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ゲーム性と競技性、そしてギャンブル性

 対戦がなんで面白いのかって話とかを、いつか書いてみたいなあと思っていたのですが。

 最近になってリスクとリターンに関する動画を見たのを切っ掛けに、以前から考えていた話と繋がったりしたので、今回みたいなテーマにした方が面白そうな気がしたので書いてみます。


リスクとリターンとギャンブル性

 この話でギャンブル性まで繋げるのは、なんだか本当に申し訳ない気がするのですが。
 とはいえ、自分の中で考えた結論がこれなのは変わりないので、とりあえずは話を始めてみます。

 リスクとリターンというのは、スマブラやカービィなどで有名な桜井政博さんがゲームの面白さについて話していることです。
 YouTubeの桜井さんのチャンネルで、短めの動画で分かりやすく説明されています。
 例えば、敵に近付くと攻撃されるリスクが増えるけど、敵を倒すというリターンを得られるかもしれないなど、いろんなゲームでリスクとリターンが面白さになっているという話です。

 この話は以前から知ってはいたのですが、動画の説明を見たら思った以上に腑に落ちたような感じがしました。

 ただ、そんな素晴らしい動画を見てこんな感想を持つのはどうなんだろうと思ってしまうのですが。
 まあ勘の良い人ならもう気付いているかもしれませんが、リスクとリターンって、まんまギャンブルだよね……。
 と思ってしまいました。

 今回の内容は、ギャンブル性が中心になってしまう話なので、ここから目を背けずに続きも書いていきたいと思います。


スマホ依存はギャンブル脳という話

 いきなりゲームの話から飛んだ気がするかもしれませんが、今回の話で重要になるギャンブル脳について、ここで話していきます。
 と言っても、スマホ脳に関する本の内容を動画で知っただけなのですが。

 SNSなどで更新を確認するという行為が、あるかどうか分からない物を探すという行為と同じで、更新があった時には快楽物質のドーパミンが脳内で出るんだそうです。
 これが、いわゆるギャンブル脳を刺激していて依存性があるという話です。
 他にも、スマホの画面を下げて更新する行為がスロットに似ているとか、コンマ数秒更新に時間がかかる事で期待感が増している、ってのもあるのですが。

 その話によると、これは原始時代からの脳の習性なんだそうです。
 狩猟時代に、あるかどうか分からない木の実などを探し歩いて、木の実が見つかったら快楽を得ることが出来る。
 これによってついつい木の実を探すというギャンブルを続けてしまいやすくなり、生き残りやすくなるという事です。
 つまりギャンブル脳とは、原始時代に生き残るための脳、なんだそうです。

 もはや、あるかどうか分からない物が見つかるだけでなく、探すという行為そのものでも快楽を得られてしまうんだそうです。
 これが、現代のSNS依存の原因らしいです。

 で、ここからが自分の考えなのですが。
 ちょっと言い方を変えると、期待してるものに対して、期待した通りの結果が得られた場合に快楽を得られるのが、ギャンブル脳なんじゃないかなあと思いました。
 つまり、例えば宝くじにしても、大金が貰えるかもしれないという期待に対してお金を払うわけですが、この大金の価値を理解できずに期待できなければ快楽は得られないと思います。
 ちょっとした差しかないかもしれませんが、SNSだと更新を期待していたり、ゲームだと敵を倒すことを期待していたり。
 こう考えれば、もう少し細かく腑に落ちやすい説明になるかと思います。

 ……てか、ちょっと調べたのですが。
 詳しくは見ていないのですが、2021年にドーパミンは快楽物質ではなく期待物質と言った方が正しいのが分かった、みたいな話がありました。
 自分の期待を超えたものを得られた時に分泌されるらしいです。

 期待通りの場合はこの話だとどうなのか微妙ですが、とりあえず大丈夫ってことで今回は話を進めます。


ゲームで期待すること、競技で期待すること

 一人用のゲームで期待することといえば、敵を倒すとか、ステージをクリアするとか、アイテムを手に入れるとか、仲間が増えるとか、レベルが上がるとか、ストーリーの続きを見るとか……。
 これらの期待に共通することは、基本的には達成できる前提で期待するということです。
 なので、アクションゲームやパズルゲームや格ゲーなど、自分が苦手なジャンルに関しては期待通りになりにくいことを覚えてしまえば、そのジャンルを二度と触らないという人も多いかと思います。

