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ショートショートストーリー#19「万引きGメン」

万引き。響きは軽く聞こえるかもしれないが、これは立派な犯罪であり、言い方を変えれば「窃盗」という犯罪名である。

しかし、数多くの万引き犯を取り締まっているのは、実は警察官ではない。

スーパーやショッピングモールに常におり、万引き専門の警備員。それが「万引きGメン」である。

今日はそんな「万引きGメン」をテーマにしたストーリーである。

自分はとあるスーパーに派遣された警備員であり、別名「万引きGメン」として日々、勤務を行っている。

年間何万件も起こっている窃盗罪。それが万引きであり、このスーパーも何度か万引きの被害にあっている。

元々別のスーパーで「Gメン」をしていたが、先週から急遽、このスーパーに配属となった。

この仕事で大切なのは、お客さんの目や行動を常に監視することである。

万引きをする人の大体の行動としては、まず周りを見回し、不審と思われないことを確認してから、品物を盗む。

中には一度素通りして、店内をもう一周してから犯行に及ぶ犯人もいるため、不審な客を記憶する能力も必要である。

大体の犯人は初犯が多いが、常習犯もごく稀にいるため、あまり油断が出来ない仕事だ。

今日もお客さんに扮して警備をしていると、制服を着て、小さい赤ちゃんが乗っているベビーカーを押す女子高生が周りを見渡しながら一つの商品を狙っていた。

恐らくそのベビーカーの子供は兄弟だろう。そう思いながらも、女子高生の不審な行動を見て判断した。

完全にビンゴである。

しかし、自分たちの仕事をしては犯人をあえて店内では見過ごし、支払いを済ませていない商品を持ったまま店内を出た時、確保する。それが自分たちの基本ルールである。

しばらく女子高生を監視していると、はやりその女子高生は粉ミルクを一つカバンに入れた。

自分はあえて女子高生を泳がすことにして、やはりそのまま店内を出ようとしたため、玄関近くで確保した。

女子高生は自分が誰かと察したのか、すぐにバックの中から粉ミルクを渡して立ち去ろうとする。

しかし、ここで見過ごすわけにもいかないため、女子高生の手を掴んでから

「これ、犯罪だから」

と重めの声で言い放ち、ベビーカーの赤ちゃんと一緒に裏の事務室へと連れて行く。

事務室では、スーパーの店長と話し合いをしてから、しばらくして警察を呼ぶことにした。

警察が来るまで少しばかり時間があるため、自分は女子高生に何故万引きをしたのかを聞いてみることにした。

大体の犯人がよく使う言葉は「出来心」「ダメなのはわかっていた」このセットである。

しかし、これは立派な犯罪なため、同情する価値はない。

だが先ほどから女子高生は一言も喋ることすらしない。

大体の犯人は何も喋らないが、この女子高生だけは何故だか不穏な空気を察したたため、自分は一言。

「食事に困っているのか?」

何故この言葉を投げかけたというと、その子のバックからかすかに出ている母子手帳であった。

恐らくこの女子高生は未成年ながら、子供を産んだのだろう。ベビーカーにいる赤ちゃんは兄弟ではなく、実子である。

それに女子高生の家庭はあまり裕福ではなく、そのため粉ミルクを盗み、その子に飲ませようとしたのだろうと推理した。

すると女子高生は泣き出してから、正直に全てを打ち明けた。

やはり自分の推理通りだったため、自分は

「いいか?万引きは犯罪だ。これだけはわかりなさい。だが、俺は鬼じゃない。これから行くぞ」

そう言って店長に事情を説明してから、女子高生を連れて家庭支援センターに連れていくことにした。

万引きも犯罪だが、何より思ったのが、母子の安全である。

そのうえでの行動だった。

~終~

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