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私のライオン(即興小説トレーニング)
円形闘技場の中にライオンが入場し、観客が喝采する。
ライオンは中心に立つ棒に縛られた私を見た。大きな瞳だ。私は彼に微笑みかけた。
何も恐ろしくはなかった。彼が私に危害を加えないのが分かるからだ。
私は幼い頃から動物の気持ちが分かり、言うことを聞かせる事ができた。大人たちに訝しまれたため、やがてそれを隠すようになったが。私からすれば、動物の心さえわからない彼らのほうが変に思えた。誰も同じ感覚を
意外!それは投資(即興小説トレーニング)
私は彼氏と別れた事を口実に、仕事をやめ、酒を浴びるように飲み始めた。引き篭もって、酒を買うために徒歩十秒のコンビニにだけ出かける毎日。
本当は大好きな酒だったが、彼は酒好きな女より酒に弱く、他にも全体的に弱い守ってあげたい系の女の子が好きだったのでそれを演じていたけど、我慢する必要はもうなかった。振られたから結局無駄だったし。
「最近水代わりに飲むんだよね」
ある日泊まりに来た友達に、飲み干し
お題忘れ(即興小説トレーニング)
所属していた隊での木剣の稽古で、初めて私があいつに勝った時の話だ。
負けた、と言って地面に倒れたあいつに、私は怒った。
「本気でやってないだろ、お前が俺に負ける筈ない。俺はこんな勝利認めない」
今まで好敵手と定めたあいつに勝つために鍛錬に励んで来たのに、その日は全くもって手応えがなく、俺を勝たせる為に手加減したとしか思えなかった。こんな勝利は全く喜ばしくない。
あいつは困ったように笑ってい
冬籠(第27回ゆきのまち幻想文学賞へ応募、加筆修正)
高い山の傾斜にあるこの村では今、どっしりと降り積もった雪が地面を固く閉ざしております。僕達村人は一日の多くを家の中で過ごし、火をおこした囲炉裏の前に集まる冬篭の時期を迎えておりました。近年国中で広まった文明開化の恩恵はまだここに届かず、僕達は貧しい暮らしのままです。
数えで十三になる僕は、夏に流行った病で家族をみな亡くし、同じ村に住む叔父夫婦の元に住まわせて貰っておりました。
僕は彼らの迷惑になら