 そのため、現在のゲームは難易度を段階的に用意したりなど、初心者から上級者まで幅広くカバーしているものが多いです。
 昔のファミコン時代は難易度が高かったり、色々と不親切だったり、そもそもセーブも制限が多かったりデータが消えたり……、などでクリア出来た時の達成感というリターンも大きかったと思います。
 とはいえ、リターンを得られる人が少なくなるので、そういう時代じゃないということなんでしょうね。
 ずっとゲームを続けてる人が昔より今のゲームが面白くないと感じる理由も、ゲームをクリアすることに慣れてしまって刺激が少なくなったり、そもそもゲームの腕が上がったので一人用ゲームの難易度に物足りなさを感じてしまったり、というリターンの少なさもあるのではないかと思います。

 さてここで、競技で期待することも考えてみます。
 もちろん勝つこと、が一番最初に思い浮かぶと思いますが。

 一人用のゲームだと基本的には期待通りのリターンが得られることが前提の作りです。
 しかし、対戦だと相手も勝ちたいという欲があるため、何もしなければ基本的には負けてしまう、つまりリターンが得られないことが前提になってしまいます。
 初心者同士で近い実力だったり、ランダム性によってそれなりに勝ったり負けたりすれば誰でもリターンが得られますが、競技という意味ではどちらもあまり期待できません。

 そうすると、勝つこと以外に期待をしなければ、競技を続けることは難しくなってしまいます。
 じゃあ何に期待するのかと言うと、使用キャラの技を上手く使えるようになりたいとか、有名なあの人の動きを真似てみたいとか、苦手キャラを相手にした時の対策を覚えたいとか。
 自分の技術力とか、ゲームへの理解度とか、そういう自身の成長を期待することに落ち着くのではないかと思います。
 そう考えれば、格ゲーマーが練習のためにトレーニングモード、通称トレモに籠るのも当然です。

 こうなると、対戦ゲーマーは勝つための手段を身に着けることを楽しんでいるので、そりゃ初心者が勝ちにくいのは道理です。
 すると、ますます勝ちたいという期待だけでは続かなくなってしまいます。
 テトリス99などのバトルロイヤル系は、同じ対戦ゲームでも競技性を下げることで期待通りのリターンを得やすくしているんだと思います。
 しかし、タイマンでは直接的に相手の勝つ為の手段を目の当たりにするので、競技性が高くなりやすいと思います。


競技性は作るものではなく育つもの

 めっちゃ個人的な意見になりますが、競技性は育つものだという説を思い付きました。

 そもそも競技とは何かというと、技術や知識や経験などを競う事のはずです。
 つまり、対戦すれば競技なんじゃなくて、対戦の場合は勝つために何かしなければならないのが競技性なんだと思います。
 例えば、RTAなどは自分自身でタイムアタックをしていくもので対戦ではないですが、タイムを削るために研究や練習を重ね、世界記録が出れば盛り上がったりと、あれも正しく競技と言えるはずです。

 逆に、石を投げる飛距離を競うという遊びがあったとしても、それに勝つために真剣に取り組んでる人が少なかったり、それを見て面白いという人があまり多くないので、競技として真剣に取り組んだり観戦したりする人が少ないと思います。
 仮に、投げる石の形状をルールで明確に決めて公平性を保っても、競技として見る人が少なければ、それは競技性が低いのではないかと思います。
 つまり、最初から競技性の高い遊びというのを作るのは難しいと思います。

 一方で、現在のeスポーツで使用されているゲームも、最初は今のような競技シーンを前提として作られたものではないはずです。
 今でこそ格ゲーのキャラ差の是非や、バグ利用の是非など、主に公平性を保つことが競技性に必要みたいな風潮になっていますが。
 最初はゲームバランスも結構めちゃくちゃで、それよりも色んな技を使えたら面白いとか、銃で相手を狙って撃てるゲームがあったら面白いとか、横一列並べて消えたら面白いとか、面白さを表現するために作られたはずだと思います。

