見出し画像

ショートショートストーリー#35「公園での再会part1」

俺は四十代を日々楽しんでいる一人のサラリーマンだ。

普段は会社で営業部長をしており、取引や営業活動など、仕事としては大変だが、それほど裕福な生活をしている。

しかし、俺には昔一人の愛する女性がいた。

その女性とはたまたま知り合いのバーで出会い、そのまま交際・結婚へと発展したのだが、お互いが会社のかなり重要な役職を務めていたため、すれ違いとなり、結婚三年目で離婚届けにハンコを押した。

そこから、もう二年は経つが、未だに彼女のことを忘れたことはない。

今は元気にしているのだろうか。幸せな日々を送れているのだろうか。そんなことが頭に過りながらも、今日は公園で一人コンビニ弁当を片手に、ベンチで食事をしていた。

すると、近くから自分を呼ぶ声が聞こえた。

ふと目線を向けると、そこには前の妻である〈百合子〉が立っており、こちらを微笑みながらも見ていた。

「百合子、なんでここに」

どうやら、この近くにお得意様の会社があるらしく、そこに用事があったため、この近辺を訪れていたのだと言う。

こんな偶然があってもいいものだろうか。いや、これは偶然ではない、奇跡だ。

最近まで百合子のことを頭に過りながらも生活をしている矢先に、こんな奇跡の再会が訪れた。

これは嬉しいと思いながらも

「元気してた?」

と聞くと、百合子は微笑みながらも頷いた。

そこからしばらくベンチで隣同士になりながら、世間話をし始めた。

どうやら、離婚したときから彼女は独身であり、彼氏も作らなかったと言う。

彼女はとても優しく、とても社交的な女性でもあるため、こんなことを言うのもあれだが、既に彼氏は出来ているとばかり思い込んでいた。

だが、彼女も彼女で仕事が忙しく、あまり恋をしている暇もなかったのだが、最近になり、経理部長から出世をしたらしく、昔みたいにかなり忙しくはなくなったため、今は再び恋をしてみようと考えていると話してくれた。

それを笑顔で話す彼女を横で見ながらも、俺はついポロリとこういった。

「やり直さないか?」

それを聞いた彼女は、驚きながらもこちらを見た。

「俺さ、ずっと百合子のことが心配でさ、ちゃんと食べているのだろうか、ちゃんと寝ているだろうか。あの時はお互い忙しくて、ほぼ楽しい生活なんて出来なかった。こんなこと言うのもバカかもしれないけど、俺、百合子のことが忘れられなくてさ。いつかまた会えると思っていた矢先だったんだよね」

だが、こんなことを言ったところでどうにもならない。俺たちは一回離婚をしているため、言っても無駄だと思い

「ごめん、今の話忘れて」

そう言って立ち上がろうとすると、百合子は俺の腕を掴んできた。

これで分かった。恐らく彼女も寂しかったのだろう。これで全てを理解した俺は、彼女の手を握ってから

「もう離さないから、もう百合子の傍からいなくならないから」

しばらく経ってから、俺たちは再婚した。

~終~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?