見出し画像

ショートショートストーリー#26「謝罪会見」

自分はこれから、大勢の記者や国民の前で謝罪をしなければならない。

自分の職業は俳優をしている。過去には映画大賞を総なめにした経歴があるが、最近過去の金銭がらみの女性問題が明るみに出てしまい、そのことで世間をお騒がせしてしまい、今回緊急の謝罪会見を開かざるを得なかった。

確かに、CMスポンサーやドラマの降板により、多額の違約金は発生しているのは事実である。

しかし、よく考えれば謝罪会見など必要あるのかと考えていた。

何故なら既にスポンサーやドラマの監督やプロデューサーには謝罪を済んでおり、少なくとも謝罪をしなければいけない相手には済んでいるのだ。

しかし、国民に向けて謝罪するのは違うと思う。現に様々な制裁を受けているはずだし、女性問題と言っても、既に清算済みであり、自分にも既に妻子はいるのにも関わらず、それを掘り返したのは雑誌出版社の方だ。

一番迷惑しているのは自分だと少し憤りを感じつつも、会見を開いた限りきちんと弁解をしようと思い、ここに来たのも一理ある。

いざ、会場の中に入るとそこには大勢の記者が集まっており、一斉にシャッターを下ろした。

そのシャッターの光がまぶしい中、ここは一人のプロの役者として、きちんと謝罪の言葉を述べつつ、弁解を述べた。

その中でも、様々なきつい質問を記者から投げつけられたが、既に終わっていることだと言い切った。

そもそも質問の内容もおかしいものである。

「奥さんを傷つけたことに対してどう思う」や「何故女性から借金をしたのか」などを聞かれたが、それについては既に清算済みの話であるし、借金も確かにした自分も悪いが、それに関しては全額返済をしているため、他人から何かを言われる筋合いはない。

それに奥さんのことに関しては、説得に物凄い時間がかかった。最悪離婚も視野に入れた話もされたが、どちらかと言えば被害者は自分である。

何回も言うが、既にトラブルについては終わった話であり、掘り起こされた被害者は自分である。

そう思いながらも、自分はここで弁解を図ることにした。別に炎上されてもどうでもいい。

何故ならこれは終わった問題だからだ。

すると記者は誰も何も言わなくなった。あまりにも自分の反論が熱すぎたためであり、少しキレ気味になりながら話していたからである。

もちろん、次の日にはそのことでネットの炎上を受けた。

妻からは一言

「だったら謝罪会見すらやらなければよかったのに」

確かにそうだ・・・

~終~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?