 なので、元々は競技のために作られていないものが、競技として遊びたい人が増えて行き、そして競技性のあるゲームとして多くの人に認められていく。
 これが、競技性は育つものじゃないかと思う理由です。

 各タイトルの競技性が育つだけでなく、例えば格ゲーならスト2みたいなゲームという競技性が育ち、スト2みたいなゲームを作ることで最初から競技性のある新作を作ることが出来るのではないかと思います。
 また、全く別のジャンルでもスコアアタックやタイムアタックなどという遊び方の競技性が育ち、例えマイナーなゲームでRTA走者が世界で一人しかいなかったとしても、競技として認められるのではないかと思います。

 ゲーム以外でも、これは完全に個人の想像なのですが。
 例えば野球は、たぶんですけど最初は、飛んできたボールをバットで打ったら気持ち良いという所から始まった気がします。
 なので、サッカーやバスケに比べるとルールが複雑だったりすると思います。
 また、ピッチャーの負担だけが大きいので連日の試合では別の人が投げることが多く、この歪さが昔からちょっと競技として疑問に思っていました。
 チームメンバーが順番に投げれば負担も少ないし、バレーのサーブだって毎回同じ人じゃないのでそっちのほうが良い気がしてしまいます。

 でもたぶん、そういう考えは違うんですよね。
 ピッチャーとして上手い人が投げた方が勝負が面白いとか、テレビでピッチャーの頑張る姿が心に残っているとか、そういう部分から野球を競技として認める人が増えて、ますます競技性が上がっているのではないかと思います。

 サッカーも、オフサイドについて昔から疑問に思っていました。
 基本的にキーパーとの一対一だと、シュートを打つ側が有利なんだそうです。
 なので、ゴール付近で待ち伏せしてロングパスからシュートを狙う、なんて冷めてしまうプレイを禁止するために、パスが出る前に相手のディフェンスより前で待ち伏せしてはいけません。

 しかし、シュートが入ったのにその前にオフサイドがあったかどうかの判定待ちになるなど、ルールが分かりにくい上に冷めた状況を作りやすいと思います。
 そもそも一対一でキーパーが不利なのが問題なので、ゴールの大きさやフィールドの大きさを変えたり、キーパーの人数を増やしたり、対策としては他にも色々あると思います。
 しかし、たぶんそれはサッカーという競技では無くなってしまうんでしょうね。
 多くの人の共通認識として認められたサッカーの競技性からすると、あり得ないことのはずです。
 それは、多くの人に愛されたスポーツだからこそ、競技として育ってきたからだと思います。

 こう考えると、格ゲーのキャラ差なんかも、そもそも競技のためにキャラ差の無いゲームとして作られたわけじゃないので、仕方のない事なのかと思います。
 ただし、なるべく公平であることが競技性が高いという共通認識が育っているので、最近はシビアな調整が必須になってきているのかなとも思います。
 初心者と上級者でキャラの強さが変わったりと難しい話ですが、そもそも完璧に公平な調整が必要なのではなく、共通認識の競技として公平感が必要と考えれば、多少は新たな調整方法などを考えられるかもしれない希望も出てきます。
 完璧な公平性よりは現実的かもしれない、程度ですけどね。


対戦はギャンブル

 これもかなーり個人的な意見になりますが、今までの話の流れからしてこうなってしまいます。

 競技性というのは技術や知識や経験を競うものという考え方からすると、対戦というのはその技術などを確認したり、大会はそれらの発表会のようなものと考えられます。
 なぜなら、全く競技性を楽しめない初心者でも、同じ初心者同士だったり、バトルロイヤルだったり、ランダム性の高い対戦だったりして、勝ったり負けたりという状況なら対戦で楽しめるからです。
 じゃあなぜ初心者が競技性の高いゲームで楽しみにくいかと言うと、単純に勝利というリターンがほとんど得られないからです。

 つまり、対戦そのものには競技性は無く、技術などを身に着けるという競技性の目指す目的として対戦がある、という形になります。
 もちろん、対戦経験を積むことでしか得られない技術や知識や経験がある、という部分では対戦にも競技性があるのですが、対戦で勝つという目的そのものには競技性は無いということになります。

