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【おはなし】台風のまんなかで

今回は台風のお話です


盆休みの日、大樹(たいじゅ)は家族と妻の実家に帰省していました。涼しい風が心地よく吹く中、のんびりとした時が流れていましたが、突如として天気が崩れる知らせが届きました。台風が迫っているとのこと。雨戸を閉め、家族は一日家の中に閉じこもることになりました。せっかく県外に遠出してきてるのにです。

最初は家族で楽しい時間を過ごそうと、おしゃべりしたり、YouTubeを見たり、お絵かき対決をしたり、YouTubeを見たり、ボードゲームを取り出したり、YouTubeを見たりYouTubeを見たりしていましたが、時間が進むにつれて退屈さが募りました。特に子供たちは元気いっぱいで、外で遊びたいと騒ぎ立てます。

「パパ、どうしてこんなに雨が降ってるの?」

子供の質問に、大樹は微笑みながら説明しました。
「これは台風っていう大きな大きな雨雲のかたまりなんだよ。それに風もとっても強いんだ。だから外に出るのはちょっと難しいんだ。」

しばらくして、義母がゆっくりと部屋に入ってきました。彼女は窓の外を見つめながら、言葉を紡ぎました。
「みんな、暇でしょう?でも、誰も悪くないわ。台風のせいだから。」

その言葉に、家族はうなずきます。
たしかに台風のせいで近隣の施設は閉まってます。台風のせいでスーパーはどこも臨時休業。台風のせいでもちろん公園にも行けません。台風のせいで外出ができないのは仕方のないことで、誰かの責任ではありません。
しかし、大樹の心には微妙な感情が交錯していました。

雨が窓を叩く音と、義母の言葉が大樹の考えを巡らせます。台風のせいで暇なのは確かだけれど、台風の発生は気候変動にも影響されていることを知っているからです。

気候変動による偏西風の変動は、過去数十年、数百年にわたる人間の活動によって引き起こされたものと大樹は確信していました。大樹は窓の外を見つめ、風の音を聞きながら、その現実に向き合います。台風のせいではあるけれど、その背後には人間の活動、人類の傲慢さの影響がある。大樹の心には複雑な感情が広がります。

「パパ、何か楽しいこと考えてる?」子供たちの声が大樹を現実に引き戻します。

「そうだね、みんなで何か楽しいことをしよう。外に出るのは難しいけれど、家の中でも楽しいことはたくさんあるよ。」

大樹は子供たちに微笑みながら、窓の外の嵐とは裏腹に、家族は共に過ごす中で新たな楽しみを見つけていくのでした。

そう、空調の効いた快適な部屋の中で。

おしまい⭐️

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