まもなく始まる社会保険の適用拡大

2024年10月から、一定の規模の企業に勤める特定のパート・アルバイトの方には、社会保険の適用となります。

社会保険とは?

今回対象となる社会保険とは、健康保険と厚生年金保険のことです。
保険料を企業と個人が折半して負担して納付します。
個人が直接納付するのではなく給与から天引きされ、企業が天引きした分と企業負担分を合わせて納付しています。

対象者は?

従業員51人以上の企業にお勤めの以下の条件に全て当てはまるパート・アルバイトの方

条件は?

以下の①〜④の全ての条件を満たす方
① 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方
② 所定内賃金が月88,000円以上の方
     (基本給、諸手当は含み、割増賃金や賞与を除きます)
③2ヶ月を超える雇用の見込みがある方
④学生ではない方(休学や夜間学生は加入対象です)
ひとつでも条件を満たさなければ対象になりません。

現在の給与からいくら引かれるのか?

健康保険料や厚生年金保険料は、給与を一定の基準ごとに区切った標準報酬に保険料率をかけて算出します。
健康保険料は企業が属する健康保険組合や都道府県によって異なりますが、
一例として、東京都では9.98%(企業と折半し、4.99%)
厚生年金保険料は働く人一律で18.3%(企業と折半し、9.15%)です

例)時給1113円×週20h×4週=89040円 の場合
標準報酬額は88000円
→健康保険料は88000×4.99%=4391円
→厚生年金保険料は88000円×9.15%=8052円
社会保険トータルで12443円が天引きされます
(このほかに雇用保険料等が引かれる場合がありますが今回は割愛)

メリット

厚生年金を受け取れる

パート・アルバイトの方には現在、国民年金保険に加入している方がいるかと思いますが、今回の適用拡大で、厚生年金に加入することになります。

◯厚生年金に加入することで、年金のいわゆる二階建て部分が上乗せされます
例)
厚生年金保険料(月の賃金88000円の場合)8052円を毎月納めると、、、
20年納めると、月8900円
10年納めると、月4400円
   1年納めると、月440円
が65歳から一生涯、国民年金額に上乗せされることになります。

◯障害年金の保障が広がる
厚生年金加入中の障害には、障害基礎年金に加えて、障害厚生年金が上乗せされます。
また、障害基礎年金にはない、3級での給付や障害手当金が受けられることがあります。

◯遺族年金も
遺族厚生年金が支給されることがあります

扶養されてるときは受けられなかった健康保険の給付

◯傷病手当金
業務外の病気やケガで休んだとき、最初の3日間を除き、働けずに給与が支給されない期間に給付される。(休んだ期間を通算して1年6ヶ月分まで)
支給額=だいたい給与の2/3程度の額
◯出産手当金
出産のために働けない、産前42日間、産後56日間に給与が支給されない期間に給付される
支給額=だいたい給与の2/3程度の額

デメリット

〇手取りが減ってしまう
 新たに給与から天引きされるものが増えるわけですから、手取りが減ってしまうことは避けられません。
〇家族の会社への影響
 家族の会社の健康保険の扶養になっていることで、扶養手当などが支給されていた場合に、受けれれなくなるなどの影響があることがあります。

130万円の壁試算

従業員100人以下の企業にお勤めの方は、130万円を超えると自ら国民健康保険と国民年金を払う必要がありました。
それが今回従業員51人以上の企業は社会保険に加入できることになったので、

例)年収130万円のとき
適用拡大前
国民健康保険料(東京都R6年)年間 約102000円
国民年金保険料        年間  203760円
手取りはおよそ994240円(他、所得税住民税等が控除)
適用拡大後
健康保険料(東京都R6年)年間 約 66000円
厚生年金保険料      年間 約120000円
手取りはおよそ1114000円(他、所得税住民税等が控除)


疑問

130万未満だからセーフ?

健康保険の被扶養者の認定基準となる年収130万円未満であっても、
今回の適用拡大の条件の4つをすべて満たした場合は、自ら健康保険に加入することとなります。

従業員51人以上とは

厚生年金の被保険者の総数が1年のうち6月以上51人以上となる方が見込まれる企業
(法人事業所は同一法人番号の全ての適用事業所の被保険者の総数です)


月8.8万に含まれるもの

所定内給与には基本給と諸手当が含まれますが、次の手当は除きます
・臨時に支払われるもの(結婚手当等)
・1月を超えるごとに支払われるもの(賞与等)
・残業代、休日・深夜労働に対する割増賃金
・精皆勤手当、通勤手当、家族手当

雇用契約書が月8.8万以下で記載していたらセーフ?

連続する2カ月に、業務の都合により恒常的に労働時間が増加して、月8.8万を以上となることが続き、その後も続くことが見込まれる場合は、月8.8万以上となった月の3か月目に被保険者の資格を取得します。
この8.8万以上かどうかの判定には残業代等が含まれてしまいます。

同時に2か所で要件を満たしたときは?

同時に2か所の事業所で要件を満たしたときには、どちらかの事業所を選択し、届け出ます。被保険者資格を満たすかどうかは、各事業所単位で判断し、合算などはしません。


まとめ

すでに扶養を外れている等、自ら国民年金、国民健康保険を支払っている方にとっては、保険料を会社に半分支払ってもらうことができ、将来の保障が手厚くなるので、メリットが多いかと思います。
一方で、130万円未満の扶養内で働いていた方にとっては、自ら健康保険料を支払わなければならなくなったりデメリットもありますが、130万円の壁を気にせずに働くことができ、活躍の幅を狭める必要がなくなることはメリットといえるのではないでしょうか。




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