 つまり、対戦じゃなくても競技をする意味を見出せる何かがあれば、それで問題ないわけです。
 だからこそ、対戦をしなくても技術さえ磨ければ楽しめるという人もごく稀に存在しますし、自分もそれに気付いてからあまり対戦をしなくてもそれなりに対戦ゲームが楽しめるようになりました。
 また、このように考えればランクマッチでの勝敗でストレスを感じることも少なくなり、勝率が落ちてでも新しい技術やキャラなどを試しやすくなると思います。

 じゃあ対戦には何があるのか?
 それは、ギャンブル性だと思います。
 初心者同士で実力の近い対戦なら、だいたい五分五分くらいの戦いで、勝利という期待しているリターンを得られたり得られなかったり、というギャンブル性にハマる可能性が高いです。

 じゃあ、上級者と初心者の戦いはどうなのか?
 それは、上級者の方が確率的に勝てる可能性が非常に高いという、あまり面白くはないギャンブル性があると思います。
 だいたい上級者が勝つだろうとは誰もが思うのですが、それでも実際に勝つかどうかはやってみないと分かりません。
 99.9%上級者が勝つでしょうが、上級者が手を抜いたところに初心者のめちゃくちゃな行動が刺さるとか、ネット対戦で急に上級者の回線が切れてしまうとか、可能性はゼロではありません。

 これは極端な考えなので、もっと近い実力で考えましょう。
 例えば大会で一番強い人と二番目に強い人との対戦で、一番強い人が勝つ確率が7割だとします。
 その日の調子の良し悪し、その場で不意に集中力を削がれるようなちょっとしたアクシデントが起こらないかどうか、そもそも相手とたまたま上手くかみ合うかどうかなど、どこまでも運の要素というのは消えません。
 それらを含めて、一番強い人が勝つ確率が7割くらいというのが妥当だとしたら、後はもう対戦してみないと結果は分かりません。
 対戦はギャンブルですが、その勝率を上げる行為が競技性なのだと思います。

 そもそもなんですが、同じ人間同士が同じ競技で実力を高めて競い合うので、どんな競技にしても勝つための難易度というのはそう変わらない気がします。
 もちろん、競技人口が多い方が上手い人が増えやすいので対戦難易度が上がるとか、初心者が入りにくいので難しい競技とかっていう話はあります。

 初心者と上級者の差が開きやすいというのは競技性のあるものは全て同じだと思いますが、出来ることがルールで限られているからこそ上級者同士の対戦は接戦になりやすいと思います。
 特にゲームは、プログラム上で決められた以上の事が出来ないので、例え知識や技量に大きな差があったとしても、見た目上では上級者の対戦が良い勝負になりやすい気がします。
 でもなんだかんだで、ちゃんと強い方が勝ちやすいとも思いますが、常に強い人が100%勝つというのは難しいと思います。

 その辺がギャンブル性なんじゃないかなあと思うので。
 なるべく試行回数を増やして運を減らしたいという風潮もあり、上級者の連戦ではなるべく対戦回数を増やしたい傾向が多いのだと思います。
 格ゲーやスマブラなどの大会でも、敗者復活戦を取り入れたダブルエリミネーションを取り入れ、なるべく運負けの比重を減らすことが多いです。

 これ、興行的に考えるなら、順当に実力者が勝ちやすいトーナメントは正直なところ微妙ですよね。
 それに、初見の人が決勝のルールが分からずに、勝負が終わったと思ったらまた対戦が始まってしまい、周りが盛り上がってる中で一人だけポカーンとするなんて状況も良くあります。
 とはいえ、一度ルールを知ってしまえば納得感はありますし、運要素を減らしたいという競技者視点を重視した方法なので、やっぱりゲームは遊ぶ人が中心となって育った文化と競技性なんだなあと思います。
 野球やサッカーと違って一戦一戦が短いので、対戦回数を増やしても大丈夫だろうという部分も影響してそうです。


なぜ対戦なのか?

