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【歌舞伎】歌舞伎鑑賞教室(日本振袖始

 2023年6月、国立劇場(大劇場)の歌舞伎鑑賞教室に行って来ました。鑑賞教室は、6月と7月にあるのですが、6月の演目は『日本振袖始』です。以下、メモを残します。

■解説 歌舞伎のみかた
 私が、鑑賞教室に初めて参加したのは、1年前の6月ですが、今年も演目の前に、解説「歌舞伎のみかた」がついていました。解説者は、中村虎之介さんと中村祥馬さんでした。
 用語解説(花道、揚幕、スッポン、ツケ、見得、立廻り、大向う、屋号、黒御簾などなど)に加え、簡単な実演などもありました。
 学生の方も多く、盛り上がりました。

■日本振袖始について(ネタバレあり。引用多いです。)
 あらすじを簡単に述べると、素戔鳴尊(すさのおのみこと)が、酒に酔った八岐大蛇(やまたのおろち)を退治する物語です。

 この物語には、磐長姫(岩長姫)と木花開耶姫命(このはなさくやひめ)の姉妹の物語も絡んで来ます。
 姉妹の父は、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に自分の娘二人を后にしてくれるよう頼み、輿入れさせます。しかし、瓊瓊杵尊は、醜い姉の磐長姫を追い返してしまいます。これが瓊瓊杵尊の判断の誤りで、「人間」は岩のように頑丈な磐長姫の性質を失い、花のように儚い木花開耶姫命の性質だけを引き継ぐことになったとのことです(=寿命が出来たということ)。

 こうした背景があり、美しい女性への怒りや嫉妬から磐長姫は大蛇となり、生贄として出された姫を丸呑みしてしまいます。今回の生贄が稲田姫です。そして、題名の「振袖始」ですが、配布されたパンフレットから少し引用してみます。

 題名の「振袖始」は、素戔鳴尊が熱病に苦しむ稲田姫の着物の袖を切り開き、熱気を逃がして病を癒した後、八岐大蛇の生贄に差し出された姫の袖の中に、一振りの名剣を隠し持たせたことを「振袖」の始まりとする物語の設定に由来します。

配布されたパンフレットより

 本作は、素戔鳴尊が八岐大蛇を退治する『古事記』や『日本書紀』の話を題材に、近松門左衛門が脚色した作品だそうです。

■感想
①昨年の「紅葉狩」もそうですが、姫が物語の後半に鬼・化け物の本性を現すという類の作品は、私が個人的に好きな部類に入るように思います。
 「美しい姫」→「本性を現す」→「立廻り」という流れは、後半盛り上がります。
 単純と言えば単純なのかもしれませんが、シンプルで初心者にも取っつきやすいです。歌舞伎を初めて観たときのことを思い出します。

②さて次に、今回物語で誰の視点が、一番私の頭に残ったことかと言うと、「磐長姫」の視点でした。
 中村扇雀さん演じる八岐大蛇が、7人の分身と列をなして大蛇を形成したり暴れたり、磐長姫の姿で酒に酔う場面など、面白かったです。
 他方で、素戔鳴尊が八岐大蛇(磐長姫)を退治・成敗して「ヤッター!」というよりは、木花開耶姫命との下りなどもあり、磐長姫のことを可哀そうに思う気持ちが、じんわりと心の底に浮かんでくるような感じがしました。

③今回は花道の真横の席から鑑賞することができました。いつも私は、二階席より上の階から観ることが多いのですが、鑑賞教室は、一階席も比較的安く購入することが出来ます。
 花道の七三あたりでの繰り広げられる立廻りや見得など、印象的でした。そして、何より良かったのは、中村虎之介さん演じる素戔鳴尊が花道を駆けて来るシーンです。「ダン、ダン、ダダッ」いう足音を近くで聞き、体感することが出来ました。
 劇場で良い席とはどんな席か、いつも思うのですが、今後も色々な席に座ってみたいです。

■大薩摩について
 最後に、私がこれまで誤解していたことを記載します。「大薩摩」です。イヤホンガイドを聞いていて誤りに気づきました。「歌舞伎用語案内」にも載っていたので、リンクを貼ります。

 三味線音楽ということは知っていたのですが、私は大薩摩を楽器の三味線の種類の一つぐらいに勘違いしていました。大薩摩「節」というように、語りの側面が強いようですね。現在では、長唄に吸収されているようです。

 後で、追記があるかもしれませんが、以上です。
 写真は、八岐大蛇の蛇のうろこをイメージした、yun_grarecoさんの作品を使用させて頂きました。

追記(2023年6月19日):
 実を言うと、私は今回の鑑賞教室を複数回鑑賞しました。座席も色々で、新しく気づくところも多く、結論から言うと、中村鶴松さんの稲田姫がとても良かったと思います。
 稲田姫が、磐長姫(八岐大蛇)の妖力にかかって身体が動けなくなる(引っ張られる、金縛り?)場面や、最後に、八岐大蛇の腹から出て来てフラフラな場面など、とても繊細に演じられていました。その反面、素戔鳴尊とのやり取りの面白さもあり。女形の美しさ、強さを感じたように思います。

以上です。

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