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ポーターの3つの基本戦略を知り、事業戦略の方向性を定めてみる

ハーバード大学のマイケルポーター教授が提唱した「5F」に加え、この「ポーターの基本戦略」があります。この理論では企業が競争優位を築くためには3つの基本的な戦略パターンがあるとしています。
立ち位置によって異なる望ましい戦略の方向性を「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」に分けることにより戦略の方向性を検討します。

ポーターの基本戦略とは!?

1つ目は「コスト面」で競争相手に勝つための「コスト・リーダーシップ戦略」
2つ目は低コストではなく、ユニークな価値を提供することで、差別化する「差別化戦略」
3つめは幅広いターゲットを相手にするのではなく狭いターゲットに特化する「集中戦略」

ポーターの基本戦略フレームワークでは、横軸で「競争優位の源泉」を、「低コスト」と「差別化」に区切り、
縦軸は「戦略ターゲットの幅」が広いか、狭いかで区切っています。

戦略の方向性を検討するためのフレームワークです。
この3つの基本戦略は「経営環境分析」を踏まえ、自社がとるべき「戦略の方向性」を定めるときに使います。

また
「どっちつかずの戦略になっていないか確認する時」
「競合の戦略の方向性を理解するとき」

にも使うことができます。

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①:コスト・リーダーシップ戦略

「コスト・リーダーシップ戦略」とは、幅広いターゲットを狙いつつ、コスト面で競争相手に勝つと言う戦略です。
「規模の経済性」や「経験曲線」を通じて最も低コストを実現している業界で、ナンバーワンの企業がこの戦略をとることが多いです。
例えばファーストフードや家電販売のナンバーワン企業がこれに当てはまり、コスト・リーダーシップで成功する条件は業界をリードする規模を持ち、競合より大きな生産量を確保することになります。

しかし負けるリスクもあります。

・競合が新しい大量生産方法を考えついた場合
・低価格だけでは顧客を引きつけられないほど差別化で負けた場合
・コスト集中戦略に敗れた場合
など
このようにコスト・リーダーシップ戦略とは、同じ商品やサービスを提供するのなら、1番低コストで提供できる方が勝つ、という考え方です。

②:差別化戦略

差別化戦略とは、幅広いターゲットを狙いつつも低コストではなく、ユニークな付加価値を提供することで競合との差別化を目指す戦略です。

付加価値とは、例えば「製品品質」「独自技術」「品揃え」「流通チャネル」「顧客サービス」などを指し、コストでトップになれない企業は、ほとんどがこの戦略を採用しています。
またコストでトップを狙わず最初から、この戦略を取る企業もあります。
差別化で成功する条件は、「顧客にとって価値が認められ」、「競合が簡単に真似できないようにする」ことです。

しかしこちらも負けるリスクはあります。

・商品やサービスが真似された場合
・顧客のニーズをしなった場合
・同じような商品やサービスに比べてコストがかかりすぎた場合
・競合が差別化集中戦略を実現する場合
など
このように「差別化戦略」とは、コストが高くてもそれ以上に顧客が対価を払いたくなるような価値があるものを提供できれば勝てる。と言う考え方です。

③:集中戦略

集中戦略は、切り口が異なり狭いターゲットに経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を集中し、局所的ナンバーワン、可能ならばオンリーワンを目指す戦略です。
ニッチ戦略と意味合いは同じです。狭いターゲットとは「地域軸」「顧客軸」「製品軸」などで特定されます。集中戦略は、競争優位の源泉によって「コスト集中」と「差別化集中」に分けられます。

「コスト集中」は、特定の市場でコスト優位に立ち競争に勝つ戦略
「差別化集中」は、特定の市場で差別化して優位に立ち競争に勝つ戦略

集中戦略で成功する条件は、ターゲットとなる市場絞り込み、その市場で自社の強みを活かし、競合と比べて、持続的な優位を築くことです。
しかしこちらも当然ながら負けるリスクはあります。