 対戦はギャンブル性があると考える切っ掛けとして、岡田斗司夫さんの切り抜き動画がとても参考になりました。
 岡田さんがスポーツに対して、そのスポーツが上手い人を同じ場所に入れて起こる現象、というような表現をしていました。
 この、現象という考え方がとても腑に落ちました。
 岡田さんは運動が苦手な方なので、どうしても否定的な表現になってしまうので、スポーツが好きな人は切り抜きの閲覧には注意してください。
 ちなみに、上で書いたスマホ脳に関する話も、岡田さんの切り抜きで聞きました。

 つまり、勝敗は確率から起こる現象なのだとしたら、これはもうギャンブルなんじゃないかと。
 ただ、決してスポーツそのものがギャンブルなのではなく、スポーツの競技性を示す場としての対戦というギャンブル性を利用していると考えました。
 もちろん、ゲームの対戦についても同じ考えです。

 ゲームやスポーツなどの競技性を示す場さえあれば何でも良いはずですが、じゃあなぜ対戦なのか?
 というのを考えて行きます。

 まず先に、ギャンブル性以外の話からしますが。
 なぜ対戦が求められるのかと言うと、何度も同じことを繰り返して競技性を示す場として、対戦というのはとても都合が良いと考えました。
 スポーツなら毎日のようにリーグ戦をしないと興行としての収益を確保するのが難しいでしょう。
 ゲームでも、一人用のゲームだとクリアしたら終わってしまうので、二周目を遊ぶという人もいるでしょうが、やっぱり対戦という形の方が何度も楽しみやすいと思います。

 そして、次にギャンブル性に関する話です。
 どんなに競技としての技術などを身に着けても、対戦は結果を見るまで分からない。
 このギャンブル性を目的とする限り、いつまでも楽しめるはずです。

 さらに、ここが一番大きいと思っているのですが。
 勝敗というギャンブルを、実際に対戦せずに観戦している人も楽しめるという事です。
 スポーツならスポーツファン、ゲームなら動画勢という言い方をする場合もありますが。
 例えば7割勝てる人と3割しか勝てない人の対戦なら、どちらかを応援することで見てるだけでもその対戦というギャンブルに参加し、一喜一憂することが出来ます。
 勝ちにこだわる人は強い方を応援すれば良いし、弱い方のファンなら3割の勝率に賭けるしかないです。

 もちろん観戦に競技性はありませんが、競技性の中で勝率を上げる必要が無いので誰でも気軽に参加することができ、大衆を巻き込むことが出来ます。
 また、勝ちか負けかの結果しか無いので、例え競技の内容に詳しくないとしても、誰でも分かりやすいギャンブル性を楽しめるというのも大きな魅力です。

 スポーツなどで興行として収益を上げやすいから、という考え方も出来ますが。
 それよりも、プロはそのスポーツやゲームという競技性の上手さのプロであって、その競技性を収益化するプロでは無い事の方が大きそうです。
 もちろん、上手さ以外でもプロとしての振る舞いなども求められてはいますが、基本的に収益構造から考え収益手段に時間を注ぐ暇があったら、なるべくなら練習や対戦などに時間を当てたいはずです。
 このような感じで、大衆向けとしても、プロが収益化しやすい構造としても、分かりやすい対戦という形が好まれていると感じます。

 RTAなどのプロとしての活動が難しい競技でも、生配信でRTAを走るという形で、少しでも魅力を多くの人に伝えようというイベントをしたりしています。
 現状はそれで飯は食えないでしょうが、初見でも分かりやすいように解説者が丁寧に説明してくれたりと、やはり大衆に沿ったイベントを目指していたように感じました。


競技性のある対戦と、ギャンブル性に特化した対戦

 競技性のある対戦と言うのは今までの話の通り、技術や知識や経験を競い合う、言ってしまえばガチ勢の対戦です。
 しかし、対戦の勝率は競技性によって変化するものの、対戦結果はギャンブル性によって決まります。

 一方で、ギャンブル性に特化した対戦、つまり初心者向けの対戦もあります。
 バトルロイヤルだったり、ランダムで強力なアイテムが使えたり、そもそも実力差があったらハンデを付けたり、なるべく同じくらいの勝率になるようにしたものです。
 つまり、ほとんどの人が楽しめる対戦ゲームです。

