素晴らしいポイントがあるか?ってこと。むしろ1つでも素晴らしいところがあれば、他に難があっても許してしまいます。いろいろな点で優れていて平均点が高い映画なんて、映画としてむしろ全然面白くない!むしろ欠点があるくらいの方が魅力的な映画だと思います!(人間だってそうだと思います)。まあ、参考程度にお楽しみください!

第15位『はじまりへの旅』 
森で暮らす風変わりな一家が旅に出たことから巻き起こる騒動を描いたロードムービー。
ロードムービーがそもそも好きなんだけども、そこに入ってくる身体や野生の過酷さの「自分じゃできない感」に、いつも喪失感を覚えてしまう、「そんな生活自分にはできないよ」って。それを描いた映画という意味で、ものすごく考えさせられる映画だった。

第14位『ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走』
フランスコメディ映画。原題は”A fond”。調べてみたら”とことん”とか”徹底的に”という意味だった。
確かに”とことん”笑わせるフランスコメディだった!笑った笑った!!
そしてこの自動運転の車との付き合い方は、僕らの未来を暗示してもいる。

第13位『T2 トレインスポッティング』
なんかイマイチかなとか思ってるうちに、グイグイ引き込まれ、いつの間に魅了されてしまったところが20年前のT1と一緒だ。
だってレントンたちと僕は同い年の46歳、そりゃ感じ入るよ。。。
主役のユアン・マクレガーも実は僕と同い年。前作から同様に歳をとった映画の中の人たちと自分。まるで自分を見ているようだった。

第12位『たかが世界の終わり』 
グザヴィエ・ドラン監督の2016年のカンヌ映画祭グランプリ。
《「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷する人気作家のルイ。》HPより
英題は『It's only the end of world』。でもこの邦題の方がしっくりきた。英題だとSFみたいだし。
まさに、”たかが”。本当に、たかが世界の終わり、だった。自分が死ぬこと、なんて”たかが”なのだ。
27歳のカナダの天才・グザヴィエ・ドラン監督の1シーン1シーンに匂わせる映像と演出は、すごく直感的で、見ている者に、彼の言いたいことはほとんど言葉にされていないのに、ぐんぐん伝わってくる。でもこの映画は言葉がない静かな映画なわけではないのだ、むしろずーっと誰かが言葉を発している乱雑な会話劇なのだ。
言いたいことを言わないで、言わなくていいことを言い続けることによって、伝えたいことが伝わってくる映画。
何気ない家族の会話劇、愛するうえに、憎む、誰も悪くないのに傷つけ合う。
家族とか生きてる意味とか物凄く考えさせられ、観た後ずっと脳内にこびりつく。
すごい抑制の効いた映画。なのに激しい。
やはりドランは天才だ。
そして、この作品にグランプリを与えるカンヌはやっぱ凄い。

第11位『ザ・ダンサー』 
伝説のダンサーのロイ・フラーの実話。そしてイサドラ・ダンカンとの確執。
それをソーコとジョニー・デップの娘さんリリー=ローズ・デップが奏でるドキュメンタリーのような映画。
ソーコの成り上がりの泥臭さと、リリー=ローズの持って生まれた圧倒的なきらびやかさが、実際のロイ・フラーとイサドラ・ダンカンに重なる。
ステファニー・ディ・ジュースト監督。
自分の夢を叶えたくて努力する。
で、ようやく世間に認められる。その時は若さを失っている。
すると、自分をはるかに凌駕する才能の若手が登場する。
人生って、なんてはかないのだろう。

第10位『ドリーム』 
いかなる排除も進化を生まない。前例がないものは、自分が前例になるしかない。
もうそんな人生の教訓がどんどん出てくる。僕らの目の前の障害なんて、彼女たちに比べれば、ちっぽけなのだ。すごいベタだけど、勇気をもらえる映画。

第9位『Viva!公務員』 
大好きなイタリアコメディ映画。というか昨年イタリア映画祭でこの映画を観て、イタリアのコメディを初めてちゃんと知るという。
イタリアのコメディ、すごく日本人にあってると思う。仕事、人生、家庭、差別、僕らと悩んでることが同じ。それを(日本と違い)コメディでダイレクトに表現してる。

第8位『メットガラ ドレスをまとった美術館』 
ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催される超豪華なファッションショーのドキュメンタリー映画。実際の“プラダを来た悪魔”のアナ・ウィンターがしびれるくらい素敵。
映画パーソナリティ・コトブキツカサさん絶賛の映画!観たら確かにすごいドキュメンタリーだった。凄まじくてアドレナリン出まくりになる映画。

第7位『ラサへの歩き方〜祈りの2400㎞』 
《チベットの小さな村から聖地ラサ、そしてカイラス山へ。
はるか2400kmを“五体投地ごたいとうち”で、ほぼ1年かけて歩く11人の村びとのチベット巡礼旅。》HPより
最初ドキュメンタリーかと思ったんだけど、なんでこんな綺麗なカット撮れてるんだろうと思ってたら、フィクションだった。けど実際のチベットの家族が演じていて、すごく純朴で敬虔なのでドキュメンタリーのような映画だ。素晴らしいロードムービー。
宗教は異なるのにサンティアゴ・デ・コンポスティーラへの巡礼を描いた大好きなロードムービー『星の旅人たち』にすごく共通するものを感じた映画だった。