・市場がなくなる、または小さくなる場合
・市場がより細分化された場合
・絞り込むメリットよりも規模のメリットが大きくなり競合がコストリーダーシップ、または差別化戦略を実現してしまうといった場合
など

このように競争の範囲が狭いターゲットに的を絞り経営資源を集中的に投入して競争に勝つのが、集中戦略です。

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事例:モスバーガー

モスバーガーの経営戦略は、マクドナルドに対する差別化戦略の成功事例として知られます。差別化のポイントは、

1.メニューの数・価格設定
2.店舗ディスプレイ
の2つにまとめることができます。

1.メニューの数・価格設定

マクドナルドは、メニューの14種類と数を少なめに抑えています。

ハンバーガーを提供するためのオペレーションが楽になり、価格は低く設定されます。マクドナルドに対してモスバーガーは、メニューの数はマクドナルドの約倍、31種類ほどもあります。

メニュー数の増加により、顧客の多様な好みに応えることはできますが、その分価格は高くなります。

1990年代後半に、マクドナルドに端を発したハンバーガーの値下げ競争が勃発しました。その際に、競合他社が次々と値下げに走ったなか、モスバーガーは価格を維持したことで知られています。

2.店舗ディスプレイ

マクドナルドの店舗ディスプレイは、とくに繁華街や駅前の店舗などでは、顧客の回転率を上げることを狙いとしているといわれます。

対してモスバーガーは、自然な色合いを使用したり観葉植物を設置したりすることにより、居心地が良く、長時間滞在してもくつろげる店舗作りをしているといわれます。

モスバーガーは、業界の強者であるマクドナルドに対し、高品質・高価格路線を取る差別化戦略を採用し、独自の地位を築くことに成功しているといえるでしょう。

注意点について考えてみる

1点目:ある戦略が有効であったとしても経営環境が変われば有効性をしなうリスクがあること
差別化戦略をとっていたとしても、技術の進歩などにより、差別化の度合いが弱まることも考えられます。常に具体的な競合と自社の強みの両方を意識した上で、顧客に価値があり、なおかつ競合とは違う戦略を考えることが重要です。

2点目:ある戦略をとることにしたからといって、他の戦略をなおざりにして良いと言うことにはならない
差別化戦略をとった企業であっても、企業努力としてのコストダウンはある程度行わないと市場での競争力は持てません。

3点目:3つの基本戦略は有効である反面、トレードオフを過大に評価して企業の挑戦心を失わせる恐れがある
ポーターは「コスト・リーダーシップ戦略」と「差別化戦略」を両立するのは難しいため、どちらかに明確に絞る方が良いと指摘しています。
しかしこの両者が本当に両立しないかと言えばそんな事はありません。両立は難しいものの、だからこそ両立できたときには業界で極めて強いポジションを得ることが可能なのです。

ポーターの3つの基本戦略

①「戦略の有効性があるか」
②「他の戦略への目配をしているか」
③「コストリーダーシップと差別化戦略の両立は可能」

を意識して活用してくことが大切になってきます。

ポーターの基本戦略は、「自社の戦略立案」や、「競合の戦略」を分析するために用いることができます。

3つの基本戦略

①:コスト面で競争相手に勝つ、コストリーダーシップ戦略
②:低コストではなくユニークな価値を提供することで差別化する差別化戦略
③:幅広いターゲットを相手にするのではなく、狭いターゲットに特化する集中戦略

しかし、どの戦略を採用したとしても競争優位性が永遠に続くわけではありません。リスクとしてあげてように、ある戦略が有効だったとしても経営環境が変われば有効性を失ってしまいます。企業経営を取り巻く環境が変化すると言うことを前提に新しい競争優位性とは何か、を常に考えながら活用していくことが求められてきていると感じます。
この内容は何かのきっかけになれば幸いです!


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