 よく、同じくらいの実力で遊ぶのが楽しいという話を聞きます。
 つまり、お互いの勝率が五分五分で、どっちが勝つかが分からないというギャンブルとして面白い状態ということになります。

 このことを考えると、スポーツでもギャンブル性に特化した五分五分の対戦は、よくやると思います。
 今の学校は知りませんが、例えば自分が学校に行っていた時、サッカーの上手い二人がジャンケンをして、強い人から順にチームメンバーをクラスの中から選ぶという方法がありました。
 冷静に考えると実に能力主義的で結構残酷な方法だった気がしますが、ともかくこの方法だとお互いのチームの実力が五分五分に近づきます。
 卓球などをする場合でも、強さが違いすぎると何かしらのハンデを付けることも珍しくない気がしました。

 ここが、ゲームとスポーツの違いですね。
 ゲームでも、身内で楽しむ分には似たようなものですが。

 なんでゲームの対戦が難しい印象があるかと言うと、当然ながらネット対戦で自然と五分五分の環境が作りにくいからです。
 初心者とプロが同じ環境のランクマッチに放り込まれるというのも、もちろん理由のひとつではありますが。

 同じ初心者でも、初めてゲームに触ったレベルもいれば、アクションゲームは好きで対戦ゲームも始めてみた初心者、さらには他の対戦ゲーの上級者が始めてみた初心者、と様々です。
 しかも、ネット対戦ならハマれば毎日のように遊べるので、始めたばかりの初心者から数十時間遊んだ初心者へとあっという間に進化してしまいます。
 数十時間遊んだところでまだ初心者というのが、競技性の壁を感じてしまいます。
 それに対して、学校の体育や身内のゲームなんかは、普段はやらない人達での対戦がほとんどなので、競技性が低くてあまり実力に差ができにくいわけです。

 この話から分かることは。
 初心者は、ギャンブル性の高い五分五分に近い戦いを望んでいるということですが、ネット対戦でそれは叶いにくいという事です。
 なので、例えばバトルロイヤルだと前回の順位より上だと嬉しいですし、順位が低くても一部でも自分の意志でゲームを進められたというリターンも得やすいので、五分五分の勝ち負け以外の部分でのギャンブル性があるんだと思います。

 逆に、上級者は競技性が重視される、すなわち技術や知識や経験が重視される対戦を好みます。
 これらが全く介入出来ないランダム性なんかが好まれないのも納得です。
 逆に、初心者向けの対戦では、ランダム性は五分五分の勝負に近付けるために入れて良いと思います。

 個人的には、この二つの対戦を同じルールでやるのは、あんまり現実的ではない気がしてしまいます。
 だから、スマブラもアイテム有り乱闘と、アイテム無しタイマンで別れたんだと思っています。
 それに、無理に同じルールにしない方が、ネット対戦でのマッチングも分けられますし。

 タイマンでも、なんとか初見の人は初見に近い人とマッチングしやすくなったり、対戦中に細かくオートハンデや火力制限や逆転要素などを入れたり、そういうので五分五分の対戦は実現できないかなあと、ふわっと考えたりはします。
 とりあえずガチ勢用のマッチングと分ければ、多少は現実的になるかもしれません。
 対戦結果とは別のところで、上手く操作出来たのをスコアや評価で分かりやすく表示したりなどの上達を実感できる要素も、長く遊ぶための競技性としてストレスになりにくい程度に少し含められたら良いなと思います。
 ゲームとして上達を考えるなら、初見で勝率2~3割くらいの方が良いかもしれません。


駆け引きが無くても競技性のある対戦の可能性

 最後に、現実的にどうなのかは分かりませんが、可能性としての話をします。

 駆け引きが無くても競技性のある対戦、つまり技術や知識や経験だけを純粋に競うという対戦についての話です。
 なんでそんなことを考えたかと言うと、スポーツにはそういう競技があるからです。

 陸上競技や水泳などでは、駆け引きが無く、単純に記録を競うものが競技として成立しています。
 また、上の方でただ石を投げるだけでは競技性が低いという話をしましたが、砲丸やハンマーや槍を投げるものは競技として広く知られています。
 盤外戦術や心理的な駆け引きはあるかもしれませんが、基本的にはルールとして駆け引きが無いはずです。

