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ショートショートストーリー#33「ポイントカード」

都会のとあるバーには、二人のサラリーマンが座っている。一人は刻々と酒を飲んでおり、一人は完全に寝ている。

今日はこの寝ている後輩が、飲みに誘ってきて、こんなにもオシャレなバーを紹介してくれたのだが、まさか俺より先に寝るなんて想像もしてなかった。

一体どうしたらいいのだろうかと思い、一人の若い店員に話しかけた。

「こいつ置いていってもいいか?」

しかし答えはNOだった。

確かにこのオシャレなバーに一人寝ている男を残して帰るのも気が引けるし、だからと言って酒も飲まずにここにいるわけにもいかない。

流石にさっきからビールを何杯か頼んでいるが、もう飲み飽きたし、早く家に帰って休みたい。

しかも、明日は子供たちを連れてテーマパークに行く約束もしている。それがまた遠くて、朝早くに出ないと間に合わないのだ。

時間を見ると既に十二時を回ろうとしていた。タクシーを使ったとしても一時間はかかってしまう。

〈タイミングが悪ぃなぁ〉

そう思いつつも、必死に寝ている後輩の体を揺さぶりながら起こそうとした。だが、どれだけ深い眠りをしているのか、全く目を覚まさなかった。

仕方ない、とりあえず金だけは払っておくか。その後にゆっくり起こして帰ることにしよう。

そう思い、近くのレジで先に清算だけすることにした。

若い男性の店員が

「ポイントカードはありますか?」

と聞いてきた。意外にもそのバーは、全国に流通しているポイントカードが使えるため、俺は内心驚きながらも、そのポイントカードを出そうとした。

すると、隣にいつの間にか寝ていた後輩が起きており、そっとポイントカードを店員に差し出した。

何もただ黙ったまま、ポイントカードを店員から戻されると、財布にしまってから、俺に

「すいません。先に失礼します、ごちそうさんです」

と言って店を後にした。

既に清算は終わっていたため、ただレジに立っているわけにもいかずに、俺も準備をしてから店から出ることにした。

俺はあいつの謎の行動に、一瞬理解が出来なかったが、よくよく考えたら、払ってもないあいつがなんでポイントだけを貰って帰るんだ。

あいつはただ得しかしてないじゃないか。

そう思った瞬間に、怒りが爆発しそうになってしまった。

不機嫌のままタクシーに乗り、行き先を運転手に伝えてから、しばらく走っていると、あまりにも感情が爆発しそうになってしまい

「金払えよバカ野郎!!」

運転手は驚き、車内に気まずい雰囲気が流れた。

〈言う場所間違えたな・・・〉

~終~

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