見出し画像

ショートショートストーリー#18「選挙活動」

自分は、衆議院議員を目指している一人の男である。

自分は今、選挙カーの上に立ち、必死に国民に向けて演説をしている。

父が元内閣官房長官を務めており、もし当選すればいわゆる2世議員の一人が誕生するということだ。

父は結構国民からは好かれていた人物であり、総理のサポートにも回っていたため、この数十年で最高の官房長官という肩書ができるほどであった。

自分も父の跡を継ぐために、この選挙に立候補を決意したのだ。

そして、この国を守り、そして暮らしやすい国を形成しているために、いずれは内閣総理大臣ではなく、父と同じの内閣官房長官に就任したいという野望があった。

官房長官というのは、かなり忙しいポジションだとは聞いた。総理と外務大臣や財務大臣と言った国務大臣の調整役や、平日の二回に分けての定例会見。そしてまれに野党との調整役も組まなければならないのだ。

父からは、甘い世界ではないぞという言葉を貰ったが、自分は必ず成し遂げると伝えてから、今、この選挙カーに立っている。

父は既に政界を引退しているが、今回は父親の立場として、支持を表明してくれており、昨日の選挙運動の際には、ゲストで出てくれたほどである。

自分が所属を表明している保守政党は、一番の政策に防衛改正法案の作成・可決を主に表明している。

自分もその案には賛成の立場であるため、この国がより良い未来に成長するためには、通らなければいけない道と思っているため、選挙運動では、そのことを中心に話をした。

他国からの侵略・そしてミサイル・核問題にどう向き合っていくのか。

そしてこの国の防衛・安全をどう保障するのかを必死に訴えた。

上からよく聞いてくれている国民の様子をうかがえるため、一人一人の表情を観察しながらも、頭の中で必死に試行錯誤していた。

今訴えた話に、あまり興味の湧かない人・「そうだ!」と政策に賛成してくれる人・それは違うと思っている人。

色々な表情を見ることができるが、自分は政策に反対の人は排除するのではなく、その人たちも納得し、賛成してくれるように気持ちを動かせるのが、自分たちの仕事である。

そのため、いつも行っているのは、少し世間話を含めてのトークをしてから本題に入る手法である。

いかにたくさんの人に選挙に行ってもらうかを重点的に考えると、トークからの本題の方が聞きやすい面があるかもしれないし、若者に合わせた話をすると、若者の支持率も上げることができる。

この手法はかなり好評であり、今ではこの通り、大勢の国民の前で演説をすることができる。

こんな嬉しいことはないと思い、選挙当日まで気長に待つことができた。

その後、選挙の結果は当然・・・当選である。

~終~


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?