 ゲームに例えるなら、スコアアタックやタイムアタックなどです。
 RTAのイベントでも、同じゲームを数人が同時に走ってタイムを競う、なんていうものもあります。

 大衆が遊ぶネット対戦として考えた場合は、味気が無いように感じるかもしれません。
 ただし、タイマンだとしても相手の攻撃などを受けることなく自分のやりたいプレイが可能だし、タイマンと全く同じルールでもそのままバトルロイヤルにしやすいです。
 なので、純粋に上級者が望むような競技性のある対戦なのに、人口の多くを占めるはずの初心者が対戦をやめにくい、そんな環境が実現できる可能性があるのではないかと少し思います。

 また、これは昔のネット環境の時代に考えたことなので、今や今後の時代にはもしかしたら合っていないかもしれませんが。
 例えば直近100人のリプレイデータと競って順位を出すことで、疑似的に対戦した気分にさせるということも可能です。
 これの利点は、マッチングの待ち時間もラグの影響も全くなく、人が少なくても常に快適な疑似対戦が出来るということです。

 これは、古(いにしえ)のニコニコ全盛期の時に、時間差で書き込まれたコメントによる一体感から発想を得た考えで、今でもSNS的な発想と言い張れることも出来るのですが。
 これで面白いゲームが出来るのかどうかは分かりませんし、今後ネット環境がさらに良くなったら時代遅れの発想なのかもしれませんが、何かしら可能性があるような気がします。

 他には、全く競技性が無いという訳ではなく、競技性が低い対戦というのについても考えてみます。
 それこそ、個人的に初心者向け神ゲーだと思っているテトリス99が、その位置付けだと思っています。
 この場合はちゃんとリアルタイムに対戦しないとそれっぽくないですが、まあでも仮に人の少ないゲームだったとしたら、直近のリプレイデータと対戦しても意外と何とか出来る気がします。

 元々テトリスというゲームで対戦をする前の予想として、駆け引きというよりは自分の技量を押し付け合うような、ダメージレース中心の対戦かどうか微妙なものなんじゃないかと思っていました。
 実際には思った以上には駆け引きが勝負に影響したり、下からせり上がるおじゃまブロックの処理が対戦に大きく影響したりと、単純なダメージレースという訳では無かったのですが。
 それでも格ゲーなどと比べたら、駆け引きよりも個人の技量の方が比重が高いように思います。
 そんなテトリスだからこそ、火力制限や攻撃タイミングを遅らすことで駆け引きの比重をさらに減らすという、テトリス99という発想が生まれたのかもしれません。

 このことから考えられることは、これも可能性の話なのですが。
 例えばRPGなどの対戦を考えた場合、直接的に戦闘による対戦という形が普通だと思いますが。
 RPGが好きな人は効率的な探索などが好きな人も多いと思うので、20~30分程度で探索できるダンジョンをいかに効率的にクリアするか、という対戦などもあり得るかもしれないです。
 リアルタイム対戦なら、バトルロイヤル形式でテトリス99程度に相手の探索を邪魔する攻撃要素があっても良いです。
 また、時間が長めの対戦になることを考えると、直近100人のリプレイデータと競うなどの方が、相手の切断なども気にせず快適に遊べるかもしれませんし、なんなら自分が切断してしまっても誰にも迷惑をかけません。

 これらはあくまで可能性として考えた話ですが。
 駆け引きと競技性という観点から考えることで、初心者、中級者、上級者それぞれに適切な面白さの対戦を考えられるかもしれません。
 また、思いもよらなかった対戦ゲームを思い付く切っ掛けとしても、こういう考え方が参考になれば嬉しいです。


おわりに

 なんか色々と書きましたが、今回の話で自分が一番言いたかったことは、対戦はギャンブル性があるって話ですね。
 この考え方で、自分自身の対戦ゲーム対する考え方が大きく変わりました。

 元々、ゲームと言うのは数千円で何十時間も遊べるというコスパの良い娯楽という話がありますが、対戦ゲームは数千円で何百時間や何千時間も遊べるコスパ強すぎなゲームだと思っていました。
 なので、あらゆるゲームに対戦要素を入れるべき、とかってちょっと頭の固い考え方をしていた時期が昔ありました。

