vol.60 『はじまりのバラエティ番組』

角田陽一郎のメルマガDIVERSE vol.60 2020年11月15日New Moon
『はじまりのバラエティ番組』

ユニバースUNIVERSE(単一の世界)からダイバースDIVERSE(多元的な世界)へ
多視点(バラエティ)でみると、世界はもっと楽しくなる。
それが角田陽一郎の考えるバラエティ的思考です。まさにいろいろなことをバラエティに多元的に多視点で紐解くメールマガジンです。


■CM■「バラエティ番組のはじまり」inspired by【天才になる方法】

おはようございます。蠍座の新月です。新月は新しいことを始めるタイミングです。そういう意味では、そんなタイミングがまさに月イチでやってくるんですから、なかなかよくできています。皆さんも何か初めて見るのはどうでしょうか?
「いや、そんなこといきなり言われたって」・・・って困惑される方も多いでしょうが、そんな始めるような新しいことなんてない、っていうのであれば、“これから初めてみる(みたい)新しいことは何なのか?を考え始めてみる”って始まりでもいいかもしれません。
ちなみに自分と言えば、3日前に東京・西麻布のスタジオを引き払って、海の近くののどかな街に越して来ました。水曜、木曜と二日間かけてバタバタ引越ししてましたが、それもようやく一段落して、昨日くらいからやっとまもなく提出締切を迎える修士論文執筆に本腰を入れ始めました。まあ、入れ始めたばかりなので、まさにこのジャスト新月から、修士論文執筆を始めてみようと思います!
と今書きましたが、つまり新しいことを始めるタイミングとは、別に本当に新しいことである必要もないわけです。今までやろうと思ってたけど、なかなか進まなかったこと、いつも途中で挫折してしまうこと、やる前にあきらめてしまうこと、そんな中途半端なものを、新しくリスタートさせることでも、もちろん“いいわけです”。つまり僕なんかも、そんな感じで、踏ん切りをつけるために、新月を“いいわけ”にしてるわけです。でもそんな“いいわけ(言い訳)”から物事は、まさに始まっても、もちろん“良いわけ”なのです。
と、こんな感じで始めてみますが、今回もまたテレビのこと、バラエティ番組のことを書いてみることから始めてみたいと思います。
・・・なぜ、テレビのこと、バラエティ番組のことを書くのか?
それには、2つの理由があります。
まず1つ目は、先ほど述べた修士論文のテーマがまさにバラエティ番組の検証だからです。その論文を“本腰”入れて執筆するするためのまさに、“はじまりのきっかけ”を、このメルマガを書くことにしてみているからなのです。文章がスラスラ書ける人はもちろんいいですが、僕はなかなか書けません。たくさん本を書いてますし、連載もしているのに、なかなか書けないのです。この書けない、って感覚はある意味とても面白いです。なぜなら書くことは、嫌いでは決してないのです。なのに、書くことは苦痛であったりもします。「苦痛なのに好き」・・・この感情は、一体なんなのでしょうね?その精神構造はよくわかりませんが(笑)、そんなことに拘っていると、延々と書かないので、まずはどんな文章でも書き始めてみる、書き始めるきっかけを自分に与える、そういうモノコトが僕には必要なわけなのです。なので、修士論文執筆に本腰を入れるためにも、まずはとりあえず執筆脳にしてしまうために、このメルマガで、なんとなくテレビのこと、バラエティ番組のことを書き始めてみようと思った次第です。
そして、2つ目は、新しいことを始めるに当たって、今までの自分の人生を振り返ってみたいという要求にかられているからでもあります。今回、この2020年になぜ東京を離れたのか?そこには、50歳になって、父が亡くなって、コロナ禍があって、そんな色々あった2020年なので、自分の心境の変化が今まで以上に大きいのですが、その変化については、この海の街でもうちょっと生活してみてから、来月修論を無事書き終わって、来月のメルマガにでも2020年の総括として記してみたいと思います。で、その前に自分の過去の足跡、今までやって来たことを総ざらいしてみたい感覚に今無性に囚われているのです。
その自分の人生の総ざらいとは、何か?・・・それが、まさにテレビなのです。そして、長年携わってきたバラエティ番組なのです。そう考えると、今この時期にテレビのことを書く、修士論文で取り上げるのには、自分の人生の振り返り以上に、まさに今の世界を取り巻く、情報通信技術の進化の中で今までの巨大メディアであったテレビが、どうなっていくのか?ということに対するバラエティプロデューサーとして長年携わってきた自分の予見や想いをアーカイブしておきたいという希望があるわけなのです。欲を言えば、それを「理論」、穿った言い方で言えば、「角田理論」として体系化・システム化してみたいのです。さらに穿って言えば、メディア研究の走りであり、今も多大な影響を残しているカナダの文明批評家マーシャル・マクルーハンの「メディアはメッセージである」という名言を生み出したメディア理論を超克したいですし、イタリアの哲学者ウンベルト・エーコが「パレオTV/ネオTV」という構造を打ち立てたメディア理論を拡張したいのです。そんな野望の端緒として、この修士論文は自分の中の人生の後半の仕事にも位置付けたい思いもあるのです。
そのためにも、自分がやってきたバラエティ・プロデュースを言語化・システム化・理論化するための始まりの始まりで、このメルマガを書いているわけなのです。


■DM■「『からくりTV』の多重視点構造」inspired by【出世のススメ】

さて、そんなわけで始まりの始まりということで、テレビのバラエティ番組の話をしたいと思います。
わたくし、角田陽一郎はTBSテレビに1994年4月に新卒入社しました。配属されたのは希望通りの制作局制作二部。一部がドラマ制作ですから、二部はまさにバラエティ番組の制作の部署です。そこから2016年末に退社するまで、後半はメディアビジメス局、ネット配信会社GOOMOの取締役も兼務していましたし、そこから音楽フェスや映画監督、アプリ制作なども手がけましたが、基本はバラエティ制作一筋です。
そこでいろんな番組を手がけましたが、僕のバラエティ脳が形成されたのは、やはり当時の大人気番組だった『さんまのスーパーからくりTV』と『中居正広の金スマ』です。『からくりTV』は毎週日曜19時の30分番組からちょうど1時間番組に拡大してスーパーという名称が番組名に加わった96年の春から、入社3年目でチーフADとして配属され、その後ロケディレクター、枠ディレクター、プロデューサーと肩書きを変えて担当しました。『金スマは』、2001年の秋に、その後自分の師匠になる先輩プロデューサーの元で、チーフディレクターとして番組立ち上げを行いました。
この2つの番組には、共通するところと、全く異なっている点があります。それは、そもそもバラエティ番組というジャンルの特異性にもなってるわけですが、その個々の番組の企画によって、まさに企画の内容や演出は全く異なるからです。つまり、バラエティというジャンルはあるようで無いようなものなのです。でもそんな全くコンセプトが違うバラエティなのに、共通するポイントはどこでしょうか?

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