第6位『ラ・ラ・ランド』 
あまりに観たくて初日に観てしまった!!最高!!悲しいけど、悲しくて最高!!
ミュージカル映画、すごく楽しい。
人類を二種類に分けるとすれば、ミュージカルが好きな人と苦手な人に分けられると思う。最初に観たときのいろんなシチュエーションでいきなり歌って踊り出す、この違和感を越えたら(これは越えるまで、人生で数作ミュージカル映画を体験する必要がある。すごい幼い頃に体験しちゃう人もいれば、生涯体験しない人もいる)、その魅力が脳裏をきっと離れない。
そしてこの『LA LA LAND』は今まで脳裏に焼き付いた数々の名作ミュージカル映画の楽しさを存分に味わさせてくれる。そして人生のどうしようもない如何ともしがたいやるせなさも、歌と踊りに乗せて甘く甘酸っぱく魅させてくれる。
最後のシーンが哀しくて、そうだったらよかったのにって人生を音楽に乗せて。
観ていて、とてもせつなかったな。でもそのせつなさってのが、人生そのものなんだと思う。僕の人生もそんなせつなさがいっぱい詰まってる、それに気づかせてくれる素晴らしい映画。

第5位『光』 
河瀬直美監督の『光』。
あまりに素晴らしかった。
河瀬さんはなぜこれほどまでに静かに淡々と圧倒的な衝撃を描けるんだろう?
世界が彼女を求めることだけは、僕でもわかるけど。
この映画を観た時、視力を失うことに根源的な怖さを感じた。そしたら観た三ヶ月後に突如網膜剥離になり、それを体験することに。なんか映画観た時の妙なリアルな感じは、その予兆だったのかとも思う。

第4位『エンドレス・ポエトリー』 
アレハンドロ・ホドロフスキーの自伝的マジックファンタジー。前作は幼少期を描いた『リアリティのダンス』。今回は思春期のアレハンドロを描く。最高すぎて言葉にならない。世界の全てがつまった映画。
僕も制作費集めのクラウドファンディングに参加したんだけど、2月に行われた先行試写会には、その日がピコ太郎の武道館コンサートと重なって行けなかったのだ。そんなに大好きな監督の映画なのに、ピコ太郎を選んだっていう。。。
でも、この映画が本当は僕の中では一番かもしれない。でも本当の1番なので、他人に安易に触れられたくないのかも。なので目立たないように4位。

第3位『ブレードランナー2049』 
続編まで35年間もあいたことが作品を圧倒的な続編にしてる。それは人生の35年をかけないと理解できないって体験の凄み!
この続編を見て僕は作品の凄さをようやく理解した。前作を評判を聞きつけてレンタルビデオで観た30年前の学生の頃の自分には、意味がよくわからなかったのだ。それはつまり人生というのがその時はよくわからなかったからかも。
前作のリドリースコットは制作総指揮で、カナダのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。

第2位『メッセージ』 
映画を観た後、いろんな意味でまさに時空を超えて打ちのめされている。
映画『メッセージ』の原作『あなたの人生の物語』読まなきゃ。
『ブレードランナー2049』と同じドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。
つまりベスト3に2作品が入った監督ということで、僕はこの監督すごく好きなのかもしれない。これ、どっちが上位かかなり迷った。でも観た時の衝撃という意味で『メッセージ』をあえて2位にした。なんていうかSFなんだけど、この映画観て以来、過去と今と未来を分けて考えることのナンセンスさを僕はこの歳で初めて知ってしまったのだ。つまりこの映画を観て以来、人生のあり方が一変させられた映画なのだ。

第1位『人生フルーツ』 
東海テレビ制作のドキュメンタリー映画。
昨夜、別府でのDJダイノジ終了後、ダイノジ大谷さんと別府ブルーバード劇場の森田真帆さんらと食事。映画と映画館と批評について話す。映画自体を作ることと興行することと批評することの差異。どこも不興。それはあらゆるコンテンツビジネスがシステム自体の改変の過渡期に来てるから等々。
その中で、この『人生フルーツ』の話になった。
大谷さんは今年ナンバー1だ、と言う。
森田さんは、今ブルーバード劇場でやってます、と言う。
水道橋博士も、絶対観るべきだと、この前お会いした時力説していた。
観てみた。
すごいすごい映画。もう生きることの意味全てがある映画。
この映画を観て、僕は生きる意味が変わりました。
今まで大事にしていたことが、実はそんなに重要でないことを知り、そしてもっと大事なことがあることを知った映画。

こんなふうに人生のきっかけをくれるのが映画の素晴らしさなのだ。
来年もいっぱい観てみようと思う。きっと楽しいこと以上につらいこともいっぱいあるだろうから、そんな時は映画を観ようと思う。
読んでいただきありがとうございました。

[水道橋博士のメルマ旬報 vol.141 2017年12月20日発行]


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