 今のネット時代だと無料コンテンツやサブスクなどがあるので、あんまりこういうコスパ重視の考え方は時代錯誤かもしれませんけどね。
 むしろその逆で、短く終わるゲームの価値が跳ね上がったような気もします。

 とはいえ、自分が好きなゲームを長く遊びたいという考え方自体は間違っていないとは思っています。 
 だからソシャゲは毎日遊ぶようなゲームになっていると思うのですが、ネットを普通の人も当たり前に使えるようになった今の時代、対戦ゲームでずっと好きなゲームを続けるというのも時代に合っている気がします。
 むしろ、自分は対戦でずっと遊びたい側の人間ですね。
 そのために、徹底的に初心者が始めやすい対戦が必要だと思うし、だからと言ってずっと続ける上級者の楽しみを軽視してもいけない、そう思っています。

 また、対戦という目標があるからこそ、実際に対戦をせずに色んな技術や知識を身に着けることにも意味があります。
 対戦はギャンブルだという考え方をした時に、この部分を強く意識するようになりました。

 目の前の勝敗に一喜一憂するのが面白いのは当然なのですが、それによるストレスも計り知れないものがあり、対戦ゲームで様々な不満を感じる人は多いと思います。
 これは、ゲームがどうあるべきかという今までの話とは違って、自分自身が対戦ゲームとどう付き合うかという話なのですが。

 例えば、対戦がギャンブルなのだと気付いてから、ランクマッチでの勝率なんて本当にどうでもよくなりました。
 むしろ適切な勝率じゃないと、適切なマッチングが出来ません。
 それよりも競技性を考えるなら、自分の技術や知識や経験の方が大事なので、目の前の勝敗なんかを気にしてる暇があったら、新しいキャラや戦術なんかを試していく方がよっぽど価値があります。
 アクション性のあるゲームでキーコンフィグやコンローラーを変えるなども、慣れるまでは半年とか一年とか普段の実力が出せなくなるのですが、結構気軽に出来るようになりました。

 また、こんな感じにランクマッチの勝率を気にせず色々試すというのは、実はプロレベルの人たちは自然と出来ている事だったりします。
 そもそも誰と当たるか分からない環境だと、プロレベルの人たちが基本的に勝ちまくるので、勝率を気にするストレスが他の人より少ないというのもあります。
 そうなると、目の前の勝敗へのこだわりが少なくなり、そもそも同じ実力同士の対戦じゃないと実戦レベルの練習という形にもならないので、自然と色々と試す場所としてランクマッチを利用することが多くなるのではないかと思います。

 だから、配信で雑談しながらだらだら対戦しているように見えて、どんどん強くなっているのだと思います。
 その雑談も、色々と試したり知識を整理したりなどという内容が多いような気がします。

 もちろん、ランクマッチでの勝率を気にする多くの人は、今できる勝率の高い方法の全てを用いたくなると思います。
 しかし、それは今勝ちたいという、ギャンブル性の楽しさなんだと思います。
 もちろんそれもゲームの楽しみ方のひとつですし、だからこそ対戦ゲームを続ける理由にもなります。
 ですが、強くなる方を優先した方が将来的に楽しさが続く気がしますので、そういう視点もあれば対戦ゲームの楽しさが増えるかなと思います。

 目の前の勝負にだけ集中することも、大事ではありますけどね。
 そういうのに慣れないと、たぶんプロの大会で勝つことは難しい気がします。
 自分は大会とかは出たことがありませんが、今勝つための手段の全てを出し切れるのも対戦の楽しさですよね。

 その時面白いと思ったことを全力で遊ぶのが大事だと思いますが、同じ遊び方で面白さが減ってきたと思ったら色々試すのも良いかと思います。
 疲れてる時なんかは手癖になった技術と経験だけを頼りに、なんも考えずに対戦のギャンブル性を楽しむのもアリです。
 そういう幅広い楽しみ方が出来るのが、対戦ゲームの魅力かなと。

 という感じで対戦について色々書きましたが、ここまでありがとうございました。

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