第424段「『孤独の発明』by ポール・オースター」
先日77歳で亡くなったポール・オースターの父のことを語ることから始まる自伝的な初小説。
1996年に買ったままちゃんと読んでなかった文庫本。
自分の父も77歳で亡くなって、小説内で父のことを綴るその語り口ひとつひとつが自分の父への想いと悉く重なる。
偶然の本質を綴る作品との偶然の重なり、きっと今の僕が読むべきという偶然が更に重なったのだろう。
自分が記憶の書に記録しようとしていることはすべて、自分がこれまで書きつづってきたことはすべて、おのれの人生のなかのごく短い瞬間の翻訳に過ぎないのだと (p224)
空は青く、黒く、灰色で、黄色い。空はそこになく、赤い。
これはすべて昨日のこと。これはすべて百年前のこと。
空は白い。それは大地の匂いがして、そこにない。
空は大地のように白く、昨日の匂いがする。
これはすべて明日のこと。これはすべて百年先のこと。
空は、レモン色で、バラ色で、ラベンダー色。
空は大地。空は白く、そこにない。(p284)
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