警察が好き～

　パトカーが来たら、目をそらして、俯く。

　以前、警察官は不審者の何気ない行動に注目して職質をしているという話を聞いたことがあった。テレビとかでも、通行人がすこし目をそらしただけで、その人を職質して、違法薬物を発見するみたいな番組がやっていた。ぼくは、その職人技に憧れを抱くと同時に、なんとかその職人技を不発に終わらせてやりたいという陳腐な考えを持っていたことがあって、一時期、パトカーを見かければ、わざと怪しそうに振舞うということをやっていた。

　バックを急に持ち替えてみたり、急な方向転換で直角に角を曲がってみたり、小声で電話をしているフリをしてみたり。ありとあらゆる方法を試してはみたが、結局のところ見せかけの怪しさによって職質を受けることはなかった。

　しかし昨日、ついに初めて警察官に呼び止められた。
　金髪が悪かったのだろうか。自転車を盗難していないかまで疑われた。
　そしてぼくはバイトに遅刻した。まったくもって、望んでいた形ではない。

　金輪際、怪しく振舞うのはやめにする。